チビッ子編 / 文化祭は大冒険(1)学校へ行こう
康介が文化祭のチラシを置いて行った。
「文化祭か。懐かしいな。
怜、初めて行った文化祭、覚えてるか?」
兄が笑って言う。
「中学の?」
僕が言うと、兄はニヤッと笑った。
「いいや。もっと前だよ」
それで僕も、思い出した。
「学校?僕も行くの?」
普段は行けないはずだが、なぜか今日は、兄の通う学校へ行ってもいいらしい。そう聞いて、怜は取り敢えず喜んだ。
「行くか?」
「行く!行く!」
今日は司の通う学校の文化祭なのだ。司のクラスはゲームに出て来る迷宮で、魔物に扮した生徒が脅かしたり追いかけたりする事になっており、司は吸血鬼の役だ。
スーツにマント、変装グッズの牙が、クールな司によく似合うと、女子に評判がかなりいい。初日の昨日は在校生のみだったが、既にファンクラブができ、評判が流れ、今日はかなり女子が殺到すると予測されている。
「にいたん!おべんきょ?」
「今日は、お祭り」
「お祭り!」
怜の頭には、かき氷や綿菓子、フランクフルト、金魚すくいなどが浮かんでいた。
「兄ちゃんのクラスは、1年1組だぞ。言えるか、怜?」
「1!」
「怜、お名前はって訊かれたら何て言うんだ?」
「御崎 怜です!3歳です!」
「兄ちゃんは何年何組だった?」
「3!」
父と母は笑って、
「目を離さないように気を付けるから」
「そうそう。司はしっかり楽しみなさい」
と言う。
そして司は、
「うん」
と言いつつ、
(それでも何か、起こるんだよなぁ)
と心配になった。
が、仕方がない。
「じゃあ、後でな」
と手を振り、
「うん!行ってらっしゃい!にいたん、またね!」
と満面の笑みで手を振る怜に見送られて家を出た。
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