30 ドワーフ自治区
すみません、更新遅れました
風邪がなかなか完治しないので申し訳ないです
沐浴の後
その夜は、リュカの指技のせいで、日課の散策に出る元気もなく
ヘルゼンの蔵書で、本を借りて読んでいた。
この国の文字は、自力で解読したので本を読むくらい楽勝である
誰かに教わった方が早いって思うじゃろうが
そう考えるのは寿命短し人間のする事
儂等神族にとって、永遠の時間をどう暇潰しするか…
そう簡単に終わらせては暇潰しが無くなってしまうのだ
だから敢えて遠回りする
まあ、神の中にも短気なのも居るので、全員が遠回りしないじゃろうがの
もうすぐ丑三つ時という頃
窓に小石が当てられる
窓越しに外を見ると、いつかのバンパイアロードが居た
もう再生したか…
流石に神聖な大聖堂に入れないらしく、離れた所から小石を投げ続けている
全くもって迷惑なやつじゃ
どうせ今夜も儂が夜の散策に出ると思って待っておったのじゃろう
残念ながら、今宵は読書と決め込んでおる
外の吸血鬼なぞ無視していたのじゃが、小石が窓を叩く音が煩わしくて
聖堂にあった聖水を投げ付けたら大人しくなった
愚か者め
どうせまた復活するじゃろうて
やっと静かになったので読書を再開するが
ヘルゼンの蔵書の本は大半が男の娘が出てくる本ばかりで
駆け出しプリーストのセシル君が気に入られてるのもわかった気がする
今度、本屋で801本でも見付けたら、ヘルゼンの蔵書に追加してお置いてやろう
そう言えば、セシル君…どうしたじゃろうか
あの時は、サリアの吸血鬼化を止めるべく置いてきぼりにし、走って帰ってしまったが無事だろうか
まさか、外に居た吸血鬼に…
と思い掛けたが、あの吸血鬼は女性しか血を吸わないと言っていたし
大丈夫じゃろう
まぁ、無事で居ることを祈る
そんな事をしていると、いつの間にか空が明るくなっていた
急ぎ出立の準備を始める
沐浴の洗礼を受ける前に、大聖堂を出なければならない
サリアはまだ眠そうだったが、沐浴の事を話すと
青ざめた顔で早く出発しようと急ぎ用意をする
二人逃げるように大聖堂を出ると見知った顔に出くわした
『セシル君ではないか、無事で良かった』
「無事じゃありませんよ」
「あの後ジャイアントベアに襲われ、逃げて木に登ったらキラービーの巣が…」
めったに魔物に出くわさない減衰期に凄いのぅ…
魔物を呼び寄せる能力でもあるみたいじゃ
『そ、それは災難じゃったのう、まあほら、ヘルゼンに報酬貰ってゆっくり休むのじゃ』
「そうします…」
そう一言発すると、大聖堂に入っていった
中でリュカの声がする
ああ、セシル君…綺麗に洗って貰うのじゃぞ
そう言ってそこを離れるのだった
ドワーフ自治区
王都から3日、西に位置するこの町は8割以上がドワーフという種族で成り立っていた
ドワーフは、他種族より器用で火に強いので、正に鍛冶にうってつけの種族である
見た目は、人間より背が低くガッシリとした筋肉質な体つきが多いため
戦闘でも前衛職として活躍する者も多い
町の後の2割は、人間の商人が武器の買い出しがてら、食糧を売りに来た行商人である
流石鍛冶の町だけあって、あちこちから鉄を打つ音がする。
『ほー凄いのう、神界の鍛冶場でも此処まで活気づいておらんわ』
「でも、食べ物の屋台が出て無くてつまんない」
サリアさん、本当に食い気だけなんですね
『まあ、そう言わずこの町で情報収集してドラゴンの事聞いてみよう』
「別に、私にはおかあさんが居るし、本当の親なんて…」
そうは言っても、やっぱり産みの親には逢いたいじゃろて
まあ、まだ此処に居ると決まったわけでないがの
取り敢えず、酒場にでも行って情報収集しようと酒場を探すが一発で見付かる
町で一番大きい建物で、大きく『酒』と書かれた看板が出ている
酒好きのドワーフ相手に、酒を売る商売するとは上手いことやってるようだ
