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まがって・ゆっくり・おもく

 瑞希を床で押しつぶさないよう、とっさに顔面から床に転がったまではよかった。

 13歳の妹は僕の背中にすがりついたまま、のしかかる形になった。

 2枚のシャツ越しに温かい感触を覚えながら、僕は安堵と疲れに任せて畳に横たわっていた。

 瑞希が身体を起こしたらしく、小さな尻が僕の腰を圧迫する。

 意外に重い……。

 やがて、妹は傍らに正座して身体をつつきはじめる。

 小さな指の感触がくすぐったい。

 しばらくの間、そんな心地よいけだるさに浸っていたところで、手を突然掴まれた。

 有無を言わさず立たされたかと思うと、身体を左右に揺すぶられてつんのめった。

 瑞希はゆっくり、しかし力いっぱい、左右に足を踏み込んでいる。

 僕も、牛馬の代りに巨大な臼につながれた奴隷が粉を引かされているといった歩き方になった。

 カーブを描いてゆっくり歩く姿は、全身をよじってもがき苦しんでいるようにも見えただろう。

 そこで瑞希がつぶやいたのは、たぶんこんな言葉だ。

きょくじゅう……『れい』!」

 もう疲れ切って、自分で歩く気力もない。

 瑞希に手を引かれるまま、ふらふらと足を左右へ運ぶしかなかった。

「もうだめ」

 へたり込んでも、解放してはもらえない。

 背中に身体をぴったりつけた瑞希が、細い腕を両脇から回して羽交い絞めにする。

 渾身の力で抱き起こしているのは、押し上げる薄い胸がぴったり張り付いている感触で分かる。

 やっぱり、色気ないよなあ……13歳じゃ当たり前だけど。

 これがもし葛城先輩だったら。

 もっとこう、柔らかくて、重量感のある……そんな想像をしたとき、身体に異変が起こった。

 つい、身体を海老のように曲げてしまう。

 まずい……。

 瑞希に気づかれるわけにはいかない。

 だが、師匠面で手を引いているであろう妹は、僕の妄想を許さなかった。

「ちょっと!」

「違う! そんなんじゃなくて」

 慌ててごまかしたのが、かえって仇になった。

「そんなんって何よ」

 瑞希が振り向いたところで、僕は腰を反対側にひねった。

 この状態を正面から見せるわけにはいかない。

 掴まれた手を必死で引っ張り返すと、急に身体が前にのめった。

「ちょっと、お兄ちゃん?」

 引き戻される手をふりほどこうとして、右へ、左へと身体を振る。

 瑞希の手のひらに力が込められるのが分かった。

「すごい……」

 え?

 それって……お前まさか?

 13歳の女子中学生がそんなこと言っちゃダメだろ……!

 立ち止まって見下ろしてみると、妹に見せてはならないものは既に治まっていた。

 再び、背中に薄い胸が押し付けられる。

「すごい力! それ、それよ!」

 瑞希がはしゃぐ声に、そういう意味かと安心する。

 ぽん、と背中を小さな手が叩いた。

「あとひとつ。頑張ろ!」

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