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遅くなってしまいました。すみません。
マップを頼りに教会までやってきた。
教会はファンタジーで見るような白い見た目の豪華な建物で観光地にもなりそうなところだった。
中に入ってどこでジョブを獲得するのかキョロキョロと見回していると、シスターがやってきて優しそうな笑顔で迎えてくれる。
「こんにちは、異邦人の方。今回はどのようなご用件でしょう?」
「こんにちは、シスター。今日はジョブを取得しに来たんだけど。」
「かしこまりました。ジョブの選択ですね。ではこちらへどうぞ。」
シスターに連れられて案内された奥の部屋には、ダイヤの形をした青白い光を放つ巨大な結晶が浮かんでいた。
「これは凄いな。」
「驚かれましたか?これこそが神が人々に職業を与えるための神々の遺産『ジョブクリスタル』です。」
シスターは少し自慢気に解説してくれる。
名前がそのまますぎてちょっとどうかと思うが、その見た目は思わず見とれてしまうほどに神々しく美しかった。
「それではジョブクリスタルに触れてみてください。ジョブを選択できるようになります。」
えっ、これ触っていいものなの?
ちょっと躊躇していると、早くしろといいたげなシスターさんの笑顔のままの無言の圧力に俺は慌ててクリスタルに手を伸ばす。
そして視界が光に塗りつぶされたのだった。
『ようこそ、ジョブ選択の間へ。』
そこは初めてゲームを始めたときのようなキャラクターメイクの空間と似ていた。
『ここではサブジョブの選択をすることができます。その前にいくつか注意事項をご説明します。
まず、サブジョブは4つまで選択することができますが転職することも可能です。その場合、ジョブの経験値とジョブスキルは失われますのでよく考えて選択することをおすすめします。
次に条件を満たすことによって解放されるジョブも存在します。ですので現在で4つ全て選択する必要はありませんが、いつでもジョブチェンジができますし、ジョブは埋めておけば補正がかかります。生産職は見習いジョブを選択した後弟子入りが可能となりますので、生産職を希望の方は師匠になる住民を探してください。
3つめに、このゲームには変わったジョブが多くありますが、ジョブによっては持てる武器、防具などが指定されていたり、ジョブクエストがあるものもあるのでお気をつけください。
最後にですが、条件を満たすことでまれに相性のいいジョブ同士で統合できる場合があります。もちろん、統合するかしないかは選択できます。統合した場合、ジョブスキルはそのままでレベルは1からになります。統合されるとジョブの枠が空きますので新しくジョブを選択できます。
これで注意事項の説明を終わります。』
なかなか長い説明だったけど、ジョブ選択についてはだいたい理解できたと思う。
最初のキャラクターメイキングでサブジョブの選択がなかったのは、ゲームを進めることで解放されるジョブがあるからだったのかな。
それにしても、ジョブの統合があるというのは知らなかった。
説明通りでもし統合できるなら実質5つよりも多くのジョブを獲得できるってことじゃないか?
ジョブの選択でできることが決まっていくだろうし、ここは慎重に選ぶ必要があるな。
『それではサブジョブの選択に移ります。選択できるジョブの一覧が標示されますので、気になるジョブがありましたらタップすれば簡単な説明くらいならありますのでご活用下さい。』
説明が終わるとジョブの名前がずらり並んだパネルが目の前に浮かび上がる。
スマホの画面のようにスライドしてジョブを見ていくと、一体いくつあるのかと気が遠くなるほどのジョブが並んでいる。
剣士と双剣士、暗殺者と忍者、治癒師と医者のように似たようなジョブも細かく分けているからこんなに多いんだろう。
しかも魔術師にいたっては、火の魔術師とか水の魔術師とかに分かれているし、もう魔術師ならまとめて魔術師でいいんじゃないかと正直思うんだが。
他のゲームでは見ないようなジョブとしては研究者とか記録者とかがあるが、これはなにができるジョブなんだろうか?
