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こちら、駒桜高校将棋部Outsiders  作者: 稲葉孝太郎
第8局 熱血!春の団体戦(1日目・2015年5月10日日曜)
95/682

83手目 昼食休憩

挿絵(By みてみん)


 い、いきなり負けましたわ……これは緊急会議です。

 わたくしたちは、公民館から少し離れた喫茶店に集合致しました。

「エリーちゃん、大丈夫? 初戦負けちゃったけど?」

「K, kein Problem……残り4連勝すればよろしいのですわ」

 ライバルの市立(いちりつ)も負けていますし、なんとかなりそうです。

「そっか、残り勝てばいいんだもんね。次のオーダーは、どうするの?」

 部長のFrauカネコにも考えていただきたいのですが……。

「1回戦と同じというのは、いかがですかしら?」

 わたくしの提案に、Frauカスガカワが挙手なさいました。

駒北(こまきた)には、五見(いつみ)くんがいます。念入りに考えたほうが、よいかと」

「あの眼鏡は私が、けちょんけちょんにしてやりますよ」

笑魅(えみ)さん、そういう問題ではありません。2回戦はオーダー次第で、最初から3勝拾うことができます。反対に、ぎりぎり3敗する可能性も考えられます」

 3敗するパターンは、あまり多くないのですけれど、あるのですよね。

「FrauタカサキかFrauヨコミゾが、Herrツヤマに負けるパターンですわね」

 わたくしのコメントに、Frauカスガカワは軽くうなずきました。

「その通りです。それだけは避けたほうがいいように思います」

「私が眼鏡に勝ったら、それで3勝ですよ、3勝。分かります、これ?」

「笑魅はべつに五見と相性よくないだろ」

 とFrauタカサキ。

「1回戦の戦犯が、なに言ってるんですかねぇ」

「戦犯って言うなッ! おまえの当たりが楽だっただけだろッ!」

 責任のなすり付け合いは、よろしくありませんことよ。

「Frauタカサキ、Frauハヤシヤ、それくらいに致しましょう」

 わたくしはコーヒーをひとくち。

 ここの喫茶店は、Frauヒメノ御用達だけあって、美味しいですわね。

「ともかく、用心に越したことはありません。私の案を言います」

 Frauカスガカワは、ゆっくりと選手の名前を口にしました。

 Frauカネコが、さらさらと紙に書き取ります。

 

 林家 春日川 ポーン 鞘谷 杉本

 

「ん? オレが抜けるのか?」

 とFrauタカサキ。あんまり眉間に皺をよせてはいけませんわ。

「1回戦負けてますからねぇ」

「笑魅は黙ってろ」

伊織(いおり)さん、1回戦の結果とは関係ありません。このオーダーは、駒北の津山(つやま)先輩を狙い打ちするオーダーです。津山先輩が来るのは、2番席か3番席。駒北もそのどちらかで悩むと思いますが、これならどちらでも勝ち確です」

 す、すごいですわね。勝ち確とか、わたくしはとても言えませんわよ。

「エリーちゃん、どう思う?」

 とFrauカネコ。

「わたくしは、これで構いませんわ」

「ここの上級生は、主体性がなさ過ぎですね」

「Frau Hayashiya!! Halt's Maul!!」

「あ、ドイツ語で逃げるのはインチキですよ」

 ドイツ人がドイツ語をしゃべって、なにが悪いのですかしら。

「先輩方がこれでよろしいようなら、これでいきましょう」

琴音(ことね)が言うならしゃーないけどよぉ、汚名挽回のチャンスもくれないのか」

 それを言うなら、名誉挽回です。外国人のわたくしでも分かりますのに。

「次こそは勝ちますわよ。Toi, Toi, Toi!!」


  ○

   。

    .


