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効果は抜群だった

 現在私たちは何故か森の中を歩いている。

 マリーヌに温泉への案内をお願いしたのだけど、彼此歩き始めて1時間は経過しただろう。

 

「マリーヌ、まだ着かないの?」

 

 正直言ってかなり疲れた。

 オススメを紹介して欲しいと頼みはしたが、まさか町から離れていくとは思わなかった。

 

「もうすぐ・・・ん。

 見えてくると・・・思う・・・。」

 

 歩き始めてから、リリムが定期的にかけているが魔法効いてきた所為か足取りが覚束ない。

 

「大丈夫?」

「うん・・・。ちょっと、疲れただけ。」

 

 リリムさん、ちょっと魔法かけ過ぎじゃね?

 これもう温泉行かなくても大丈夫なくらい効いてきたわよ?

 

「あ、あれですか?」

 

 リリムが指す方を見ると、一軒の建物があった。

 こんな森の中にひっそりと佇んでいるそれは、こんな場所にあるとは思えないほど綺麗な外観をしていた。

 

 赤い屋根に木の温かみを感じさせる外壁は苔も生えておらず、手入れが行き届いている事が窺える。

 

 そんな目立つ様な外観にも関わらず、森の中に溶け込む様な不思議な存在感があった。

  

「なんか不思議な建物ね。

 あれが目的地?」

「えぇ、あそこ。

 ふぅ・・・・・・。

 朧と同じように秘湯と呼ばれる場所。

 あれが秘湯《翡翠》よ。」

 

 マリーヌは深く息を吐くと、先ほどまで覚束なかった足取りが嘘のように軽くなり歩き出した。


 魔法の効果が切れた?

 明らかに歩き方が変わった。

 やはり魔法抵抗も相当高いのだろう、これは思った程一筋縄では行かないかもしれない。

 

 甘く見ずに、虎視眈々と事を進めなければ逆に痛い目を見そうだ。

 焦るな私、温泉に入ってからが勝負の時だ。

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 私はマリーヌ・トルネリア17歳、勇者ハイゼルと共に魔王を倒した一人だ。

 パーティには他に賢者と戦士、それからアーチャーの3人がいた。

 魔王を倒した私たちは王様から褒美として、それぞれに領地と称号を与えられた。

 

 私は水の都アクアパールの領主として迎え入れられ、大魔導師を名乗る事を許された。

 

 勇者と世界中を凱旋し、たくさんの祝福を貰った。

 少し恥ずかしかったが、それでも悪い気はしなかった。

 凱旋もあっという間に終わってしまい、私は勇者の背中押しもあってアクアパールへとやってきた。

 

 が、実際領主と言っても実務をこなせる実力もなく、元の領主が全てを担ってくれている。

 その辺は王様も気を使ってくれたようで、私に何かをさせるつもりは毛頭ないようだ。

 

 ただ暇なんです。

 アクアパールは以前の旅の道中に立ち寄った事があるので、内情は把握している。

 しかし人脈があるかと言われると、私は元々人付き合いが苦手な事もあってこの地にと友と呼べるの者はいなかった。

 

 暇を持て余そうと散歩をしていると、私より少し年上のお姉さん2人を見つけた。

 2人は朧のマウンテンスライダーから滑り降りた所のようで、とても楽しそうだった。

 

 いいなぁ。

 私もあんな風に楽しく遊べる友達がほしい。

 私も仲間に入れてくれないかな?

 

 暇と寂しさが相まって、思い立つとすぐにそちらへ足を向けた。

 

「ふふふ。観光の人?

 秘湯【朧】は最高だったでしょ?」

 

 近づいて声をかけたが、ちょっと上から過ぎかな?

 いいえ、私は世界が認めた大魔導師。

 これくらいじゃなきゃ威厳がなくなるわ。

 

「どちら様で?」

 

 あれ、私の事知らない?

 まぁ名前は知ってても顔を知らない人だっているわよね。

 自己紹介しなきゃ、でもどうやって?

 

 威厳を残しつつ嫌われないように・・・

 

「む。私を知らないなんて、とんだ田舎から出てきたようね。」

「なっ!?」

 

 違う!違うの!!

 なんでこんな威圧的な発言を!?

 あぁ、どうしよう。

 嫌われちゃったかしら。

 

 なんとか切り返しを、

 

「せっかく、私の街へ来てくれたのだから名乗らせて頂きましょう。

 私はこの街を収める領主にして、勇者のパーティが一人。

 大魔導師マリーヌとは、私のことよ!!」


 こんな感じでどうかしら?


「は?」

 

 あ、あれ?

 知らない!?

 名前も知らないの?

 

「あら、聞こえなかったかしら。

 それともまさか、知らないなんて事は無いわよね?」


 どうしよう!?

 せっかく有名になった事を利用してお近づきになろうと思ったのに!

 

「貴方がマリーヌさまなのですか!?」

 

 私が心の中であたふたしていると、後ろにいたもう1人が口を開いた。

 よかった。

 知ってる人がいた。


 それから暇だという事をアピールしてみたが、反応が薄い。

 話し相手くらいにはなってくれないかなぁと思っていると、微弱な魔力を感じ取った。

 

 何!?

 どこかから攻撃されてる?

 いや、これは・・・呪い?

 私に恨みを抱く者が黒魔術か何かで呪いをかけてきているのだろうか?

 咄嗟に魔力障壁により身体の魔力耐性を向上させた。

 

 なんとか防げたわね、でも一体誰が?

 そんなに恨みを買うほどの人付き合いなんてした事はないけど。

 

「お話し相手、喜んで引き受けさせて頂きます。

 私も貴方みたいな有名人に声をかけられて幸せですね。

 立ち話もなんなんで、お茶しながら話しませんか?」

 

 私が呪いに警戒していると、その人はお茶へと誘ってくれた。


「え、あぁ。ありがとう。

 そうね、それじゃぁあそこの茶屋へ行きましょう。

 デザートも美味しいわよ。」


 え!?お茶してくれるの!!?

