7人みさき(3)7人の悪魔
7人みさき。いつまでも終わらない、7人の旅路。
「何でそんなもんが……。まあ、発祥は四国や中国やけど、よそにないわけやあらへんしな。それよりも、まずは調査や。3人共、いつでも連絡取れるようにしといてや」
津山先生は言って、見つけた徳川さんと兄を外へ引っ張って行った。
「京香さん。7人みさきだとしたら、どうすればいい。祓えば済むのか」
京香さんは真剣な顔で声を潜めて、
「難しいわね。昔からあれには手を焼いて来たのよ。封印でようやくよ。
ああ、それが何らかの理由で、解けたのかも知れないわね」
そんなに厄介なものなのか。
「質が悪いよね。1人殺して、1人成仏って。生贄の連鎖だよ」
「本当にその通りよ。防ぐ方法もよくわからないから、二重に、嫌なやつらだわ」
「次のターゲットになったら、何かわかるんですか」
「高熱を出して死ぬって言われてるけど、出てからじゃ間に合わないし」
「高熱が今朝出てたら、今頃は家で寝てるだろうから、こっちもわからないな」
お手上げの意味がわかった。
「とにかく、先生を待ちましょう」
残りの当番を、ジリジリしながら過ごす。そして交代した直後、徳川さんから集合がかかった。
なにせ今日は、人目のない所がない。密談に、何と向かない日か!
「遅くなりました」
3人が飛び込んだのは、地学教官室だった。いたのは徳川さん、兄、津山先生で、辻本先生はおらず、勝手に使ってくれていいと言っていたそうだ。
「調べさせたら、近所に住むお年寄りが1人、今朝亡くなっていたそうだ。枕元に解熱剤があったそうだが、発熱からの脱水症状及び衰弱となりそうだよ」
徳川さんが前置きなしで話に入る。
「それは、7人みさきの犠牲者ですか」
「多分そうやろう、としか言えんのや」
津山先生が陰鬱な声音で答えた。
「霊的な面での対処は、我々にはさっぱりです。しかし、できる事は指示してもらえたらやりますよ」
徳川警視が言うが、津山先生は困り切った様子で、嘆息する。
「それがやなあ、これに関しては打てる手ぇいうんもそうのうてなあ。それこそ、村全滅して終息とかいうんもあったんや。何せ、誰が次なんかわからへん。わかる時は、死ぬ時や」
学校にいる人間が全滅するのは、まず過ぎる。
「校内の人間をここからすぐに避難させては」
京香さんが言うが、
「その中に次にターゲットが入っとったら何にもならんからなあ。ターゲットになりました、いう印が、分かり易かったら良かったんやけどなあ」
と、津山先生は首を振る。
それでも、全滅を待つわけにはいかない。
「最悪の場合、何グループにも分けて、感染済みの当たりグループだけを犠牲にして封じ込める、という手は使えますか」
徳川さんが言うのに、京香さんが弾かれたように顔を上げた。
「そうやな。それがさしあたっての、一番犠牲を少のうする方法やろか」
当たりグループに入った人にとっては酷い話だろう。だが、間違いではない。でも、納得できるかと言えば、どうだろう。他に手は本当にないのか?これで後から、自分に言い訳しないか?
「津山先生。7人みさきがターゲティングする時、或いは入れ替わりの時、姿を見せますか」
「そう言われてる。迎えに来る、いうて」
「姿を見せてから、7人目を選ぶんですか」
「そこまではなあ。ただ、姿を見て、逃げたいうんもあるからな。姿を現してから、なんぼかは猶予があるかもしれんなあ。
そやけどな、怜。かも知れん、や。それにかけるんは、危険や」
ううん。今、7人みさきはどこにいるんだろう。
「ん?」
皆が何かとこっちを見て来るが、説明より、頭の中で整理するのが先だ。
いけるかな――理論的には。
大丈夫かな――頑張るしかないな。
よし。
「どうせ文化祭だ。何をやっても、そういう演出で済む。だから、ビッグステージをやりませんか」
「……ええやろ。祭りや。祭りは参加してなんぼや。よっしゃ、言うてみ。面白い企画やったら、のったるさかいに」
かくして、ぶっつけ本番且つ失敗厳禁のビッグショーの計画が練られたのだった。