挿絵(By みてみん)


 香子(きょうこ)ちゃん、1回戦は白星スタート。

 3年生だからって、格下には負けないのよ。

 ファミレスのご飯が美味しい……と言いたいところなんだけど……。

「えー、というわけで……いきなり負けてしまいました……」

 飛瀬(とびせ)さんは、簡潔に状況を整理した。

「すみません、私のところがガチだったもので」

 赤井(あかい)さんは、申し訳なさそうに頬に手を添えた。

「まあ、だれが悪いとかじゃないんで……2回戦のオーダーを考えます……」

 飛瀬さんは、ポケットから手帳を取り出した。

「カンナちゃん、手帳を使うようになったの? スマホじゃないの?」

 来島(くるしま)さんは、なんだか眠たそうに尋ねた。

「最近になって、地球のローテクも、なかなかいいと思えるようになりました……」

 さいですか。

 それにしても、飛瀬さん、なんだか明るくなった気がするわね。

 なにかあった?

 私が疑問に思うなか、飛瀬さんはページをめくっていく。

「あった……天堂(てんどう)のオーダー……」


挿絵(By みてみん)


 みんな一斉に覗き込む。狭い。

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………

 なにか言いなさいよ。

「なんか変なオーダーだね」

 と来島さん。

裏見(うらみ)先輩……これってどうなんですか……?」

 私に振るなぁ。

「端で勝つ作戦なんじゃない?」

 私は適当に答えた。

 オーダーのことは、八千代(やちよ)先輩に丸投げしてたし、よく分からないのよね。

 マニュアル化して、置いて行ってもらえばよかったかも。反省。

「端で勝つ作戦……たしかに、端だけで5連勝しそう……」

「端だけでって言うか、端だけじゃないですか? 他に勝てるところあります?」

 福留(ふくどめ)さんは、あいかわらずの強気な発言。

「ブラックボックスなのは、この塚本ってひとかな……だれか知ってる……?」

 飛瀬さんは、1年生陣営に尋ねた。全員首を横に振った。

「だれも知らないのか……ってことは、強くはなさそうだね……」

葛城(かつらぎ)くんに負けてるくらいだから、強くないと思うよ?」

 と来島さん。え、なにその発言は。

 葛城くんって、弱くはないと思うんだけど。

 私は不穏なものを感じた。

「いずれにせよ、この形ならオーダーは確定でしょう」

 と馬下(こまさげ)さん。中学で主将をやっていたから、現状実質的な参謀役になっていた。

「確定してるの……?」

「両端を避けつつ、塚本という男子に対応できるのは……」


 福留 裏見 飛瀬 馬下 来島

 

「これしかありません」

 馬下さんは、その場にあった紙ナプキンに、さらっとメモした。

「なるほど……これなら、塚本くんが3と4のどちらに来ても勝てる、と……」

「勝てるかどうかは分かりませんが、勝率は間違いなくこれが一番高いです」

 ポカだけが危ぶまれるわね。1番席と5番席は、負けが確定してるから。

油谷(あぶらたに)先輩たちも、3年間将棋をやっています。慎重に行きましょう」

 そうそう、油断大敵。馬下さんの言う通り。

「了解……それじゃ、これで登録しとくね……」


  ○

   。

    .


「師匠」

「……」

「師匠」

「……」

「師匠、心臓動いてます?」

 ん、不破(ふわ)さんが呼んでるね。

「師匠、ダメですよ。将棋大会の最中に、女のこと考えてちゃ」

「か、考えてないよ」

「またまた……ところで、オーダーは、どうするんですか?」

 僕はパンの袋を片付けて、ゴミ箱に放った。鳩が空に舞い上がる。

「僕の予想だと、市立は福留さん、裏見先輩、飛瀬さん、馬下さん、来島さんだよ」

「え? 言い切っちゃうんですか?」

「端は捨てて、中央で3つ取るのが確実でしょ?」

 僕の説明に、不破さんもこくりとうなずいた。

「そうですね。じゃあ、あたしは、あの変なピカチュウフード女ですか」

「用心してね。来島さんも、強くなってると思うから」

「任せてください。で、中央の並びは?」

 3番手の押井(おしい)くんを、一番薄そうなところに当てよう。

「1回戦と同じで、そのまま。押井vs飛瀬戦を作るよ」

 恋愛と勝負は、またべつだからね。ごめんね、飛瀬さん。

「分かりました。そう伝えておきます」


  ○

   。

    .


