表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
体質が変わったので 改め 御崎兄弟のおもひで献立  作者: JUN


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

130/1046

ほたる(2)委員長とツンデレ

 都会の空は明るくて、星空がよく見えない。2時か3時にようやくといった感じだ。それはわかっていたが、明るいなりに月が見えるだろうと、宗は早くから、カメラを準備しているのだ。

 宗は背後を振り返り、話しかけた。

「遅いから、帰った方がいいんじゃないか。女の子だし」

 絡まれていた女の子が、宗の後ろでしゃがみ込んでいた。

 やたらと肩や胸元が出て、スカートが短い。化粧をしていたが、「しています」と言わんばかりの派手なメイクで、慣れた感じではなく、夏休みデビューを窺わせた。

「いいじゃん。

 それより、写真撮りに来たの」

「ああ」

「何の」

「朝焼け」

「まだ夜中だよ」

「月も撮りたいからな」

「ふうん。いつもここに来るの?」

「いや、今日はたまたまここで、明日は、神社に行こうかと思っている。あそこのご神木と、明日の八日月を撮りたい」

 2人並んで、空を見上げる。

「あんた、心霊研究部の水無瀬宗でしょ」

「知ってるのか。そっちは?何か見覚えはあるような気がするけど」

「……斎藤留夏(るか)。2組」

「ふうん」

「幽霊なんて怖くないの」

「ああ。先輩について色々と体験して、怖いのもたくさんいたけど、悲しい霊も、かわいそうな霊もいた。多分、人と同じだろう。

 斎藤は怖いのか」

「こっ、怖くなんてないからね。全然っ」

「そうか」

 こみ上げる笑いを、宗は必死で隠した。

「み、水無瀬こそ、いいの。一晩中外にいて」

「男だしな。それに、写真を撮りに行く事も、どこに行くかも、一応言ってあるし」

「ふうん。ちゃんとした家なんだね」

 留夏は宗の隣へと移動して、膝を抱えた。


 俯きながら、ボソボソと話す。

「中学の時から親がケンカばっかりしてて、卒業前に離婚したんだよ。でも、どっちについて行くかって訊かれても、私、そんなの選べないし、受験もあるし、それまでのゴタゴタでこっちも限界だったし、つい、お父さんに酷い事言っちゃった。それが最後の会話になって。

 お母さんとも、お母さんの再婚相手とも、義理の妹ともギクシャクしてるのはわかってるんだけど、なんか、どうしたらいいのかわからなくて。

 義理の妹って知らないかな。同じ学年だよ。斎藤梨那(りな)梨那」

「義理の姉妹で、同じ学校、同じ学年か」

「そう。やり難いんだわあ……」

「ああ……」

 仲がいいならともかく、そうでないなら、ちょっとやり難そうだ。

「歩み寄ってみるとか」

「無理」

「何で」

「全然違う。会わないんだよねえ、趣味とかさあ」 

「そこはお互いにだな」

「えええ……」

 留夏が嫌そうに顔を歪めた時、背後から、足音と声がした。

「見つけた!」

 振り返ると、女の子がいた。

「ゲッ、梨那」

 そう言えば、こっちにも見覚えがある。

「あれ?心霊研究部の水無瀬宗君だよね。うわあ。

 あ。帰ろう、留夏」

「放っておいてよ」

「お母さんもお父さんも心配してるよ」

「いいから放っておいてってば!3人で家族してればいいじゃない!」

「おい、斎と――」

「何言ってんの、留夏のバカ!」

「はあ!?」

 2人は口喧嘩を始め、宗はつくづく、女の口げんかを男が仲裁なんてできないと思い知った。

 早口でポンポンと応酬し、宗がポカンとしているうちに、

「知らない!」

と留夏が身を翻して階段を駆け下りて行き、それを梨那が

「待ちなさいよ!」

と追いかけて行った。

 宗はそれを見送ってから、

「嵐みたいだったな」

と呟いて、またファインダーを覗き込んだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
青春だなぁ。やっぱりいいですね。2巻、まだかな~。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