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体質が変わったので 改め 御崎兄弟のおもひで献立  作者: JUN


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探す・直(2)体、貸します

 これは、夢だとわかっていた。こういうのを明晰夢とかいうんだったと思う。

 知らない20代半ばくらいの男が目の前にいた。そいつは真剣な顔で、ボクに言った。

「済まない。しかし、どうしてもあいつを探さなければいけないんだ。体を貸して欲しい」

「あいつ……」

「親友だ。行方不明になったが、社長に殺されたに違いないんだ。俺を殺したように」

「殺されたんですか、あなた?」

「ああ。社長を問い詰めたら、殴り殺された。

 頼む、協力してくれ。あいつが見付からないと、あいつと俺が横領と違法献金の罪を着せられて、妹の縁談が破断になってしまうし、あいつに罪を着せられない。俺達は親友だからな」

 ああ、細かい事情はわからないけど、わかった。

 あの社員章に触った時、この人が憑いたんだろう。

「体を貸したら、死ぬとかそのまま乗っ取られるとかは……」

「そんなことはしない。約束する」

 親友は大事だもんな。良し。

「わかった。協力してもいいよ。

 ただ、記憶が無くなるのは勘弁して欲しいんだよね」

「わかった。ありがとう。感謝する」

 それで、夢からさめた。


 田舎近くの山中を、ボクは歩いていた。

 交通費で完全にデジカメを諦める羽目になったし、お気に入りのシューズは泥だらけだったけど。

<どう。まいたかな>

<ああ、どこかに行った>

 霊が見える事に霊に勘付かれると、追って来るやつがいるのだ。

 それにしても、頭の中で直接会話できるのはいいなあ。春に怜に憑りついた先輩と会話するのに、怜の独り言みたいになってたから、人前では困ってたもんなあ。

 思い出したら、笑えてくる。

<怜君っていう子と、仲がいいんだな>

<幼稚園からの、無二の相棒だよ>

<そうか……>

<頭の中で会話できるのって、普通なの>

<多分、憑いていればな。その先輩が不器用だったか、思いもしなかったか>

<ああ、どっちもあり得る……>

 1人でヘラッと笑いながら、道なき道を進む。

 と、生い茂った雑木林の中に、壮年の男の姿が見えた。

<社長だ>

 直は身を屈めて、様子を窺った。

 その男は懸命に地面にシャベルを突き立てていたが、やがて手を止めると、その穴の中を覗き飲んで、大笑いを始めた。

「ちゃんとここにあるじゃないか。あはははは!」

<あれ、何?>

<君の体を借りて電話をかけたんだった。あんたが殺した男の死体がここにあるって。ボロを出すかと思って>

<出したかも。どっちか、いや、どっちもかも>

 社長が再び穴に土を入れ、フラフラと近くの高そうな車に乗り込んで帰って行くのを見て、そろそろと確認しに行く。

<どうするんだ>

<掘り起こして、警察に知らせるんだよ>

 穴は2つ並んでいた。

 掘るものがないので、その辺の板切れで掘る。

 やがて、夢で会った顔が出て来た。

<俺だ……。じゃあ、こっちが、あいつか>

 もう片方を掘る。

<ああ。こんなところに……>

 胸を締め付けられるように苦しい。

 と、背後から声がした。

「何をしている!?」

 恐ろしい顔の、社長がいた。










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― 新着の感想 ―
たった今読み終えた文庫本の続きが気になったので検索させていただきました。 続きがあって良かった\(^^)/ 怜くんに続いて直君まで捲き込まれ体質に? これからゆっくり読み進めたいと思いますのでよろしく…
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