「いやぁ、勝ったあとは飯が美味いッ!」

 虎向(こなた)くんは、箸を持ったままガッツポーズ。ほっぺたに、ご飯粒がついてるよ。

「お昼の牛丼屋でテーブル席が取れるなんて、ついてますね」

 と兎丸(うさまる)くん。

 ちょうど入れ替わりだったんだよね。ラッキーだったかな。

 横一列のカウンターだと、どうしてもオーダー会議をやりにくいから。

「で、オーダーは、どうします?」

森屋(もりや)先輩を外して、古久根(こくね)くんを入れるよ」

 僕の意見に対して、兎丸くんもうんとうなずいてくれた。

「それがいいと思います」

「虎向くんは、獅子戸(ししど)くんに当たると思うから、頑張ってね」

 僕の発破に、虎向くんは、もう一度ガッツポーズ。

「任せてくださいッ! ぼこぼこにしてやりますッ!」

 獅子戸くんと虎向くんのどっちが強いのかは、僕には分からない。

 本人に任せるしかないね。

「ところで、佐伯(さえき)先輩は連盟の役員ですよね? 午後の準備とかないんですか?」

 兎丸くんは、やや怪訝そうに尋ねた。

「あるけど、オーダー会議の関係で、免除してもらったよ」

「そうですか。じゃあ、箕辺(みのべ)会長と……葉山(はやま)さんだけで切り盛りしてるんですか?」

「そうなるね」

 ちょっと、申し訳ないかな。それに……。

「なんだか箕辺くん、元気がないように見えるんだよね」

 ゴールデンウィークの将棋大会では、もっと元気だったよ。

 どうしちゃったんだろう。なにかあったのかな?

「箕辺会長が、ですか? ……5月病なんじゃないですか?」

 と兎丸くん。

「ゴガツビョウって、なに?」

「5月になると、急にやる気がなくなる病気ですよッ!」

 へぇ、そうなんだ。虎向くんには関係なさそうな病気だね。

「それって、ウイルスかなにかでなるの?」

「いえ……ただのメンタルの問題だと思います」

 と兎丸くん。メンタルってことは、風邪薬じゃ治らないんだね。残念。

「あれですよ、恋の病ってやつかもしれないですよ」

 虎向くんは、口のまわりを拭きながら、そう言った。

「え? 恋の病? ……箕辺くんが?」

「おかしいですか? 箕辺会長って、結構モテると思いますよ?」

 虎向くんがそう言うなら、そうなのかな。

「恋の病ってことは……だれか気になる子がいるのかな?」

「逆な気がしますね。箕辺会長って、好きな子ができたら、前向きに告白しちゃいそうなタイプだと思います。失恋したんじゃないですか?」

 と兎丸くん。人物観察が得意なのかな?

「それはおかしいぞ、兎丸。失恋しても、箕辺会長は、くよくよしないだろ」

 虎向くんの説にも一理ある。

 それを聞いた兎丸くんは、ぽんと手を叩いた。

「ってことは、彼女と喧嘩してるんじゃないですか?」

「彼女と喧嘩? ……もうだれかと付き合ってるってこと?」

「高校2年生ですよ。べつにおかしくないと思いますが」

 そんな気配、あったかな?

 それに、彼女がいたら、アタリーへ友だちと行ったりしないよね。

「勘違いじゃない? 箕辺くんって、休日はほとんど将棋部のメンバーと一緒だよ?」

「ってことは、将棋部の女ですよッ!」

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………

 え? そんなのありえるのかな?

「それはないよ」

「間違いないですッ! 名探偵虎向の推理を信じてくださいッ!」

「じゃあ、具体的にだれなの?」

 虎向くんは、箸を止めた。

「飛瀬先輩……なわけないか。葉山先輩……もないな」

 どっちも箕辺くんのタイプではなさそうだ。

「同世代とは限らないんじゃない?」

 と兎丸くん。

「年上はないと思うんだよなあ……年下……あ、そうだッ!」

 虎丸くんは、テーブルをドンと叩いた。ダメだよ。お店の備品は大事にしないと。

「喧嘩してるなら、会場で機嫌が悪そうな女子ですよッ! これで決まりッ!」

「機嫌が悪い女子? そんなの……あッ」

 僕の指から、箸がこぼれ落ちた。

「佐伯主将、どうかしましたか?」

 虎向くんはそう言いながら、新しい箸を取ってくれた。

「……なんでもないよ」

 いたね、ひとり。でも、まさかね。


  ○

   。

    .


