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体質が変わったので 改め 御崎兄弟のおもひで献立  作者: JUN


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チビッ子編  神社の猫さん(1)子猫を追って

 子猫。それは幼児にとってもとても小さく、か弱い生き物に見えた。

「かわいいねえ」

「ふわふわしてて、ちっちゃくて、ぬいぐるみみたいだよねえ」

 怜と直は、塀の上をウロウロと歩いている子猫を見ていた。

 上ったものの下りられなくなったらしい。

「下りたいの?」

 怜が訊くと、

「にゃあ」

と、返事をするかの如く鳴く。

 怜と直は、かわいい子猫を助けられないかと、辺りを見回した。塀の高さは、大人の背丈くらいあるし、生憎ここを通りかかる大人はいなかった。

 と、そばにとまっている車が目に入った。幌の付いた軽トラックで、運転手も見当たらない。

「ここに上ったら届くかなあ」

 怜と直は、トラックの荷台によじ登って、手を延ばしてみた。

 辛うじて届きそうだが、落ちそうで怖い。

「怜、ボクが押さえてるよ」

 直が言って、怜の腰に両手を回す。それで怜は思い切って、手を延ばした。

「おいで」

「にゃあん」

 子猫は様子を見るように2人を見ていたが、大丈夫そうだと思ったのか、一声鳴いて、怜の腕伝いに飛び込んで来た。

「直、もういいよ」

「うん。もう大丈夫だよ、ネコちゃん」

 怜と直と子猫は、ホッとしてトラックの荷台に座り込んだ。

 そして、トラックを降りようと立ち上がりかけた時、トラックの運転席で、ドアを開け、乱暴に締める音がし、

「あ。運転手さんが帰って来たのかな」

「早く下りないと」

と言っているうちに、トラックはエンジンをかけ、走り出してしまった。

「え!?」

「お、下りられない!」

「にゃあ!」

「……運転手さんに、怒られないかな、怜」

「……」

 それよりも、兄に叱られそうだ。

「次に止まったら、こっそり下りて帰ろうか、直」

「それがいいよね」

「にゃああ……」

 2人と1匹は、幌の中で身を寄せ合って寒さをしのぎながら、大人しくトラックが止まるのを待った。


 幌の中にいると、外が見えない。ガタゴトと揺れ、時折曲がる時に体が大きくかしぐ。それで、気持ち悪くなって、2人と1匹は声も出せずに横になっていた。車酔いである。

 ほかの車の音がしなくなり、揺れが大きくなり、やがてトラックは止まった。

 ドアを開ける音がし、

「急げ」

「お、おう!」

という声の後、ドアを閉める音がして、誰かが走って行く足音がした。その後、別の車のエンジンがかかり、走り去るのが聞こえた。

「う……直、大丈夫?」

「……気持ち悪い……」

「下りようか……」

「そうだね……」

「にゃあ」

 よろよろと荷台から怜と直が下り、子猫を抱く。

 そして、周囲を見回した。

 山の中だった。

「ここ、どこ?」

 怜も直も完全な迷子になっており、途方に暮れたのだった。





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