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3 今更自己紹介

「そう言えば、自己紹介がまだでしたね」


夜営の準備が終わって、一息ついたところで、勇者が切り出す。

「僕は、ハヤカワ ミノル異世界から召喚されて勇者やってます。」


「そして、こちらフルプレートメイルの戦士殿はムサシさん、無口なのですが頼りになる御仁です」

紹介され、無言で会釈するムサシ殿


ここまで、声を聞かないのは、儂を警戒しているからだと思ったが、紹介で言われた通り、元々無口な性分らしい。


「あたしは、カンザキ クミコ、クミって呼んでね職業はアークメイジ」

栗毛セミロングの三つ編みちゃんが答える


「私は~、ミンシア=アグラベル16歳、職業はアークプリーストだよ」

相変わらず眠そうで、金髪ショートの碧眼娘だ。


「のう、御主達、和風な名前が多いが、もしかして日本人?」


「ニホンジン?」


「いや、違うのなら良いのじゃ、異世界は1つだけでは無いしのう」


ちょっと残念。もしかしたら、同じところからの召喚者で、向こうの話ができるかなって思ったのじゃが。


「あ、でも~。私とミノルンは、同じ世界からの召喚者だよ~」


意外だ、和名でないミンシアと、和名のミノルが同じだなんて。


「僕らは同じ世界からってだけで、生まれた国は違いますけどね」


「では、残りの二人……ムサシ殿とクミは、同じ世界からだったり?」


「違いますよ、ムサシさんの国名は、あたしの世界には無かったし」


なるほど、同郷かどうかと言う判断基準は、国名を聞いた事あるかどうか……か。


でも、やっと自己紹介してくれて、少しは警戒が解けたのかの。



「儂は、先程名乗ったが。女神メディアじゃ、歳は6桁超えてから数えておらん、一応職業は魔法使いじゃ」


「え!? 上級職にしないんですか?」


「うむ、只でさえ持て余してる魔力を、上げたくないからのう」


そもそも、神族は無職なのが普通なのじゃがの。



儂の場合、何故か他の神が持つ『神力』ではなく、魔族が持つ『魔力』を持って生まれてしまい。その為、天界で落ちこぼれの烙印を押され、『末席神』としてギリギリの神を遣っていたのだが━━


その頃、ちょうど神々と魔族の争いの余波で、人間界が滅びる寸前になり、慌てて休戦協定が結ばれた時に、交換留学生制度が導入され、『魔力』を持つ儂に、白羽の矢が立ったと言うわけだ。


留学先の魔界の学校で、魔法使いの職業に着いたは良いが、結果として更に『魔力』が上がってしまい。


卒業試験で、校庭に大穴を開けた事で、『破壊神』と不名誉な名を、付けられてしまった。


今では学校の場所を移し、大穴は観光名所になっているらしいが━━


天界で、元々呼ばれていた『末席神』と、魔界での『破壊神』をくっ付けられ、『末席の破壊神』と呼ばれるように成ったのは、この異世界では内緒である。



そんな儂の悩みも知らずに、魔女娘のクミが

「贅沢な悩みですね」


「そうでもないぞ、威力がありすぎて、初級の初歩魔法以外、実戦で使えんしの」


魔力を抑えるのも、だいぶ上手くなったし、魔力を阻害する呪いの指輪や、呪いのアミュレットも在るお陰で、最近では中級の下位なら、爆発タイプ()()()()でギリギリ使える……かな?



「昔、中級の広域爆裂魔法で、入江が出来たことがあったからのう、上級呪文なら大陸が半分以上消えると思う」と話したら


うぁ、とちょっと引いてるクミ


しまった! 破壊神のイメージを、払拭しようとしてたのに……


「だ、大丈夫じゃ、世界の破壊などしないからの」


慌てて言い訳するが、チベット砂狐の様な眼で、此方を見ているので効果薄そうだ。



「あの~質問いいですか?」

ミンシアが割り込んでくるが、話題を変えるのに丁度いい、グッドタイミングだ!


