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体質が変わったので 改め 御崎兄弟のおもひで献立  作者: JUN


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啜る(3)変色

 仏頂面で、部長と次の借り手がこちらを睨んでいる。

「というわけなので、この、これまでの結果を考えて判断して下さいとしか、今は言えません」

 直の調べ上げた内容を伝え、そう告げた。

「イチャモンは許さない、そう言ったわよね」

 正確には、「侮辱するのは許さない」だったが。

「これをして、記録会でいい成績を出して、無事に推薦をもらって、証明してみせるわ。いいわね」

「ええ」

 2人は燃えていた。そして、僕と直は叩き出されるようにして部室から追い出された。

「はああ。何もなけりゃ、それでいいんだけどねえ」

 直と溜め息をついて、記録会を待つしかなかった。


 今夜は、ナスとトマトの重ね焼き、酢の物、さつま芋の梅煮、ひじきご飯、豆腐とあげとネギの味噌汁。重ね焼きは、耐熱皿に、ナスのスライス、ミンチ、トマトのスライスを何回か重ねて、解けるチーズをかけて焼いたものだ。ジュワッとした旨味とチーズのとろけたのがいい。さつま芋は、輪切りのさつま芋と梅干を炊いて軽く梅干を潰すのだが、さっぱりとした味がする。

 兄は重ね焼きでノンアルコールビールを飲んで、唸った。

「美味いなあ。

 まあ、警告はしたんだし、それ以上はやりようがないからな。仕方がないな。何も起こらなければいいし、何か起こったとしても、それは本人が選んだ結果だ。

 歯痒いだろうが、こういうケースはあるからな」

 御崎 司。頭脳明晰でスポーツも得意、クールなハンサムで、弟から見てもカッコいい、ひと回り年上の頼れる自慢の兄である。両親が事故死してからは親代わりとして僕を育ててくれ、感謝してもしきれない。この秋からは警備部企画課に異動になった。

「まあ、そうだよなあ。無理やり取り上げて調査とか、できないもんなあ」

「それより体育祭、怜は何に出るんだ?」

「男子全員参加の棒倒しと、障害物と、二人三脚。後は余興のクラブ対抗リレー。部員が6人以上だと強制参加なんだよ。余興なんだから、やりたいとこだけやればいいのに」

「後でいい思い出になるだろ。まあ、がんばれ」

「面倒臭いなあ」


 選手と同じくらいドキドキしながら、記録会を待つ事になった。

 リストバンドの話は陸上部部長と次の借り手、心霊研究部員だけしか知らない話だが、部長と次の借り手がやけに張り切っているのだけが、少し目立った。しかし、話が広まって変なプレッシャーになっても悪いし、元部長が呪うとかいう噂ができてしまうのも困るので、好都合だ。

 当日は、心霊研究部も総出で、会場に行く。

「あんな色でしたっけ?」

 リストバンドを見て、留夏が言う。

「前はもう少し薄いピンクだったような……」

 ユキが同意した。

 やはり、皆もそう思うらしい。陸上部員はそう感じないのだろうか。それとも、いつも見ているから気付かないのだろうか。

 運命のスタートが、切られた。

 森田は順調にスタートし、ゴール前でスパートをかけるという走り方で800メートルを走り切り、見事、トップを飾った。

 部長がドヤ顔を見せて来るが、わかっているのだろうか。問題はこの先だという事を。

「何か腹が立ちません、あの部長」

「腹立つわよ。何、あのドヤ顔。この後が問題なんでしょうが」

 梨那とエリカが怒っている。

「あいつ、心霊現象によっぽどしたいのね。何でもなかったら、全校生徒のまえで土下座してもらおうかしら、なんて言いやがるのよ」

「なんですってえ!?本当ですか、部長!」

「何かあったら、あっちがやってくれるんでしょうね!」

「お、落ち着いて、3人共」

 ユキが、ヒートアップするエリカ、梨那、留夏をなだめるそばで、

「女って、怖ェ……」

「女を侮るなよ、楓太郎」

と、震えあがる楓太郎と、心なしか顔色の悪い宗がいた。

「聞いてないぞ、それ」

「ケガも困るけど、土下座も嫌だねえ」

 僕と直も、呆然としてしまった。

「何て面倒臭い事になってるんだ……」

 頭を抱えたくなる。

 そして閉会し、外へと流れ始めた人達に交じって陸上部と合流するべく歩いていると、慌てたようなざわめきが起こっていた。

「何だろうねえ?」

 覗きに行くと、中心にいるのは我が校の陸上部員だった。

「どうしよう」

「とにかく病院へ」

「推薦は?私の推薦はどうなるの?ねえ!」

「森田……」

 青い顔で、部長と森田が座り込んでいた。

「どうかしたんですか」

「あ……」

 バツが悪そうな顔で、部長が唇をかむ。

「急に、階段でつんのめって……先生が車を取りに行ってるけど、たぶん、アキレス腱が……」

「あ、怜先輩、直先輩。リストバンドが」

 楓太郎がハッとしたように指さす先には、ピンクとはもう呼べない、赤い色のリストバンドがあった。



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