表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/150

美少女忍者の決断

 あたしは腕時計を見た。

 12時を過ぎている。

 おなかすいた。

 腹を押さえてみても、それは治まらない。

 ……食い物の恨みは高くつくからね、お兄ちゃん。

 どこからか、ガヤガヤという声が聞こえてくる。

 いくら空腹といっても、幻聴が聞こえるほどじゃない。

 腹が鳴る音に邪魔されないように、耳を澄ましてみる。

 天井からだった。

 ひょいと上を見ると、そこには排気ダクトがある。

 察するに、講堂での説明が終わり、生徒と母さんたち保護者が席を立ったのだ。

 でも、母さんはあたしが戻らなくても、それほど心配はしないだろう。

 そこは吉祥蓮の忍者同士、阿吽の呼吸だ。

 でも、何が起こっているかはたぶん、分かっていない。

「こういうときのためにスマホ持たせてよ……」

 ぼやいてみたけど、それはたぶん通らない。

 スマホはおろかガラケーですら、あたしもお兄ちゃんも使わせてもらえない。

 自分のことは自分で片づけろ、が母さんのモットーなのだ。

 そんなわけで、あたしは自力でここを脱出しなければならなかった。


 まず、大声を上げるのはNG。

 排気ダクトの反響で講堂まで届くかどうか。

 だいいち、倉庫の表扉の外に聞こえてしまう。 

 そもそも、人知れず行動するのが忍者だ。

 だから、方法は一つしかない。 

 幸い、天井ダクトの穴は、あたしが十分通れる大きさがある。

 今、保護者と生徒は出て行った。

 ということは、宣誓式が始まるまで講堂は空になる。

 それまでにこのダクトを通って講堂に潜み、入ってきたお兄ちゃんに生徒手帳を渡せばいい。

 問題は、服装だ。

 中等部のセーラー服じゃ目立ちすぎる。

 入学早々、妹に生徒手帳の面倒を見てもらっていてはお兄ちゃんのメンツが立たない。

 そこを支えてやるのも、吉祥蓮の忍者。

 ……あ~、くだらない。

 でも、宿命を呪っても始まらない。

 今までもちょくちょくそんなことはあったけど、そこで蘇るのは死んだ父さんの言葉だった。

 ……「弱い奴を助けてまだ余る力が、本当の力だ」

 ふっ、と笑ってこめかみを掻く。

 したくないことに腹を括ったとき、こうでもしないとやってられない。

「世話が焼けるんだから、お兄ちゃん……」

 幸い、誰も入ってこない。

 あたしは、暗がりの中で服を脱ぎ捨てた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