放送から始まる非日常
ここは夢南坂大学附属高校。
僕たちのクラスである2年3組では、昼休みになり、弁当を食べる人、売店へ走っていく人、他のクラスへ行く人など、皆好きなように動いている。
僕もその中のひとりだ。
他のクラスだが、仲の良い4人の友達と一緒に1組の教室で弁当を食べている。
「悪い、遅れた。」
「翼!遅いです!ボクのお弁当が悪の組織に狙われているっていうのに!とられたらどうしてくれるんですか!」
そう言ったのは、2組の生徒である戦隊物のアニメが好きな桃。
「だから、悪いって言ってんじゃん」
「許しませんよ!!」
僕が少しふてくされたようにいうと桃はより声を大きくして言った。
「桃、許しななよ。実際にとられた訳じゃないんだから。」
「そーそー。」
僕たちの言い合いに入ってきたのは1組の生徒の桜と歩だった。
「…桜がそういうなら許してあげます。」
桜が、の"が"を強く、笑顔で言った。
「え?桜が、ってなに?が、って?」
歩は眉をハの字にして言っている。
「あ、もう皆来てたんだ。」
突然、新しい声が聞こえた。
「樹、パン手に入った?」
売店に行っていたと思われる4組の樹が手ぶらで帰ってきた。
「それがさー、3年生が早めに授業終わってたらしくて、なかったんだよね…。」
困ったなー、という言葉は反対に笑いながら言った。
「じゃあ、ボクのお弁当食べますか?」
桃が二段弁当を樹の座った席の前に置いた。
「いいの!?」
桃の一言で樹はとても明るい笑顔になった。
「もちろんです!」
桃は別に持ってきていたおにぎりを鞄から出しながら答えた。
「え?さっき、とられたらどうするんですか、とか言ってなかった?」
今の会話を聞いていた歩が弁当を開けて答えた。
そんな、いつもと変わらない日常。
5人で昼食を食べる。
これはこれで良いけれど、僕は少しつまらない気がする。
この日常の中に何か、ちょっとした事件があれば、もっと面白くなると思う。
そんな事を考えていたとき、
『えー…、夢南坂大学附属高校、第2学年の皆さん!!』
僕の心を読んだように、突然放送が始まった。
『おめでとうございます!!ゲームに招待されました!!至急、体育館に集まってください!』
1組で昼食をとっていた人達は、意味が分からずざわざわしていた。
ここにいる人全員が今の放送の意味を理解できていないだろう。
そんな中、一番に立ち上がったのは先生だった。
「まったく…放送は遊びで使うものじゃないってのに…」
深いため息を吐きながら、放送室へいくためにドアを開けた。
──はずだった。
本当に一瞬の出来事だった。
閉まっていたドアは先生ではなく“誰か”が反対の廊下から開けた。
と思うと先生は後ろに倒れていた。
赤い水溜まりを広げながら。
「……は?」