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体質が変わったので 改め 御崎兄弟のおもひで献立  作者: JUN


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探す・ユキ(2)友人

山間部の小さい集落に、当時、ユキ達一家は住んでいた。父親の転勤によるもので、近くにスーパーもなければ銀行もない、自動車がなければ生活に困るような所だった。

 だが、幼稚園前の子供にとっては、すぐに環境に慣れ、新しい遊び方を発見すれば、何の問題もない。

 集落にユキと同じくらいの年頃の子供はいなかったが、外れにある大きな研修施設のような所には、マミという同い年の女の子がいた。

 集落の人はあまりはっきりと言いたがらなかったが、この施設は宗教色のあるものらしく、集落との関りをお互いに持たずにいるようだ。

 ユキは1人で探検に行ったときにここを見つけ、何度か外から覗いているうちに、マミに会ったのだ。

「何してるの」

「お散歩」

「一緒に遊ぼう」

 マミの方も周りに子供はおらず、2人が一緒に遊びだすのは、当然のようなものだった。

 最初は集落の人も警戒するようだったが、やがて、相手は素直で幼い子供、その必要もないと、集落の中を歩いていても、誰も気にしなくなっていった。

「マミちゃんの家は大きいね。それに、いっぱい、人がいるね」

 それがユキには不思議だった。

「ユキちゃんの家の人は、笑ったり、怒ったりするのね。それに、お辞儀をしないわ」

 それがマミには不思議で、それが不思議だというのが、ユキには不思議でしかなかった。

 それでも毎日のように、走り回ったり、本を読んだり、昼寝をしたりして、まるで仲のいい姉妹のようになるのに、そう大して時間はかからなかったのである。


 そんな、いつもの平凡な1日になるはずだったある日。セミの抜け殻を集めて並べていると、青い顔のひょろっとした女の人が来た。マミの家の人だ。

「帰りなさい」

 と言うや、マミの手を掴んで強引に立ち上がらせる。

「もっと遊びたい」

 マミが言っても、

「いけません。急いで下さい」

と、聞く耳を持たない。

「嫌、離して!」

「マミちゃん!」

「幽霊に食べられる!!」

 その人はマミを引きずるようにして、帰って行った。

 マミを助けられなかったユキは、家へ帰り、両親にそれを訴えた。

「マミちゃんが幽霊に食べられる」

と。

 大人にしてみれば、何をバカな事を、というだけの話だ。

 だが、あまりにもユキが言うので、虐待かも知れないと、外れのその施設へ行ってみたのだ。

 そして聞かされたのは、

「マミは本当は健康上の問題があって、外で遊べる子ではないのです。それが、いつの間にか目を盗んで外へ出てしまい、困っていた所です」

という話だった。

 出て来たマミも、

「ごめんなさい。もう、家でじっとしていないとだめなの」

と冷たい顔で笑ったのだ。

「マミちゃん?」

「なあに、ユキちゃん」

「幽霊、怖くない?」

「幽霊?そんなもの、いないのよ、ユキちゃん」

 それが、マミとの最後だった。






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