だるまさんがころんだ(3)生命線、破損
祖父母の家から自宅に戻り、まず、楓太郎は宗に電話してみた。
「あ、宗。久しぶり。元気?」
「?ああ。久しぶりの静岡はどうだった。ゆっくりできたのか」
水無瀬宗、同じ心霊研究部の1年生だ。写真を撮ると高確率で心霊写真になるという体質で、霊除けの札を使う事で、普通の写真を撮れるようになった。ガタイが良くて、頼もしい、心優しい同級生である。
「うん。でも、何か、足音が付いて来て……」
「は?」
楓太郎は宗に、だるまさんがころんだをしてからの異変を語る事になった。
「それ、先輩に相談した方がいいぞ」
「でも、今、進路相談の三者面談だよね。悪いよ」
「楓太郎、お前なあ」
「大丈夫だよ。多分、足音が何かに反響しただけだし。宗も変な事言ってごめん。
じゃあ、また。新学期、お土産持って行くね。おやすみ」
楓太郎は電話を切って、はあ、と我知らず溜め息をついた。
別に大した用は無い。でも、足音の確認の為に、楓太郎は夜、コンビニへ向かった。
ひた、ひた、ひた。
静岡から、付いて来てしまったらしい。
「どうしよう」
ひた。
もう、怖くて歩きたくない。足音は更に大きく、衣服の衣擦れの音まで聞こえそうなほどに近い。
すた、すた……すたすたすた。
ひた、ひた……ひたひたひた。
「ひええええっ」
もう、パニック寸前だ。
歩いてはならないとばかりに、その場に止まって泣きそうになっている。つま先でちょこちょこと進んでみたりもしてみた。
しかし、足音の主は付いて来るし、楓太郎が「何してるの、この子」という目で見られただけだった。
「相談するべきだったなあ。今からでも」
スマホを取り出してかけようとしたが、突然、画面がひび割れて、電源が落ちた。
「うそおおおお!!」
楓太郎は、完全にパニックになった。




