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2 指針

破壊神として召喚されたと聞いて、勇者達は明らかに警戒しているのがわかる。


しまった、これは早めに誤解を解いて置かないと、討伐されたら洒落にならん。


「あ、いやそんなに警戒しなくも大丈夫じゃ、破壊神として召喚されても、儂にその気はないからの。神界法もあるしの」


「神界法ですか?」

そう神官娘が聞いてくる。やはり、神に携わる職業上、興味があるのだろう。


「うむ。神界法は、神々の取り決めた、神の為の法律じゃ」


神は、色んな世界へ行き来できるが、行った先の世界を、『無闇に荒らしてはいけない』と言うのがある。


『荒らす』と言うのは、破壊しまくると言うだけではない。


その世界の文明レベルに合わない知識を与えるのも、『荒らす』に含まれるのだ。


その為、まだ猟しか出来ないレベルに、水路や田畑の作り方を伝授したりするのも、してはならないのである。


ただし、抜け道が無いわけではない。


神が、直接やって見せて、伝えるのは禁止されているが、人間の指導者の夢に出て、夢の中で遣り方を教え、その指導者が伝えるのは、OKなのだ。


だが、その世界を創った創造神は、自分の箱庭なので、好き勝手できると言うのとか……そう言う取り決めが『神界法』なのだ。



取り敢えず、神だけが出せる。『世界レベル表』を空中に表示する。


此れを見て、世界レベルを確認して置かないと、大丈夫と思って使った、知識や魔法が神界法に抵触する場合がある。


神界法を破った場合、『神議(かむはかり)』と言った、神々の裁判にかけられ。最悪、『邪神』として認定され、他の神に命を狙われたり、勇者を差し向けられたりするので、注意が必要だ。


