美少女忍者2度目の脱出
先生方が席に着くと、やがて始まったのは長い話と議論だった。
ジョセイキンがどうの、タイグウがどうの……。
あたしにはさっぱりワケが分からなかったけど、それは別に問題じゃなかった。
そりゃ、あたしあんまり頭良くないんじゃないかな、とは思ったけど。
気にしない!
吉祥蓮の中学生忍者にはかなりどうでもいいことだ。
当面の危機は、倉庫から出られないこと。
でも、それはどうにでもなることだった。
そもそも、予定通り排気ダクトの格子をこじ開けて逆ルートを通ることには、もう意味がなかった。
集会が終わったら、大扉の鍵を開けて出ればいいのだ。
問題は、こんなくだらない悪ふざけをしたのが誰かということだ。
考えるまでもなく、一人しかいない。
あたしは、扉の外に聞こえないように低く唸った。
「白堂獣志郎……!」
入学式と宣誓式の日、都合よく非常ベルが鳴ったのも、たぶん、あいつの仕業だと見当がついた。
根拠はなかったけど。
やがて、長い長い集会が終わった。
あたしは数百と思しき無人のパイプ椅子の間を、大扉に向かって通り抜けた。
押さえきれない怒りが、口を突いて絶え間なくほとばしるのに任せながら。
「感謝なんかしないからね、あんな奴あんな奴あんな奴……」
そんなことがあって、あたしはまだ玉三郎(自称・獣志郎)にお礼を言ってない。
危機を救ってもらったことになるんだろうけど。
だって、証拠がない。
残さないのが忍者だし。
あったとしても、お礼を言う気はない。
その必要も感じてない。




