かしこマリーヌ!
結局、足りないお金はマリーヌに頼る事になってしまった。情けないったらありゃしない。
でも、マリーヌは私の従者なんだから、この子のお金は私の物って考え方もある。つまり、私の実力!!
「そこの嬢ちゃ〜ん!!」
私たちが道具屋の前で買ったものの整理をしていると、さっきの武器屋の店主が走って来た。
どうしたんだろ?
「はぁ、はぁ・・・。
よかった、まだ出発してなかったんだな。」
「どうかしたんですか?」
店主は右手に白い物を握って息を切らせている。
なんか忘れ物でもあったのかな?
「あぁ、俺の作った武器は使用者に銘を付けてもらうんだが、準備してたら嬢ちゃんたちがいなくなっててよ。
慌てて留守番を弟子に任せて探してたんだ。見つかってよかった。
もう諦める寸前だったぜ。」
そう言って、店主は手に握っていた物を私に差し出して続けた。
「これは銘札だ。これに銘を書いて、柄にあててくれ。
そうすれば、嬢ちゃんだけの銘がその剣に刻まれる。大切にしてくれよな。」
「わざわざ、ありがとうございます。」
私はそれを受け取った。店主が銘札と呼んでいたものは、白い小さな札だった。
こんなもので、名前が付くの?
「じゃあ、使い方は今言った通りだ、簡単だから気に入った名前が浮かんだら刻んでやってくれ。
銘を得る事で、武器も真価を発揮できるからな。
達者でな!」
それだけ言い残して、店主は颯爽と店の方へ向かって走っていった。
行動力高いなぁ。私ならわざわざ追いかけたりしないと思うけど、職人としての誇りだろうか?
「名前って、決まってます?」
マリーヌが札を眺めながら聞いて来たが、正直いきなり言われてパッとは出てこない。
私もそんなに名前つけるのとか得意じゃないからなぁ。
「まだ特にはないわねぇ。」
「リリムとセツナで決まりですね!」
「何がいいかしらねぇ。ま、おいおい考えるわ。」
リリムの話は完全に無視。いちいち相手にしてるから面倒臭いのよ。
最初からいない物と考えて行動しましょう。
ちなみに、私たちは防具の購入はやめた。値段はピンからキリまで様々だったが、いいなと思ったものが全てとんでもない値段だった。
安いものもあったのだが、デザインが気に入らなかったので止める事にした。
やっぱり、普段使うならデザイン重視っしょ。マリーヌからは少額かりて、すぐに借りを無くしてしまいたい。
なんだかんだで、あまり沢山は借りたくなかった。
兎に角、これでようやく私たちも、獲物の待つアルペティア高原へと向かえるのだ。
ホーンホース、ネーミングセンスの通り不細工そうな馬なんだろうか?
「それじゃ、気を取り直してテレポートよろしく!」
「かしこかしこマリーヌ!」
・・・・・・。
「おい。」
「だ、ダメですか?」
アウトォ〜。
「それはダメ、絶対。馬鹿になるわよ?」
「セツナ様!それはどう言う意味ですか!!」
そのまんまの意味だよ馬鹿。
伝染しちゃってんじゃないのよ。マリーヌまで使い物にならなくなったら、私どうするよ?
「で、では・・・。テレポート!!」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
少し冷たい風が髪を靡いた。
マリーヌのテレポートにより、高原の一画へと移動できたようだ。
高い山地に連なった平坦な地形から、所々に大小様々な起伏面がある。木々は申し訳ない程度に所々その顔を覗かせるだけで、地には草木の鮮やかな緑色が一面を覆っている。
空を見上げれば、青々とした晴天が私たちを出迎えてくれる。
視線を横にずらしてみると、少しばかりの高い山脈があるだけで、続いていく高原の切れ間が空の青さと交わっている。
清々しく、昼寝でもしたいような心地よさだ。
「見てくださいセツナ様!あっちになんか居ますよ!!」
「お姉様、いただきマリーヌってのはどうですか!!」
コイツらが居なけりゃな!!
私の側で大人しくしているのはラックだけだ。あの二人もラックを見習ってほしいと切に願う。
犬を見習う人間って、本当に恥よね。
「あんたらうっさいわ!少しは始めて来た場所への余韻に浸らせろ!!」
マリーヌはいつまでそのネタに拘るつもりだ?そもそも、誰もそのネタにウケてなんて無いわよ。
「(セツナ様、あちらから複数の魔物の臭いがします。)」
ラックが太陽の浮かんでいる方に顔を向けて、意思を飛ばして来た。私の味方はあんただけだわ。
やっぱりテイムするなら人間じゃなくて魔物がいいわね。素直だし。
「ありがとう。目的の魔物かもしれないし、行ってみましょう。」
頭を撫でてやると、大きな尻尾をブンブンと振り回して喜んだ。
でかいけど、犬みたいで可愛いわね。人間じゃないだけで好感が持てるわ。
「あんたらも行くわよ!」
リリムとマリーヌの背中を叩いて、魔物がいると思われる場所へと向かう。
「(近いです。)」
10分程度進んだところで、ラックが鼻を仕切りに動かして耳を立てた。私も少し警戒して辺りを見渡すが、魔物の姿は確認できなかった。
「きゃっ!!」
「なにっ!?」
リリムが突然声をあげたのに驚いて、後ろを振り返った。
「あ、すいません。躓いちゃいました。」
地面から出ていた岩の出っ張りに躓いた様だ。少し進んだだけだが、急に岩肌が増え始めた気がする。
確かに歩きにくいけど。
「脅かさないでよね。」
気を取り直して、警戒しながら歩みを進める。しかし、魔物らしい物は全く見当たらない。
「(セツナ様!!)」
ラックから強い意志が頭に響く様に届いた。ラックはそのまま飛びかかって、私を突き飛ばした。
「っ・・・・。」
ラックまで、一体なんだって言うのよ!!
悪態をついたその時、私の後ろにあった木がボゴッと言う音を立てて表皮を凹ませた。
「えっ!!?」
何も見えなかった、何が起こったって言うの!?
「話には聞いていましたけど、半信半疑だったんですがどうやら噂は本当の様です。
お姉様、気をつけてください!奴ら、ホーンホースの生け捕りが高額な理由は、その姿が見えないからです!!」
マリーヌが杖を構えて叫んだ。
「そう言う情報は、確定してなくても教えときなさいよ!」
そりゃあ見えない相手なんて、普通は生け捕り出来るわけないじゃない!