この『世界レベル表』は人間には見えないので、儂が何もない空中に指を動かして不思議に見えるだろうが、仕方有るまい。


世界レベル表では、文明レベルが中世位かの……


魔法はあり、魔物が1000年置きに、増えたり減ったりを繰り返す……ね。


早い話、日本で流行っていた、RPGみたいな剣と魔法の世界らしい。


他には……創造神の名が『女神ミレニア』か。


そんなに、原始時代レベルと言い訳でないみたいだし、気を使わなくも大丈夫じゃな。



儂は、『世界レベル表』を閉じると、今後の事を思案する。



今回は、自分で世界を移動したのではなく、『召喚』で強制された為。帰りたくても帰れなくなってしまったのだ。


帰る方法は3つ。


1つ目、自分のスキルで、世界に横穴を開け、他世界へ移動する。


これは、ランダムな移動になるので、元の日本へ帰れる確率は0に近い。


何度も繰り返していれば、何時かは帰れるかも知れないが、異世界は星の数より多いのだ。何万年掛かるか分かったモノではない。



2つ目、召喚師の願いを叶えて、契約を終えて帰ると言うものだ。


あの闇神官……ヴェルゴルドと言ったか? あやつの願い……確か『世界の破壊』だったかな。流石にそれは、神界法に抵触するどころか、即抹消対象にされかねん。


それに、儂自身が意味のない破壊を好まんしのう。


という訳で、これも却下。



3つ目、召喚師の契約放棄━━━━


つまり、召喚師自身が死んだり、キャンセルを行った場合は、召喚者は即帰れるのだ。


キャンセルの場合は、キャンセル料を貰えるが、儂は元の世界へ戻れるのなら、キャンセル料など要らぬので、帰して貰いたい。


ただし、頑として『世界の破壊』をさせようと言うなら、最悪、召喚師の闇神官ヴェルゴルドを、亡き者とする事も考えねばならないのだ。



よし! 当面はヴェルゴルドを捜すことを指針としよう。



そう決めて歩き出すと、一定の距離を保ち勇者達が着いてくる。


「あの~、何処に行かれるのですか?」

金髪神官娘ちゃんが沈黙を破り聞いて来た。


「んー、宛はないのじゃが……取り敢えず、あの闇神官を見つけ出す」


「え!? さっきの爆発で死んだんじゃ?」


「いや、おそらく生きておる、召喚師が死ねば自動的に帰れるはずが、帰れてないのがその証拠じゃ。それに、火球が爆発する寸前に、懐から七色に輝く羽根を使うの見えた」


「転移の羽根!!」

勇者と魔女娘の声がハモる。


「転移の羽根?」


勇者を押し退け、私が説明するとばかりに、前へ出てくる三つ編み魔女ちゃん。


「ええ、転移の羽根は、使用者が1度行った事がある場所なら、何処へでも転移可能なアイテムで、ロック鳥が稀に落とすんです。」


「ロック鳥?」

日本には居らん鳥じゃの。


「ロック鳥というのは、大きな鳥型の魔物で、大きさもドラゴンに匹敵し、牛を鷲掴みし餌として連れ去るほどで、縄張り意識が強く、テリトリーに入る者は、格上のドラゴンでさえ襲い掛かる獰猛さ」


一気に、息継ぎ無しに話したせいで、魔女は息切れを起こし、仕方なく勇者がその続きを話し出す。


「あれを討伐するには、Bランク以上の冒険者30人以上で挑むのが定石で。AランクとBランク混合でも20人以上じゃないと危険ですよ」


「そうじゃったか……それなら値も張るじゃろ?」

と勇者へ聞いたつもりが


「討伐難易度の高さ、1000匹に1枚の希少さから、王都に豪邸が建つ程の高額で、売買されていると聞きます。」

最後は、あたしが締め括ると言って、魔女娘が酸欠より回復し、蘊蓄(うんちく)をまくし立てた。


余程、知識の披露が好きらしく、背後で勇者達が『まただよ……』と呆れ顔をしている。



「成る程のう。しかし、よくそんな高価な代物を、個人が所有しておったの」


「普通、余程の大物貴族か、王族しか買えないので、たぶん貴族信者の貢物でしょう…」


「そうか、1度行った所ならどんな所でものぅ……便利じゃな」


「しかし、使用制限がありますよ、使う度に七色の色が減っていくんです。最後は光が消えただの羽根になります」


「ほう……」


「いやー、あたしも1度実験してみたいんですよ。海を越えての、長距離大陸間移動ができるのか? とかダンジョンの奥深くから、地上への転移はできるのか?とか後……」


この魔女娘、永遠と喋り続けているな。


しかし、話が本当なら。闇神官ヴェルゴルドが、懐から出したとき、七色だったから未使用だった筈。


今回逃走に使ってたから、あと6回使えるのか?


