表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

ネトゲキャラクター達の本音 ~居酒屋での語らい その1~

コメディーと言うより、自分たちがプレイしていない間はこんな風に生活していたらとっても面白いな~という、完全に自己満足のための作品な気がします・・・w

まぁ暇だし読んでやるか~ぐらいの気持ちで読んでくれたら幸いです。

ここはネットゲームの中の世界。そんなありふれたネットゲームの世界の中に、プレイヤーどころか、開発、運営も知らない部屋での、ネットゲームキャラクターたちの日常。


「やっと解放されたーーーー」


「夏休みだからずっとゲームしてるな。宿題とか大丈夫なのか」


 そんなやり取りを赤毛ツインテールの美羽みはね、少し釣り目のイケメンな昭義あきよしがしていた。

 彼女たちが帰ってきて話していたのは通称「オフ部屋」と呼ばれるところ。このオフ部屋はサーバー内で作られたアバター達のみが知っている、人間たちには秘密の場所。

 部屋と言ってもサーバー内のアバター全員がいるため、とても広大なスペース。フードショップもあれば、カジノ施設や温泉、演習部屋まで、生活するうえで必要なものはすべて揃っている、至れり尽くせりの空間。

 オフ部屋と名前が付いてる通り、オフラインのアバターのみがいる。


「おっ、美羽に昭義じゃねぇか!おかえりぃ!全く、学生プレイヤーを持つアバターは大変だなぁ!w」


 ジョッキ片手に豪快な声で2人に話しかけてきたのは、巨漢マッチョのクージ・ドラスト。

 クージのプレイヤーが社会人のため、基本平日は21~23時程度しかおらず、休日も早くて18時頃にインして23時には落ちるので、ほとんどの時間をオフ部屋で過ごしている。


「あいっかわらずあんたは暑苦しいわね!プロフの性格みたいにもうちょっと寡黙になれないの!」


「無理だ無理!俺は製作されてからこれまで寡黙だったことなんざ1回もないさ!ガハハハッ!」


 暑苦しい出迎えに美羽は苛立ちをクージにぶつけ、クージはそれを気にせず笑い飛ばす。そのいつも通りの光景を後ろから苦笑いで昭義が見守る。

 ちなみに、各キャラクターにはプロフィールがあり、身長や体重、性格、趣味など事細かに書くことができる。プレイヤーによっては1行だったり、とても長い設定があったりする。

 クージは寡黙で職人肌という短い設定。

 美羽はプレイヤーである高校男児の好みが凝縮されており、ここでは語り切れないほど長い設定がある。簡単に言えば、優しくて強い、そしてブラコンなお姉ちゃんという設定。

 昭義は見た目こそ釣り目で怖いが、本当はとても優しく、クールは設定。

 設定に近い性格は昭義1人であり、他2人は全く違う。


「はぁ、あんたと喋ってても余計疲れるだけだわ・・・あたしも飲むか・・・」


「そうじゃそうじゃ、飲め飲め!これから違う飲み屋に行くから一緒に行くぞい!」


「昭義はどうする?あたしはどうせ自室戻っても寝るだけだから行くけど」


「俺も行くよ。今日は昼間からずっとだったからね。俺も飲んで憂さを晴らそう」


 昼の13時から夜中の1時まで、途中夕飯などで休憩はあったものの、ログインしたまま放置されていたので棒立ちでずっと待機しており、実に12時間ずっと働きっぱなしだった2人はともに疲労困憊。断る理由はなかった。


「それじゃ行くか!」


 クージを先頭に3人は酒場へと向かった。




「全く!なんでこのあたしが遺跡跡地・最奥のボスに1人で突っ込まなきゃいけないのよ!あそこは8人マルチボスでしょうがぁ!」


 美羽は今日のクエストやロビーでの放置、その他諸々のプレイヤーに対する愚痴を、話を聞いて笑っているクージ相手に喋りながらビールをあおり、昭義は日本酒の熱燗を飲みながら出てくる料理に舌鼓を打っていた。


「なんだ、もう美羽できあがってるじゃねぇか。まだ飲み始めて30分もたってないだろう」


「おう、烈火れっかも来たか!美羽のやつは既に7杯目を飲んだところだ!相当疲れてたんだろうな、ガハハハッ!」


「烈火も聞いてよ!12時間、12時間も働かされたの!その内1時間は放置だし、挙句の果てにはマルチボスソロよ、ソロ!全く何考えて・・・」


「はいはい、分かった分かった。でもそのおかげで今豪遊できてんだから、まぁ許してやれや」


「あんたは多キャラ勢だからそんなことが言えるのよ!そのうえサブアバターでしょ!?私はメ・イ・ンなの!」


 多キャラ勢、1アカウントで多数のアバターを製作することができ、多数のアバターを使用して遊んでいるプレイヤーの事であり、烈火のプレイヤーは合計5人のアバターを製作している。

