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4 神眼

勇者達の食事も終わり。夜も更けたので、就寝に入ろうとしていた。


食事前に襲われた事でもあり、今度は寝首をかきに遣って来るかも知れないので、より一層警戒し、2人1組で見張りに当たる。


儂に限っては、基本眠る必要がない。


人間に分かりやすく説明するなら、厳密には違うけど、『幽霊』みたいなものかな。


顕現しているので、触れるけどね。


儂が居た日本と言う国でも、『人類に禍福を降すと考えられる()()』と表記されて居るので、触れる霊的存在と思って貰おう。


そのお陰で、どうせ夜は暇を持て余すからと、見張りを勝手出たが


どうやら、まだ完全に、信用しきって貰えて無いみたいだ。


まぁ、儂だけでも、あの程度の残党等、追い返すのは容易いのだがの。




「それでは、お先に休ませてもらいます、後で交代しますから」


テントの入り口から、顔だけ出したミノルが、申し訳なさそうに言ってくる。


「うむ、心配は無用じゃ、ムサシ殿もおるしのう」


儂の言葉に、無言で同意と頷くムサシ殿。


無口なのは良いが、襲われた時に、声をあげられるのだろうか?


と言うより、どんな声か聞いてみたい。屈強な戦士の見た目なのに、ハスキーボイスだったりして……


考え出したら、気になって仕方がない。


此処は一つ、話し掛けてみるか━━━━返答が返ってくれば、声も聞けるし。


「の、のう、ムサシ殿。この世界に来て長いのかや?」

と儂の問に、頷いて返すムサシ殿。


ええぇ……其処は『○年目です』って返答を期待したのに、頷くだけってアンタ……


━━━━━━


沈黙が続き、焚き火の薪がパチパチと音をたてるだけで


ムサシ殿は、装備品の具合を確かめ、整備を始めている。

黙々と……


此れなら、まだ独りの方が気を使わぬだけ、ましであろう。


無口のムサシ殿との時間━━━━持たな過ぎる。



仕方がないので、先程テントに入ったクミに


「クミ、まだ起きてるかの? 暇なんで魔導書かなんか持ってたら貸してくれんか?」


「え? 昔使ってた奴ならあるけど……ちょっと待って」


と、ごそごそ荷物から探して、魔導書を出して貸してくれた。


「はい、変なことに使わないでね」


魔導書で、変なことって何んだろう……媒体にして悪魔を呼び出すとか?


出来なくもないが、儂は一応『魔族』じゃなく『神族』なんですがね。



まあいい、これで時間潰しができるぞ。


魔導書を開き……

「読めぬ!」


此れは、解読するしかないな。



一応、神族には翻訳スキルが常時発動している。


それは、『神仏習合』によるところが大きい。


例えば、七福神の1柱『恵比寿』。此方は日本神話で『蛭子』と同神とされているが、恵比寿が中国やインドから来たので、日本語が喋れ無いと言うことはない。


その逆も然りである。


国によって、呼び名は変わっても、移動した国で人の願いを聞き届けるため、『翻訳』スキルも常時発動でなければならないのだ。



━━━━が、それは言葉の翻訳だけであり、文字には適用されない。


なので、こう言った他国、他世界の書物は、自力で解読するなり何とかする以外にないだ。



当然、この魔導書も、見たこと無い異世界の文字が、びっしりと書かれている。


だが、これで朝まで遣る事が出来た。


解読できるか……まず、マヤ語からアプローチしてみるかの。


━━━━━━


時間も忘れて解読に没頭する。


「なんだ、法則さえつかめば、簡単じゃないか!」


最終的に全部解読し、読み終えてしまった。



「あ、終わったんだ~。お疲れ様~」


「うお! ミンシアか? むむ……交代したのじゃな」


いつの間にか、ムサシ殿から代わっていたので、ビックリした。


「熱中していたので、声を掛けずに居たんだよぉ」


「そうか、気を使わせてしまったの。ミンシアは、よく眠れたのかの?」


「うんバッチリだよ~、お茶飲む? 入れるけど」


「相伴にあずかろう、因みにどんなのがあるのじゃ?」


「ん~、甘いのと苦いのと鼻にくるやつ」


鼻に来る奴って何だ? 強ミント系って事なのか?


いや、そう言う危険な、訳の解らんモノは、手を出さん方が良い。


「そうじゃのぅ、頭を使ったから、甘い奴貰おうかの」

ミンシアへ告げた後に、焚き火へ目を遣ると、可笑しな光景に気が付く。


いつから乗せてあったのか……赤く熱せられた小さい方手鍋が、お湯がグツグツ煮え立っているのだ。


それも燃えている焚き火の真上で……


直火!?


ちょ、それ大丈夫なのか?


その煮えた鍋の中へ、ハチミツ? ぽい何かと茶葉を直投入している。


おい吹き零れるぞ!


