表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
体質が変わったので 改め 御崎兄弟のおもひで献立  作者: JUN


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/1046

竜宮城(4)そして振出しに戻る


 白い砂浜が強い太陽に焼かれているのをチラッと眺め、僕はまた、手元の文庫本に目を落とす。

「怜、泳がない?明日は帰るんだよ?」

「こんなに暑いのに、面倒臭い」

 直はひょいと肩を竦めて、近くに座った。

 穴はあの岩のそれほど深くない所にあり、僕達は覚悟の割には何という事もなしに外へ出る事ができたのだ。

 翌日もう一度中を調べると、広間になっていた所には何体分もの人骨が並んで寝かされており、骨に、古い布が残っているのもあった。

 それにあのドーム状の所には、流れ着いたと思しきビーチサンダルや空き缶があり、付近の漂流物は、あの岩に流れ着くような潮流になっているらしい。

 すた谷ーー捨て谷から飛び降りた人は、死んであの岩に漂着し、定期的に入り込んでいた村民によって奥の広間に安置されていたのだろう。そして子や孫は、岩にしめ縄を張って神として拝むと共に、彼らは竜宮城に行ったのだと、言い表していたのだろう。

 岩の穴は外から見ると分かり難い角度になっていたが、念の為、手頃な石で塞いでおいた。もう子孫があそこに入る事もなさそうだし、今から過去を暴き立てる必要もないだろう。

 静かに眠ればいいのだ、死者というものは。

「結局、文化祭の出し物にはできそうもないねえ」

「そこだよなあ、問題は」

 エリカが何か面倒臭い事を言い出すに違いない。

「まあ、部室は便利だし、割と楽しいし、ちょっとくらいなら存続の為に面倒臭いのも我慢しよう」

 何がおかしいのか、直はクスクスと笑い出した。

「明日司さんのお土産買いに行くだろ。何かいいものあるかな、こっちの名物」

「海産物とか妖怪のお菓子とかだな。兄ちゃんには、カニとカレイと妖怪サブレにしようかと思ってるんだ。京香さんにはイカ徳利かな」

「あの人、肝臓強いよね」

「超合金でできてるんじゃないかな」

「それにもし京香さんが浦島太郎だったら、戻った時に年月が経っているとわかった瞬間、亀を探し出して竜宮城に戻って、乙姫に往復ビンタかまして、慰謝料とか言って残りのお酒を全部飲むに違いないよ」

 想像し、うんうんと頷き合う。

「やるな」

「絶対やる」

 そこにエリカとユキが、メモ帳を持って現れた。

「結局これ以外で何か活動報告をしなくちゃいけません。

 とうわけで、お化け屋敷と言われている廃墟を回るとかどうでしょう?」

「霊感を上げる滝行とかもあるわよ」

「やめてくれよ、面倒臭いのは」

 僕は心から、嘆息した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 最近読み出しました。 先が長いのでまだまだ楽しめると ニヤニヤしております。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