「メディア様は、何でお爺さんみたいな喋り方なの?」


「え!? 変かの?」


儂の問に、4人とも同時に頷く


「いや、儂の居た『日本』……と言っても分からぬか……えっと、東方島国の老神達が、皆こんな感じで喋るのでの、これが東方神の常識なのかと、思うて居るのじゃが……」


今度は、4人とも同時に、首を横に振る。


「よ、良いのじゃ、今更変えるのも面倒じゃし」


「あ、開き直った」


また話題を変えねば……



「あ、そうそう。儂は食事は要らんぞ」

5人分の干し肉を出そうとしてるので、先に言って置く。


「お腹減らないの?」

と神官ミンシア


「うむ、食事も睡眠も必要ないし、トイレも風呂も必要ないぞ、そもそも代謝しないからな」

儂の背が伸びないのも、代謝しないせいだと思って居る。


まあ、風呂や水浴びは、たまにしないと、垢は出なくも埃っぽくなるがな。


「わあトイレしないのは便利だね~」


「儂の居た世界では、神族も魔族も似たような感じで、神力や魔力を消費し過ぎて、回復の為に仮眠と言うのはあったみたいだが。儂の場合、魔力枯渇自体、心配は無いからの」


「魔力どうなってるんですかね」

不思議そうにみつめるクミに


「儂にもわからん。ただ戦闘の途中で、魔力切れするのも怖いので。限界を確かめるべく、魔界の大荒野で多重結界を張って、上級魔法打ち続けた事あったが……」


「どうなったの?」


「5日目にして、魔力枯渇より先に喉が枯れて、詠唱不可能になった」


「本当に規格外な方ですね」

クミに呆れ顔で言われる


「同じ事を、魔界の友人にも言われた」

その魔界の友人は、卒業試験でペアを組んだのだが、大穴事件で憑き物が落ちたように大人しくなり。今では、魔王の息子の秘書を遣っている。


その息子も、魔界の学校のOBなのだが、我が妻に成れと今でも言ってくる。


たぶん日本に、儂が居らんので、捜して居るかも知れん。



儂は、立ち上がり、軽く身体を伸ばして、ストレッチを始めると、クミがどうしたんですか? と聞いてくる。


「ん? ちょっと花を摘みに」


「さっきトイレしないって言ったばかりじゃないですか」


「うむ、摘むと言っても、違うものだがの。ほら、戦士殿も、気付いたみたいじゃぞ」


戦士殿も立ち上がり、斧を構え周囲に気を張っている。


そこで、ようやく囲まれて居ることに、気が付いたらしく、クミとミンシアも立ち上がって警戒する。


「18……いや19人かの」


「見えるんですか?」


勇者も剣を構えながら訪ねて来る。


「うむ、『神眼』があるからの。暗闇でも表情まではっきり見えぞ、格好からして闇信者の残党みたいじゃな」


「ええ!? トイレなんて間際らしい事言わずに、敵なら敵と早く言ってくださいよ」


非難しながら杖を構えるクミ


「いや、トイレしないと言ったのにトイレと言えば、おかしいと気付くと思ったのじゃが……」


「気付きません!」


「もう、トイレの話はいいよ~。この後食事なのに~」


食事の前に、お前もメイス構えろ! とツッコミを入れたくなるような、ズレっぷりみせるミンシア


そこで、戦士殿が土を掛け火を消す


「あ! 待ってよ~。真っ暗でメイスが……」


せっかく、装備を整える時間を作ってたのに、台無しである。


仕方ないので、暗闇が見通せる儂が、落ちてるメイス拾って、ミンシアへ渡してやる。



「取り敢えず儂が先に出るぞ、御主達は暗闇に目が慣れるまで、背中合わせで待機を!」


そう言って走り出す。


メイスを拾うときに、一緒にいくつかの小石を拾って置いたので、指で小石を弾いて撃つ。


頭に命中し脳震盪を起こし倒れる信者A。


良かった撃ち抜かなくて、不殺は案外難しいのぅ。


まあ、一度加減がわかれば、その加減で指弾を撃ち続ければ良いわけで、2人3人と順調に倒していく。


いくら暗闇に目が慣れても、小さな小石を避けるのは難しいだろう。


8人を倒した時点で小石切れ。


拾ってるのも面倒なんで、そのまま接近しナイフを避わして、信者Iのローブの胸元を掴んでぶん投げる。


仲間が投げられたの見て、激怒した信者Jが後ろからナイフ突き出しくる。


回転しナイフの軌道からズレながら回し蹴りで吹っ飛ばす。


さらに襲い掛かる信者Kの腹に、掌打を打ち込んで吹っ飛ばしたら、吹っ飛んだ先に居た他の信者Lに当たった。

ラッキー。


お、逃走に切り替えたか賢明だな。


倒れた仲間を連れて、逃げていく。


追ってもしょうがないので、キャンプ地へ戻る。


丁度、クミの火矢の魔法で闇信者Mが火達磨にされていた。


「長いトイレでしたね」


その話、まだ続けるか……


勇者殿と戦士殿の周りにも数人倒れている。

「そちらも終わりましたか」


「うむ、12人ほど倒した所で、戦意喪失して逃げていった。まあ指揮官の居ない、寄せ集めなど半数を失えば……」


グウ~

「ごめんなさ~い、安心したらお腹が…」


ミンシアの気が抜ける腹の音で、皆大笑いであった。


まったく、締まらんな……そう言って苦笑する。



さて、夕食にするにしても、火を起こし直さねばな。


まだ熱々の炭を持ち上げて砂を払う

「それ熱くないんですか?」

心配そうに聞いてくる勇者ミノルに


「うむ、火耐性あるからの」

そう答えた後、半分炭化した薪を組み直し


「ほい、クミ先生! お願いします!」


「あたしですか!?」


「儂にやらせたら、灰も残らんが良いか?」


「ダメです」


そう言って、着火魔法で火をつけてくれる。


「それ便利じゃな、今まで儂の居た世界では、マッチやライターがあったから、魔法で着けようという考えは無かったのう」


マッチ? ライター? 聞き慣れない単語に?マークの4人に、そういう道具があったんだと説明してやる。


そうか、神眼があるので、夜に松明やランプ等要らなかったし、食事しないので、火を起こす必要も無かったものなぁ……


これから、異世界生活に必要になるかもなので、ちょっと覚えよう。


試しに、予備で置いてある薪に向かって、着火魔法を真似してみる━━━━と。


轟音と共に火柱が上がり、儂の背丈より高い炎が躍り狂う。


「なにやってんですか!」


「御主の真似をして、着火の魔法を……」


「どんだけ燃やすんですか! これじゃ炭も残りませんよ!」


「あ、でも~灰は残こりそうだよ~」

フォローになってないよミンシアさん。


「加減の難しい魔法じゃのう」


「いえ、魔法学校の初等部の新入生が、最初に習う魔法ですよ」


優秀な若者が多い事で……


「さ……さて、代わりの薪取ってくるかの」



クミの視線から、逃げるように、新しい薪取りに行くのだった。




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