泡立ち、吹き零れそうな鍋を、慌てて掴むミンシア。


「あつ!!」


━━━━て、こっち投げんなぁ!


「うわぁおあああ!」


今までにない、自分でも驚きの変な悲鳴が出た。


予想を遥かに上回るイレギュラーに、魔法で防壁を張るのも忘れ、転がって避ける。


上半身を起こし振り返ると、自分がさっきまで居た場所に、熱々の何かと鍋がぶちまけられて居た。


「あつ~い、また失敗しちゃったよ~」


ミンシアは、手をフウフウ吹きながら、涙目になっている。


泣きたいのは此方だ。


『神眼』でステータスを見たら、この娘……器用が壊滅的だった。


もっと早くに、見て置くんじゃったわ。


兎に角、この娘に任せておけん。


「どれ、儂が入れてやろう」


焚き火を囲むように置いてある、なるべく平らな石の上に鍋を置く。


「こうして脇に置けば、直火でなくも、輻射熱で湯は沸く」


沸く前に、茶葉を用意して……お!? 結構いい茶葉ではないか。


良い香りがする。


日本に居た頃は、もっぱら緑茶であったが、紅茶も良い香りじゃのう。


金物の茶漉しが無いので、樹の聖霊にお願いして繊維を分けてもらい、繊維を十字に編み込み茶漉しを造る。造り方は神界法に抵触しない……と思う。


茶漉し1つで邪神認定とか、嫌すぎる。


そんな事で、勇者差し向けられたら、流石の儂も泣くぞ。



気を取り直して━━━━


完全に沸騰しない程度で、鍋を火から離す。沸騰していると、折角の香りが飛んで仕舞うからだ。


茶漉しの上に茶葉を置き、湯を掛けて茶を落とす。


濾されたお茶に、先程ミンシアが入れていたハチミツ? みたいなのを、少し垂らして出来上がりだ。


『多目にして~』とリクエスト来たので、ハチミツを多目に入れてやる。


本当にハチミツか? 詳細はよく分からんが、甘い事だけは舐めてみて分かった。



二人で深夜のお茶会である。


━━━━が


そのお茶のお陰で、気分も落ち着いて来て。よく考えたら、火の耐性持ってるから、熱湯も大丈夫だったわ。


忘れていたとは……余程吃驚して居たのだな。


まあ、ハチミツ? 入りだったし、儂は平気でも服はベトベトじゃっただろう。


そう考えると、避けたのは英断じゃったの。



「そう言えばね~、夢にメディア様が出てきたよ~」


「そうなのか?」


「うん、綺麗な金髪の女の人と、手を繋いで雲の上を歩いていたよ~」


「雲の上……ああ、雲の上は天界で、その美しい方は姉神様だな」


「お姉さん?」


「うむ、さすが美の女神だけあって、美しく気高く格好いい方なのだ」


髪も黒く、背も小さい儂とは、正反対な美の女神。


今頃、どうして居られるやら……


「もう随分昔に、喧嘩別れしてしまって以来、ずっと帰って居らんな」


「喧嘩しちゃったの?」


「うむ、儂の居た世界でな……だいたい5000年程前に、世界を沈める大洪水を起こすと、天界のさらに上の……天上界の上神達が決めてしまったのじゃ」


旧約聖書に出てくる『大洪水』である。


「姉神様も上神の1柱だったのでな、止めて貰らうようお願いしたのだが、多数決なのでどうにもならなかったと……姉神様のせいでは無いと、分かっては居たんじゃ。でも、どうにか止めたくての、上神しか入る事を赦されない、天上界に立ち入り主神様に直訴したんじゃが━━━━」


「それで?」


「そこで言われたのは、神の奇跡も使えぬ、落ちこぼれの神の癖に、天上界へ入るとは何事か!! 貴様の座る神の末席も、姉の顔を立て、お情けで残してあるだけ、まだ自分を神の1柱だと思うておるのか!! と話すら聞いて貰えなかった」


「酷い……」


「ふふっ、仕方がないさ。本当の事じゃしの」


今思えば、当時の儂は若かったのう、何がなんでも止めようと、神剣まで持ち出して、カチコミ掛けたのだから。


結局、上神達に取り押さえられ、神殿の奥に幽閉されてしまった。


あの時ほど、自分の無力さを呪った事はない。


「結局、神の大洪水は執行され、方舟で助かった者以外は……」


「そんな……」


「その後、数百年ぐらい経ってから、姉神様に幽閉された神殿から出して貰らっての……礼も言わずに地上へ降りて、人間の復興と繁栄の手助けをしながら、世界中転々と放浪し━━━━それで、最後に行き着いた先が、極東の島国日本じゃった。そこで、今度は異世界召喚され、今に至るって訳じゃな」