中は、昼間から呑むドワーフと酌をする人間でごった返していた
出来るだけ良い武器を仕入れようと、酒を使った搦め手でドワーフを口説き落とす作戦らしい
取り敢えず2人だけなのでカウンター席に座る
『何か食べ物ってあるのかの?』
「酒の摘まみ位ならありますがね、ちゃんとした食事なら、宿でしてもらう方が良いですよ」
成る程、本当に酒だけなのね
というか、宿でってことは食事処も無いってことか
まあ、何も頼まずでは情報収集も出来んので、葡萄酒を注文しサリアには摘まみを適当に出してもらった
「ドラゴンですか?」
『そうドラゴン、口から火を吹いての、羽はえて飛んでる大きい奴じゃ』
店員は暫く此方の姿を見た後で
「まあ、あんたらドラゴン乱獲するようには見えねえし良いか」
そもそも武器も防具も持ってないなんて…魔物の減衰期って言っても盗賊は出るんだぜ
と心配されてしまった。
そして
「あの角で飲んでる奴に聞いてみな」
と一言だけ言うとチップを貰い接客に戻っていった
角の奴ねぇ
儂の神眼では、竜が人化して酒飲んでるように見えている
術の掛かりが甘いのぅ
神眼でなくも、気を抜くと尻尾が出たりしているのが見えるのでバレバレじゃし
せかっくなので席を隣に移動し話をしてみることに
『ここ、座っても良いかの?』
と断りを入れ、了承の返事をもらう前に強引に座る
「強引なお嬢さんだ」
ちょっと迷惑そうだが
『尻尾見えておるぞ』
と教えてやると慌てて引っ込めてる
「その成りでは、ハンターという訳ではないし、なに用だ?」
『そう警戒するでない、実は儂の娘の親を探している』
「…」
娘の親はお前だろとアホを見る目で此方を見ている
『すまん、言い方が悪かったの』
『この娘の産みの親である竜を探しておるのじゃ』
「その娘が竜?、どう見ても人間にしか見えん」
『ふん、儂の人化術を侮るでない』
「俺の術だって尻尾さえ上手く隠せれば完璧なんだ」
『いや、甘いの、目玉が竜の眼のままじゃ』
「これは…竜の眼も人化したら色々と不便に」
『そこじゃよ、見た目は人化しても能力はそのままって言うのが儂の人化術じゃ』
しかも永続じゃぞ
「そんなの人の業では無いではないか」
『うむ、正に神の業じゃ』
『そこで取引じゃ、この儂の完璧な人化術を掛けてやる代わりに、儂等をドラゴンの集落に案内してくれんか?』
んーっと唸って考えている
まあそりゃそうか、いきなり現れて親を捜してるだけで、手出ししないから信用しろって言われても信用できんのだろう
「おかあさん、もう良いよ」
とサリアがお摘みの燻製肉を頬張りながら言う
『ほら見ろ、娘も産みの親に逢いたいと泣いているではないか』
「全然そうには見えないし、その台詞も一言も合ってないじゃないか」
冗談はさておき
『いやなに、儂もな逢って聞いてみたいのじゃ、なぜ自分の卵を森に置いていったのだか…』
「なに?森にあっただと?」
『うむ、アルセリアの森の中で、毒キノコ食ってたときに見付けたのじゃ』
「それなら心当たりがある…火山から移動するときに卵を落っことしたという奴が居るんだ」
お!?
いきなり見付かった?
『その者に、逢わせて貰えんかの?』
暫く考えた後
「良いだろう、但しその娘が本当に竜なら、その証を見せて貰いたい」
此処だと騒ぎになるんで、町の外でって事になった
外に移動し、サリアに炎を吹いて貰い
部分だけ解除し、竜の鉤爪や尻尾をだして見せてやる
「凄いな、本当に能力残したまま人化してるのか…」
「俺の人化術だと中身まで人化するので、1度術を解かないと炎も吐けないし爪も使えないんだ」
嬢ちゃん本当に竜なんだなっと解ってもらえたようだ
「じゃあ、あんたらを新しい竜の里に案内してやるぜ、俺の名はサルジオ宜しくな」
とサルジオの案内で、後をついて山に入るのだった。
もしかすると、明日も更新遅れるかもしれません。