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13 エピローグ 天体観測の日

 エピローグ


 天体観測の日


 大好きだよ。ずっと好き。


 桜井蛍くんの退院の日、(それは菜奈のお母さんの退院した日のすぐあとのことだった)貝塚菜奈は蛍くんをお祝いするために花束を持って病院に向かった。

 お母さんが入院してから、ずっと(それこそ毎日のように)通っていた場所だけど、もう当分くることもなくなるのかな? と、そんなことを思うと、いろんな思い出が菜奈の中で蘇って、なんだか複雑な気持ちになった。

 菜奈は受付のところで手に花束を持ちながら一人でじっと待合椅子に座って、蛍くんとその家族の登場を待っていた。

 でもいくら待っても、蛍くんは病院の待合室に姿を現さなかった。


 ? ……おかしいな? 日にちは間違えてないよね?


 菜奈は受付で看護婦さんに蛍くんのことを尋ねた。その看護婦さんは菜奈や蛍と顔見知りのすごく笑顔の素敵な看護婦さんで、二人が蛍くんの退院の日に会う約束をしていることを知っていた。

「うん。日にちはあってる。今日が桜井蛍くんの退院の日だよ」とその看護婦さんは菜奈に言った。

 菜奈はそれからもう一度待合椅子に座って蛍くんを待っていた。

 でも蛍くんはこない。

 心配になった菜奈は、蛍くんを見つけるために場所を移動することにした。

(看護婦さんに病院内を探していいか聞くと、いいよ、と答えてくれた)

 まず菜奈は二人が初めて出会った病院の一階にある自動販売機の横にあるベンチのところに行ってみた。

 でも、そこに桜井蛍くんの姿はなかった。


 なので次に菜奈は蛍くんの入院していた『505』号室の病室に行ってみた。でも、そこにはもう桜井蛍くんの姿はなかった。

 誰もいなくなった病室はからっぽで、あの天体、宇宙の雑誌やいつの間にかに置いてあったスペースシャトルのおもちゃや、それからサイドテーブルの引き出しの中にしまってあった『天気予報日記』もなくなっていた。


 いつも空いていた、窓も今は閉まっている。


 ベットは綺麗に真っ白なシーツと毛布がセットされていて、そこで誰かが眠っていた痕跡はどこにもない。

 そんな空っぽになった病室を見て、まるで桜井蛍くんがこの世界から消えてしまったかのような、そんな複雑な(退院は嬉しい出来事だから)悲しい気持ちに菜奈はなった。

「……蛍くん。どこにいるの?」

 菜奈はつぶやく。

 それから菜奈は蛍を探して、病院の真っ白な屋上に行ってみることにした。


 その場所は二人の、……二人だけの秘密の思い出の場所だった。

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