結局……姉神様とはそれっきり……じゃな。


紅茶の入ったカップを見詰めながら、姉の寂しそうな顔を思い浮かべる。



「でもそれ、どちらも悪く無いんだから、逢えばきっと元通り仲良くできるよ!」


いつもより間延びが無い分、本気で心配してるのだろう。


「そうじゃな、もし元の世界に戻れたら、逢いに行ってみるかの」


「うん! それが良いよ」


ミンシアの言葉に背中を押され、勇気付けられるのだった。





神眼で見たステータスを置いておきます。



名称 ハヤカワ ミノル

年齢 17歳

種族 人間

職業 勇者

レベル66

HP2130

MP1728

力 546  

攻撃力 812

体力 732

防御力 771

知力 634

魔力 702

器用 388

敏捷 666

運 418


スキル

剣技修練 8

ソニックスラッシュ5

初級風雷魔法 MAX

中級風雷魔法 5

魔法剣 7

勇者の特権 (勝手に他人の家のタンスや引き出しやツボを漁っても咎められない)

指揮上手 (戦闘時PTメンバーの全ステータスにボーナス+5)

応急処置 (自分を含めPTメンバーの掛かったステータス異常効果を鈍らせる)



耐性 (-)抵抗なし<(弱)<(中)<(強)<(無)無効<(吸)吸収


睡眠耐性(弱) 毒耐性(中) 麻痺耐性(弱) 呪耐性(中) 混乱幻惑耐性(弱)

盲目耐性(中) 石化耐性(中) 即死耐性(中)

火耐性(-)水耐性(-)風耐性(-)地耐性(-)



名称 ムサシ

年齢 22

種族 人間

職業 重戦士

レベル68

HP2376

MP1930

力 572

攻撃力 927+50

体力 910

防御力 1081+200

知力 454

魔力 658

器用 396

敏捷 189

運 590


スキル

斧技修練 9

パワースィング 7

槍技修練 7

剣技修練 7

鈍器修練 8

盾修練 MAX (重戦士は盾装備時、盾防御力の他に防御力が+300になるが敏捷は半分に落ちる)

守護神 (守るPTメンバーが多いほど防御力に+ボーナス)

戦神の加護 (攻撃力に+ボーナス)



耐性   (-)抵抗なし<(弱)<(中)<(強)<(無)無効<(吸)吸収


睡眠耐性(中) 毒耐性(中) 麻痺耐性(中) 呪耐性(中) 混乱幻惑耐性(弱)

盲目耐性(弱) 石化耐性(中) 即死耐性(中)

火耐性(-)水耐性(-)風耐性(-)地耐性(弱)



名称 カンザキ クミコ

年齢 18歳

種族 人間

職業 アークメイジ

レベル70

HP1680

MP2390+500

力 341

攻撃力 203

体力 392

防御力 258

知力 938+50

魔力 1322+150

器用 402

敏捷 615

運 663


スキル

初級火魔法 MAX

中級火魔法 MAX

上級火魔法 6

初級風魔法 MAX

中級風魔法 MAX

上級風魔法 3

属性付与魔術

魔法障壁 (魔法ダメージを減少させる、物理ダメージには効果なし)

知神の加護 (知力と魔力に+50ボーナス)

禁忌契約 (魔力+100MP+500のボーナスが付くが死後リッチーになり輪廻の環から外れる)

魔力ブースト (魔法が3分間だけ3倍の威力になる使用後のクールタイムは半日)



耐性   (-)抵抗なし<(弱)<(中)<(強)<(無)無効<(吸)吸収


睡眠耐性(弱) 毒耐性(弱) 麻痺耐性(弱) 呪耐性(強) 混乱幻惑耐性(強)

盲目耐性(弱) 石化耐性(強) 即死耐性(強)

火耐性(弱)水耐性(-)風耐性(弱)地耐性(-)




名称 ミンシア=アグラベル

年齢 15歳

種族 人間

職業 アークプリースト

レベル63

HP1714

MP1952

力 487

攻撃力 512

体力 580

防御力 622

知力 666

法力 845 (プリーストの場合、魔力は法力に表記されます)

器用 13

敏捷 464

運 613+500


スキル

初級神聖術 MAX

中級神聖術 MAX

上級神聖術 5

鈍器修練 7

神の加護(全ステータス異常の耐性が1ランク上がる、属性耐性には反映されない)

強運(運の数値に+ボーナス)



耐性   (-)抵抗なし<(弱)<(中)<(強)<(無)無効<(吸)吸収


睡眠耐性(中) 毒耐性(強) 麻痺耐性(強) 呪耐性(強) 混乱幻惑耐性(中)

盲目耐性(強) 石化耐性(強) 即死耐性(強)

火耐性(-)水耐性(弱)風耐性(-)地耐性(弱)



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