少年忍者との最初の対決
「鳩摩羅衆だって!」
母さんから聞いたことがあった。
女だけの吉祥蓮に対して、男だけの忍者組織があるって。
歴史の陰に潜み、数限りない裏工作で私腹を肥やしてきた集団。
彼らは、もの心つくころから体術や破壊工作を仕込まれるという……。
あたしの驚きように、「獣志郎」は不敵に笑った。
「ここで勝負するか?」
そんな場合じゃない。
「バカの相手は一人でたくさん」
あたしはそれだけ言って、校門を目前に180度ターンした。
逆走!
そいつは一瞬遅れて、再び隣を走る。
再び反転。
振り切って、全力ダッシュ。
フェイントかけられて、鳩摩羅衆の少年忍者は振り向くこともできない。
……ざまあ!
だけど、ハイトーンの声が鋭く叫んだ。
「まだ温いな、吉祥蓮!」
風を切る音がした。
あたしは一回転して腕を振る。
次の瞬間、投げたのとよく似たものが飛んできた。
鍼だ。
忍者が持つ飛び道具は、万が一、見つかっても怪しまれてはいけない。
昔なら苦無。
職人の道具だから、持っていてもおかしくない。
今は、結構難しい。
だからあたしたちは、鍼を使う。
隠しやすいし、万が一の時は捨てやすい。
見つかっても、知らない人には針金にしか見えない。
獣志郎が投げたのも、これだった。
あたしは、こいつの鍼を瞬時に投げ返す。
こいつの手には、先に投げたあたしの鍼があるはずだった。
ややこしいけど、それは獣志郎も同じことだ。
時間差で返ってくる自分の鍼を受け止めた瞬間、必ず思考の隙ができる。
そこでダッシュをかければ、振りきれるはずだった。
鍼は惜しいけど、所詮、消耗品だ。
吉祥蓮のネットワークで仕入れるしかない。
……誰のためだと思ってんの、いい加減にしろバカ兄貴!
……いい加減にしろ鳩摩羅衆!
……いい加減にしろ獣志郎!
だけど、校門に着いたとき、あたしの鍼は手の中に戻っていた。
獣志郎が投げ返したのを、背中を向ける瞬間に受け止めたのだ。
だが、風のささやきが、あたしの足を止める。
……その忘れ物なら、学園内でどうにかなるぜ。