 まさかいきなり誘ってくれるなんて。

 ちょー嬉しい!!!

 

 込み上げてくる喜びを隠しながら、私たちは茶屋へと向かった。

 すると、またしても呪いが飛んできた。

 

 な、さっきより強い!?

 殆ど効果を相殺できたけど、幾らか障壁を越えてきたようだ。

 しかし、呪い耐性を持っているのでこれだけ障壁で威力を削れば効果は発揮される事なく消滅するだろう。

 

 私の障壁を超えるなんて、なんて強力な呪いだろう。

 普通の人間なら軽く呪い殺されてしまいそうだ。

 

 それより、初めてこの街で出来た知り合いとお茶しなくっちゃ!

 

「さ、ここよ!

 早く入りましょ!」

 

 私はさりげなく手を取って中へ入ろうとしたが、触れた瞬間ゾクッと何かが背筋を走った。

 

 何今の!?

 咄嗟に掴んだ手を離してしまった。

 触れた瞬間に感じたもの、嫌な者ではなかったが・・・

 なんだか身体が熱い気がする。

 風邪ひいたかな・・・?

 肌も少し敏感になってるみたい。

 

「大丈夫?」

 

 茶屋へ誘ってくれた人が私を気遣って肩を触った。

 

「ひゃ・・・!!」

 

 何!?また背筋が!!?

 

 それからしばらく経って風邪っぽい感覚は治ったが、時折同じ症状が繰り返しやってくる。

 その度に感じる魔力。

 風邪を引かせる呪い!?

 

 いや、私の耐性によって風邪の様な症状で落ち着いているのかもしれないが・・・。

 

 そんな事を考えながら2人と話をしているうちに、私たちは友達になった。

 もう風邪の症状なんて気にならないほど嬉しい。

 

 そのままの流れで温泉好きという彼女の為に、最高の温泉を紹介することになった。

 私は自分の知る中で一番の温泉へ案内しようと、森の中にある秘湯《翡翠》へ2人と共に向かった。

 

 森を歩いている間も呪いは止めどなく私を襲って来る。

 呪いを受け過ぎた所為か全身が熱くなり、身体の感覚がおかしい。

 

 もうすぐ温泉だというのに、こんな呪いに邪魔されるわけにはいかない。

 私は深く息を吐き、魔法により呪いへの耐性を更に高めた。

 装備による補正も大きいし、これでしばらくは大丈夫だろう。

 

 彼女たちに変な心配をさせたくない。

 さっきまで火照っていた身体も楽になった。


「あれが秘湯《翡翠》よ。」

 

 この湯屋は秘湯《朧》以上に知る人しか知らない温泉だ。

 その源泉はまさに翡翠の名の通り、透き通るようなエメラルドグリーンをしている。

 

 腰痛、冷え性、関節痛に効き、更には美肌効果まである。

 加えて傷も癒せる素晴らしい温泉だ。

 露天風呂から眺める景色も、間違いなく喜んでもらえるだろう。

  

 私は2人の喜ぶ顔を思い浮かべて温泉へと案内した。

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 マリーヌが最高の温泉と言うだけのことはある。

 そこは中に入ると露天風呂があり、朧とはまた違う幻想的な絶景が広がっていた。

 

 お湯は透き通るようなエメラルドグリーンをしており、クリスタルで出来た浴槽に囲われていた。

  

 周囲にも大小様々なクリスタルが地面から顔を出しており、太陽の輝きがそれらに反射してとても綺麗に輝いている。

 

「すっごーい!」

 

 私は思わず声を上げて中へと入った。

 リリムとマリーヌは2人で話をしながらゆっくり準備をしている。

 

 これから勝負の時だと言うのに呑気なもんよね。

 

 温泉には私たちしかいなかった。

 なんでも夜に人気の温泉なんだとか。

 クリスタルの周りには光魔石で作られた証明が並んでいるので、おそらくライトアップされるのだろう。

 

 間違いなく幻想的で人気かありそうだ。

 わざわざこんな所までくるなら昼ではなく夜に美しい光景を見たいと言う気持ちもわかる。

 

「セツナ様〜!大変です!!」


 私が景色を楽しんでいると、リリムがバタバタと走ってきた。

 

「どうしたの?」

「それが、マリーヌが羨ま、大変なんです!」

 

 羨ましいって言おうとしたわね・・・?

 

「だから何が?」

「それが、魔法を沢山使ってた所為か職業レベルが2も上がってまして、獲得したJPを10全部使って敏感肌をLV5にしたんです。

 魔法に星マークが付いてレベルがMAXになったので、服を脱いだマリーヌに使ってみたら・・・。」

 

 !!?

 なんて早とちりを!?


 私は急いでマリーヌの元へ向かった。

 脱衣所では、マリーヌが上を向いて気絶している。

 

 あ、ちゃんとタオルはかけてあげたのね。

 そこは偉かったわ。

 だけど・・・


「どうしてこうなったの?」

「どれだけ効いたか確かめる為に胸を揉んでみたら、声を上げて気絶しちゃいました。」

 

 はぁ、どんだけよ・・・。

 あっさり過ぎだけど、アンタが益々怖くなったわ・・・・。

  

 

 ・・・・・・。

 

 

 捕獲

 

 

 調教

 

 

「ん"〜〜〜ーーーーーーー!!!!!?」

 

 マリーヌは気絶したまま声にならない声を上げて、パタリと静かになった。

 

 

『調教に成功しました。』

 

 ここまできた意味あった?

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