 しかし、プレイヤーが操作できるのは1人だけなので、例えプレイヤーがログインしていても、5体の内4人はオフ部屋で待機している。

 そして気に入ってる子、いわゆるメインアバターを多く使うため、サブアバターは暇なことが多い。


「こりゃダメだ、完全にできあがってる。クージの旦那、この後もまだ飲むのかい?飲むなら他のメンバーも呼ぼうと思うんだが」


「美羽は飲み明かすようだし、珍しく昭義もおるんだ、いるやつ全員呼べ呼べ!今日はとことん飲むぞ!」


 「はいよ」と短い返事をした烈火は、小さなデバイスをポケットから出した。

 グローバルデバイス、通称GDと呼ばれるもので、メールや電話、MAP、全てこれ1台でまかなえる優れもの。

 烈火はデバイスから空中に投影された映像を20秒ほどいじるとデバイスを仕舞い、近くにいた店員にドリンクを頼み、クージの向かいに座った。


「昭義もいるって本当に珍しいっすね。いつもは戻ってきてもふらっと何処かに行って、1人で飲むなりなんなりしてんのに」


「まぁ今も隣の席にいるとはいえ、1人で黙々と飲み食いしてるがのぉ」


 昭義は烈火が入ってきても、目線だけをこちらに向け「やぁ」と短く挨拶をして料理を食べていた。


「いつも通りっちゃいつも通りか。いるやつは呼びましたんで、そうすれば誰かと話すでしょ。今はまずこのアホをどうにかしないと」


 そう言いながら烈火は美羽を指さした。

 すると呂律が回ってこなくなった美羽が「人にゆひさすたあ、いいどきょーだぁ、あああ!?」などと言い烈火に絡むが、「はいはい、悪かった悪かった」などと適当にあしらっていた。

 5分ほどすると、美羽はいよいよ何を言ってるか分からなくなり、そのまま横になって寝息を立て始めた。


「全く、酒弱いくせに飲むスピードだけは速いんだよな。毎回飲み潰れたお前を運ぶ俺たちの身にもなってほしいもんだ」


 トーンの低い機械音声と共にバーゼン、雪姫ゆき、ござるの3人がやってきた。

 バーゼンは全身黒のロボット、雪姫は身長160cm弱の銀髪ロングの精霊、ござるは侍風の人種ひとしゅ


「冷やしたら起きるんじゃない。酔いも醒めるだろうから一石二鳥じゃない」


 そう言って右手に冷気を纏わせた雪姫をバーゼン

とござるが「まてまてまて、早まるな!」などと言いながら止めるのを、クージは笑いながら、烈火と昭義は溜息をつきながら見ていた。


「やっぱり雪姫はご機嫌斜めだったか」


 烈火の発言に昭義は首を傾げたが、烈火の出したログイン一覧を見せられ、納得をした。


「なんで私じゃなくてマスターは椿姫つばきでログインしてるのよ・・・。今日はローテーション的に私のはずなのに・・・!」


 雪姫のプレイヤーは4人のアバターを作っており、季節ごとの精霊姫と言う設定で春から順に椿姫つばき鬼灯姫ほおずき秋姫あき雪姫ゆきとなっており、毎日違うキャラでインしている。

 このプレイヤーは非常にアバターへの愛情が強く、新しい服装やアクセサリーが出るたびに各アバターが合う物を買い、武器やスキルも最上級の物を全員持っているほど。

 そのためアバター4人全員がプレイヤーの事を好きであり、雪姫に至ってはべた惚れなので、プレイヤーの事に関して雪姫が気に食わない事があるとものすごく不機嫌になる。


「そう気を悪くするな。プレイヤーもたまには気分によって変えるって、な?」


 バーゼンが宥めようと近寄ると


「黙ってろこのオンボロがぁ!」


 雪姫は腕に氷を纏わせ、バーゼンの顔面を横から殴って地面に叩きつけた。

 バーゼンは痙攣しながら気を失い、それをござるが「学習しないでござるな」と言いながらバーゼンの肩を持ち上げようとしていた。


「HPが減らないとはいえ、痛さはそのまま反映されるからな。雪姫のマジパンチ食らえば卒倒するわな」


「いつもは顔面鷲掴みされて、若干顔が凍るぐらいで済むのに。相当機嫌が悪いな」


 烈火と昭義がまるで酒のつまみと言わんばかりに眺めながら酒を飲んでいた。

 バーゼンのプレイヤーは多忙でゲームをしている暇がなく、レベルはかなり低い。

 そのため、例え戦闘フィールド外と言えど、ステータス等は反映されているため、ランカーレベルの装備をしている雪姫に全力で殴られれば瀕死どころの話ではない。

 天と地ほどの差があるにも関わらず、バーゼンは毎回雪姫を止めようとし、瀕死になっている。


「バーゼンはチームで一番弱いのに、平和主義者だからすぐ仲裁に入るからのぉ!」


「そのせいで、あちこちでボコられてるけどね!」


 先ほどのバーゼンが地面にたたきつけられた音で起きたのか、美羽は大爆笑しながら酒を飲んでいた。


「ところで鬼灯姫と秋姫はどうした?」


「なんで私がわざわざ呼ばなきゃいけないのよ。私は憂さ晴らしに来ただけ」


「同じ部屋だろ・・・今から呼ぶか、はぁ」


 溜息をつきながら烈火がGDを取り出して、2人を誘った。

 雪姫は席に座るなり、店一番の激辛ラーメンとカクテルを、ござるはバーゼンを席の端っこに移動させ、焼酎を頼んだ。


「しめで食べるラーメンをいきなり頼むとは。しかも激辛でござるか」


「何よ、文句あるの?」


「滅相もないでござる」


 そういいながら、ござるは両手を挙げながら首を横に振った。雪姫は「ふんっ」と言ってメニュー表に目線を戻し、ござるは何が楽しいのかも分からず大爆笑しながら雑談している美羽とクージを笑いながら見ていた。

読んでいただきありがとうございました。

一応他の作品も投稿してるため、次回は少し(もしかしたらかなり)先だと思います。居酒屋での語らい編は3つにわける予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