もしかして、異世界転移もできるのかのう、無理だろうけど、ちょっと試してみたい。



取り敢えず、語りの止まらない魔女娘は放置で話を進める。


「まあ、儂の当面の指針は。取り敢えず、あのヴェルゴルドと言う、闇神官を見つけ出す事。その為には村や町で情報収集せねばな」


「では、僕らと一緒に王都へ行きませんか?王都ほどの大都市なら情報も入ると思うんですよ」


まだ語り足りないと言った表情の、三つ編み魔女を引っ込め、勇者が前に出ながら言ってくる。


「それと、本当に危険な破壊神でないと、見極めねばなりませんし、監視もかねて……ね」


やっぱり信用されてない。


仕方ないか、少しずつ誤解を解いていこう。


「あと、今回の事を、アルセリア国王へ報告義務があるので、報告しなければなりませんから」


うわぁ、ヤバイな。、報告内容によっては、人類の敵として討伐対象になりかねん。


それだけは避けねば。


いや本気でやれば、剣と魔法の文明レベルだし、全人類と戦っても勝てそうではあるが、それをやっても喜ぶのは、破壊を望む闇神官ヴェルゴルドだけだし。


プリンの恨みがある、アヤツを喜ばせるのは業腹(ごうはら)である。


ま、しばらく大人しくして居よう。



「それじゃあ決まりね! さっそく王都へ向かって行きましょう」

そう、意気揚々と出発しようとしている、魔女娘の三つ編みを引っ張って止める勇者。


「何するのよ! 首がグキっとなったじゃない……痛いなもう…」

首をさすりながら非難の声をあげる。


「もう夕方だし日が暮れるから、この先強引に進んで薄暗い森の中で、狼や魔物に警戒しながら夜営するぐらいなら、森の入り口のここで夜営するぞ」


勇者は夜営道具を広げ始め。

無口なので、戦闘以外では目立たない戦士殿も、せっせと杭を打ちテントを張って、夜営の準備をしている。


ただ見ているのも暇なので、儂が薪を用意しようと言い、近くの木に手を当て━━━━


「すまんが少し枝を分けてもらうぞ」

そう樹木に断りをいれて、手刀で適当な枝を落とす。


「あダメだよ~、生木は燃えないから…」

と金髪神官が慌ててやってくる。


「確かに生木は燃えないな、だから生木でなくせばよい」


そう言って、落とした枝に速度増加ヘイストの魔法を超速で掛ける。

2年ぐらい進めれば良いかの……


「すご~い!一気にカラカラになった」


「これぐらい乾けば火の着きも良かろう」

そう言って、呆けて居る勇者に、薪を渡してやる


「何か、我々の薪拾いとはレベルが違ったんで……」


「普通なら、森に入いって枝を拾い集めるのだろうけど、森の外がこれだけ薄暗いと、森の中は真っ暗じゃ。暗い森に、草を分けいって入り、毒蛇にでも噛まれれば危ないからの、他にも毒蜘蛛や蛭なんかも居るかも知れんから、昼間明るいときならまだしも、夜は入るものじゃないと思うてな」


まあ。元々神族は、全ステータス異常無効なので、毒蛇とか関係ないのじゃがの。


蜘蛛の巣に、引っ掛かりたく無いと言うのが、正直な処だ。


「朝まで、火を絶やさぬようにするなら、もうちょっと要るかの」


追加の薪を取ってこようとしたら、三つ編み魔女が強引に枝をへし折って持ってくるのが見えた。


どうやらもう一回見たいらしいので、リクエストに応えて見せてやる。


勿論、神界法に抵触しない事も、確かめての。


速度増加は、この世界にも存在する魔法だし、見せても大丈夫じゃ。


ただし、重ね掛けが珍しいらしく、全員周りに集まってくる中で、披露するのは少し照れる。



「魔法施術中は、魔方陣の中に手を出すでないぞ、手を出すと手だけ2年分歳をとるぞ」


乾いていく過程を間近で観察したいのか、手を出したくてしょうがなそうな魔女に忠告したら、自分の手見詰めて引っ込めた。


おそらく、シワシワになった、自分の手を想像したのだろう。


2年ぐらいじゃ、皺なんて出来ぬだろうが、変なところで、乙女なのじゃな。


「それにしても、便利ですね~」


「まあ、元々は戦闘で、仲間の速度増加に使うものじゃが、応用して時を進め、発酵を早めチーズを作ったり、血抜きをした肉を熟成させたりにも使えるぞ」


肉を香草で巻いて、一緒に時間進めれば生臭さが飛ぶので、戦闘で速度増加に使うより重宝している。


「良いなぁ、あたしにも教えて」

そう言ってくる魔女娘に


「なんじゃ、主は時魔法使えんのか?」


「ええ、どちらかと言うと、速度増加や攻撃力増加とかの支援魔法は、僧侶の区分だもの」


「そうだね~、私は使えるよ~。でも、お肉とか枝に使った事ないや」

相変わらず、眠そうに間延びする喋り方の神官ちゃん。


「そうか、教えるのは構わんが、主等では無理かもしれんな」


「えー、そんなぁ」

何か、すっごい残念そうな顔してる、魔女娘に話を続けてやる


「魔法は、効果を上げると、比例して消費魔力も上がる。速度増加魔法は、通常2倍の速度にするだけじゃが……速度を更に倍の、4倍にすると消費魔力も当然倍化する」


「それは、当然よね」

そう言いながら頷く魔女娘だが、次の儂の言葉で、無理だと知ることになる。


「そこで問題じゃが、倍速で2年が1年になるとして、2年を1分に縮めるには、何倍速にすれば良い? そして、その時の消費魔力は?」


それを聞いて、青ざめる魔女娘と。隣で指を折りながら、馬鹿正直に計算している神官娘。


別に、膨大な魔力が必要とわかってもらえれば良いだけで、正確な答えを求める質問じゃ無いんだがの……


「そう言うことじゃ、此ればかりは、魔力有り余ってる儂しかできん」



残念そうに、肩を落としている三つ編み魔女が可哀想なので、通常の速度増加を教えてやると言ったのだが、神官のミンシアが使えるからと断られた。


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