チビッ子編 / 文化祭は大冒険(4)勇者降臨
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い申し上げますとともに、皆さまのご多幸をお祈り申し上げます。
怜は兄の顔を見て驚いた。
「にいたんが死にかけてる!」
「え?怜?」
「そのお化けがやったの!?」
「いや、あのな、怜」
司は、くっついて来ていた女性客を、近付いて来たクラスメイトの方へ押しやった。
それで彼女は至近距離でゾンビと顔を合わせ、絶叫した。
「何何、どうしたの」
たくさんの魔物、アンデッドに扮した生徒がわらわらと集まって来る。そうなると今度は怜がパニックだ。
「う、うわあああん!」
プラスチックの剣を振り回し、泣きながら司の前に立って、
「だめ!にいたんをいじめないで!」
と訴える。
司は怜を覗き込んだ。
「落ち着け」
「にいたん、死にそう。歯も、にゅうって」
司は牙をとった。そして、手でクラスメイトに「散れ」と合図する。
「ほら、もう大丈夫だろ」
「にいたん、大丈夫?」
「ああ」
怜も司もほっとしたが、隠れてそのまま見ていたクラスメイトもほっとした。
見ていた客が言う。
「あの剣、勇者?アンデッド達が引いて行ったぞ」
「あ……にいたん。おしっこしちゃった」
「……おむつ交換しような」
司が怜を抱き上げた時、別の誰かが言った。
「いや。聖水だから聖女だろ。いや、男の子?女の子?」
司は、追い付いて来た両親を見ながら、
(やっぱりひと騒動あったな)
と思った。
この後、新聞部の文化祭の記事には「チビッ子勇者現る!」という記事が載ったのだった。
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