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研究者:未知を追い求め研究する者。自由度が高く、研究する事項によって様々な派生先があり、どのようなプレイスタイルになるかはあなた次第。
記録者:観察し記録を残す者。ダイヤリーという特集な魔導書を持ち、見てきたものが記録される。記録したものによってできることが異なる。
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うーん、説明が大雑把すぎてなにができるのかあまり分からないな。
これ以上詳しくはAIに聞いても教えてくれなかったし、選択してから手探りでやれってことかね。
他のジョブを見てある意味気になるのは、メイドや執事、機巧師、人形師、海賊、睡眠する者、清掃員、野生人、詐欺師、バニーガール、変質者・・・なんかどんどん変なのが出てくるんですけど!特に後ろの2つ!
もう、剣士や弓術士とかを見ると安心してしまうくらいなんだが。
説明が気になるのがいくつかあるが、見てはいけないような気がする。
『その変質者、結構便利ですよ。他人や魔物に姿を変えることができるんです。空を飛べるようになるジョブの代表的なもののひとつですね。頑張ってレベルを上げればドラゴンにだってなれますよ。……ちょっと名前がアレですけど。』
「ああ、変質者ってそういう……。」
良かった!変な意味じゃなくて!
それにしても多すぎるな。これ決めるの大変じゃないか?
ジョブ一覧の隣にあるランダムに思わず手が延びそうになるぞ。
『もし決めきれないのでしたら、ランダムでもいいと思いますよ。気に入らなくてももう一度ランダムを押せば何度でもできますし。もし、どんなジョブがいいか私に言ってくだされば希望を参考にいくつか選出させてもらいます。』
AIが有能すぎる。もはや俺の心を読んでいるとしか思えない。
「それは便利だな。これ全部見ていくの大変だしお願いするよ。」
『かしこまりました。』
そして俺は自分の希望をいくつか述べてジョブの選出してもらうことにしたのだった。
まず俺が希望したのは純粋な普通の戦士系と斥候系の戦闘職だ。
特に普通を強調して伝えた。
そこから選出されたジョブは戦士、騎士、剣士、双剣士、刀士、槍士、斧士、鎌士、弓士、盾士、闘士、格闘家、銃士、斥候、盗賊、暗殺者、忍者、捕縛士、爆弾士、狩人、鞭士、投擲士、打撃士etc・・・。
ちょっと「うん?」っていうのもあるが、まあ、他のジョブを見れば十分許容範囲だ。
「それにしても戦士系だけでもこれだけあるのか。」
『はい。まあ、できることが似ているものもありますから。』
「こんなに細かく分けなくてもいいような気がするけどな。」
『そちらの方が個性が出ていいだろうと運営は考えたわけです。迷惑なことに。』
迷惑だと思っていたのか、このAIは。
というか最初は機械的な会話しかしなかったはずなのにだんだん普通に話すようになってきたような気がする。特に変質者の辺りから。
『気になるジョブはありましたか?』
「ん?そうだな。この戦士は他のジョブみたいに特定の武器がないのか?」
『そうですね。戦士は多彩な武器を扱い戦うジョブです。そのかわり補正が低くて器用貧乏なジョブですが。』
まあそれはそうか。
専門に武器を扱うジョブの方がそれに絞ったスキルを覚えることができるだろうし。
プレイヤースキルによるのかもしれないが。
しかし、あげてもらったジョブに心が引かれないな。
刀士を取得しているから他の戦士系はとらなくてもいいが、斥候系は鑑定スキルがあるので捨てがたい。
ひとまず保留にしておくことにして魔術師系のジョブも見てみる。
・・・魔術師系は戦士系より多いな。
基本の火、水、風、土の他に雷や氷といったよくある魔術師に、幻術使い、陰陽師、空間魔術師、精霊使いなどなど見るのも疲れてくる。
やっぱりせめて火とか風とか属性の魔術師は統合するべきだな。
魔法を使えるジョブは取得しておきたいところだが、さてどれにするか。