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少年忍者のトリック

 忍者が2人して歩くと早い。

 あたしたちが学園本棟裏の非常階段を上がるまでには5分とかからなかった。

 そのてっぺんには、ペンキの剥がれかかった鉄製の扉がある。

 ドアの取っ手にある鍵穴に、鍼を突っ込んで開けられないこともない。

 だけど、万が一の場合、誰かに見とがめられる恐れがある。

 さて、どっちを取るか。

 あたしはこめかみを二度三度掻いて、踏ん切りをつけた。

 鍼を隠したセーラー服の懐に手を突っ込む。

 すると獣志郎は、自分の制服の隠し懐から、複雑に曲がった針金を取り出した。

「どうぞ」

「何これ」

 あたしは眉をひそめた。

 一見すると、ゴミっぽい。

 子どものいたずらみたい。

 だけど、返ってきた答えは大げさだった。

「鳩摩羅衆秘法『地獄極楽通行自由自在鍵』だ!」

「長っ! 名前だっさ」

 あたしが吐き捨てても、こいつは気にも留めない。

 自慢げな説明が滔々と始まった。

「まず、必要なものは講堂裏の倉庫にある」

「生徒手帳?」

 あたしは嫌味を込めて聞き直した。

 相変わらず、中2病の言うことは回りくどい。

「扉は講堂から入るものの他に、外から入るものがもう一つある」

「誰かが入ってきたら?」

 見つかったら、逃げ場がない。

「今は使われてない」

 それなら大丈夫か。

 じゃあ、現実問題として。

「そこまではどうやって?」

「この非常階段との間には、ほとんど開かずの間と化した小部屋がいくつもある」

「開かずの間って……」

 言ってることムチャクチャ。

 それじゃあ通れないでしょう。

 あ、だからナンタラ鍵か。

「全部通り抜ければいいんだけど、使った扉は……」

 いちいち聞くまでもない。

 子供じゃないんだから。

「全部閉めるわよ。万が一ってこともあるから」

 そんなこと、忍者の常識。

 もし、誰かが気づいたら一巻の終わりじゃない。

 滅多にないことは、かえって言い訳が利かない。

 だから、目立たずに行動するのは忍術の基本だ。

 そこで、「地獄極楽通行自由自在鍵」をつきつけた獣志郎が強調したことがあった。

「この鍵で開けた扉は、自動的に鍵がかかるんだ」

 ふうん、と鼻先で返事をする。

 あたしはもう、こいつの顔なんか見てなかった。

 それに気づいていないのか、鳩摩羅衆の忍者が力を込めて説いて聞かせる。

「倉庫の裏扉は、内側からも鍵をかけるようになってる。これをなくしたり壊したりすると……」

 はいはい。

 あたしも吉祥蓮の忍者です。

 最後まで聞くまでもなかった。

 鍵穴に「地獄極楽通行自由自在鍵」を差し込む。

 軽く動かすと、鍵の回る音がした。

「ちょっと待て」

 話を中断して、獣志郎が止めた。

 無視。

 あたしは扉の中に滑り込んだ。

 内側から閉じた扉に自動的に鍵がかかって、ドアノブにある縦のツマミが横に倒れた。

「へえ、便利」

 外から、獣志郎の囁く声がする。

「おい、開けろ」

 しつこい。

 あたしも囁き返した。

「閉めとかないと怪しまれるでしょ」

 そう言い残して、あたしは人の気配がない、埃のかかった廊下を歩き出した。

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