29 ドラゴン大移動
勇者達に稽古をつけた翌日
散々しごいたので、流石に今日は現れそうに無い
であるなら、時間を無駄にすることも無いので、御前試合までに帰れそうなクエストを探そうかと思う
『ヘルゼンよ、御前試合までの正確な日時が解るかの?』
「日時でございますか?んーそうですな…今日を含め25日後ですかな」
25日か
『ん~御主、他に魔物に襲われてそうな鉱山持っとらんかの?』
「いえいえいえ、私の持ち物件ばかり襲われると言うのも、おかしいですから」
「それに、そんなに鉱山ばかり持ってはおりません」
『ばかり?、と言うことは他にあるのじゃろ?』
「まあ…ありますが…」
「シヴァルカに牧場と港町アティウラに魚を扱う店を持っております」
『ほう、手広くやっておるではないか』
魚か…
そう言えば、サリアに食べさせたこと無かったの
『サリア、お魚食べた事ないじゃろ、食べに行ってみるかの?』
「えーお肉があればいいよ」
「おかあさんの記憶だと小骨とか刺さって面倒くさそうだし」
成る程のう、言葉教えるのに神智ギフトしたが
儂の日本での記憶が一緒にギフトされておったのか…
確かに、殆ど丸呑みに近い食べ方するサリアにとって、小骨をチマチマ取りながらの食事は、面倒くさいのじゃろう
刺身なら骨無いんじゃ?と思ったが、そもそも食料保存が厳しい世界で、生魚とか大丈夫なのか…
まあ、サリアは肉も生で食べちゃうぐらいだし、魚も生で行けるかもしれん
竜の消化器官は、人間より強そうじゃしのう
となると、港町アティウラは今回パスかの
サリアが魚に興味を示さないし、船で海の向こうの大陸に行くわけでも無いしの
あと、残るは西にあるドワーフ自治区か
確か王都から片道3日の距離にあり、グランシア王国に多額の税金を納める代わりに、政治介入をしないと言う約款があるため、グランシアの敵国だろうと武器を売ることができる
敵も味方も関係ないと言う武器職人の集団の集まりである。
但し、武器を扱える腕がないと、いくらお金を積まれようと造って貰えないと言う
ただのコレクターは、洟も引っ掛けて貰えないじゃろう
その辺は、儂の居た天界の加治神も同じで、武器を扱える腕さえあれば魔族でさえ造ってあげてたし
儂もよく、属性を練り込んだ武器を造るときは、手伝いに行っておったのは良い思い出である
往復で6日、旅に必要な物を買い揃えるのに1日抜いても、18日間は滞在できると言うことか
包丁どうするかのぅ
一時期、料理を本気で考えたが、サリアが生肉でも関係ない丸呑みに派なので
料理し甲斐がない
そんな事を考えているとヘルゼンが
「此れは噂なのですが、ドワーフ自治区のある山の上にドラゴンの集落があると言うのです」
『なんじゃと?それは本当か?』
「あくまで噂ですよ、本来アルセリアの西にある火山に住んでいたドラゴン達が、ある日を境に大移動をしたとかで」
「もしかしたら、火山が噴火する予兆なのでは?なんて信者達が噂してましたので」
『成る程、それで移動先が火山の次に暖かい、火を扱うドワーフ自治区の山の上と言うのじゃな』
う~む
もしかしたら、サリアの産みの親が居るかも知れんの
それはそれで、両親に是非逢わせてやりたい。
『よし!ではドワーフ自治区に行ってくるのじゃ、勇者達が来たらそう伝えてくれ』
「御意、では直ぐに発つのですかな?」
『自治区までの食料等買い揃え次第かの』
その後、チズの手帳で良い雑貨屋を教えて貰い旅支度を済ませるが
出発するには時間が微妙な感じなので、今日のところは大聖堂に泊まり翌日朝に出発することにする
その夜
さて…
『どうしたものかの…』
儂とサリアは、リュカとチズの魔のセッケン地獄を回避するため、大聖堂の中を隠れ逃げ回っていた
『今回もあんなものを食らったら、旅立つ前に心が折れるわ』
「うん、二度とゴメンだよ」
二人して匍匐前進をし信者の座る椅子の間を進む
が
突然床が離れていく
いつの間にか抱き上げられ脇に抱えられていた
「見付けました」
『な!?何処から湧いて出た』
もがきながら後ろを見ると、サリアが同じく涙目でチズの脇に抱えられてる
御主も捕まったか…
そのまま浴場に連れて行かれる服を脱がされる
『のうリュカよ、自分で洗うから降ろしてくれんかの?』
「それはできません、此れは私達の使命ですので」
ダメじゃ、聞いてくれぬ…
「大丈夫です、これから旅へ出る前に、全て綺麗に汚れを落として見せます」
『それが大丈夫じゃないんじゃー、って普通そんなとこまで…ひゃああああ』
普通、鼻の穴や耳の中までセッケンで洗わんじゃろう…
誰か…間違ったセッケンの使い方正してやって…