挿絵(By みてみん)


「獅子戸くぅん、次で新巻(あらまき)くんに当てるから、絶対勝ってねぇ」

 勝たないと、ボクは、おこだよぉ。

「チーム戦を個人の問題に還元するのは、よくないと思います」

「言い訳は認めないよぉ。勝たなかったら、校庭の木に吊るすからねぇ」

「な、なんでそんなに機嫌が悪いんですか?」

「べつに機嫌悪くないよぉ」

「絶対悪いですよ。ゴールデンウィークに、なにかあったでしょ?」

 獅子戸くんの詮索が、ボクをますます怒らせる。

「いいから次は勝ってねぇ」

 ボクはパスタを巻きながら、清心(せいしん)のオーダー表を確認した。

「葛城主将、どうしたんだろうな?」

 獅子戸くんは、となりの曲田(まがた)くんと、ひそひそ話を始めた。

「男の娘歴17年、ついに生理が来たんじゃない?」

 曲田くん、夜道には気をつけたほうがいいよぉ。

 それにしても、清心も厄介なオーダーだねぇ。とりあえず……。

 

 曲田vs田中 獅子戸vs新巻 蔵持vs森屋 葛城vs佐伯 辻vs古谷

 

 1回戦と同じなら、これ。

 勝敗は……○?○??かなぁ。ってことは、これにはしてこないねぇ。

 ボクは、相手の出方を考えた。

「……こうだねぇ」


 曲田vs田中 獅子戸vs新巻 蔵持vs佐伯 葛城vs古谷 辻vs古久根

 

 これだと、○?●?○かぁ……ちょっとボクのところは分が悪いかなぁ。

「どっちにしても、獅子戸くんが勝たないと始まらないねぇ」

「俺だけ名指ししないでくださいよ」

 どんどん名指ししていくからねぇ。

「ゴホゴホ……すみません、いいですか?」

 辻先輩が、鼻声で話しかけてきた。マスクをしている。

「なんですかぁ?」

「本格的に調子が悪いんですけど、次、欠席できませんかね?」

「次は、ちょっとぉ……」

「ゴホゴホ……そうですか」

「ごめんなさぁい」

「いえ、体調管理できてないのが悪いので」

 んー、辻先輩の風邪が、計算外なんだよねぇ。

 大丈夫かなぁ?


  ○

   。

    .


挿絵(By みてみん)


 どんなもんっスか。

「いきなり勝てて、(すみ)ちゃん大満足」

 こういうときは、お昼ご飯もおいしいっス。

 今日は奮発して、ファミレスにしちゃったっスよ。

「1回戦のオーダーがハマりましたね。あれ以外に勝ちはなかったですよ」

 五見くんは、食後のコーヒーを飲みながら、そう語ったっス。

「この調子で、2回戦も行くっス!」

「2回戦は藤女(ふじじょ)ですか。あっちのオーダーは、どうなってるんですか?」

 それは、非レギュラーの小島(こじま)くんに偵察させてあるっス。

「こんな感じらしいっス」


挿絵(By みてみん)


「なるほど、フルオーダーが林家(はやしや)高崎(たかさき)春日川(かすがかわ)、ポーン、鞘谷(さやたに)ですか」

 五見くんは眼鏡をくい〜ッ。

「みたいっスね。2回戦も、これで来ると思うっス」

「そうとも言い切れないのでは? うちが1回戦と同じ場合は……」

 五見くんはシャープペンを取り出して、メモ帳になにかを書き加えたっス。

 

 五見vs林家 池田vs高崎 津山vs春日川 菅vsポーン 大場vs鞘谷


「こうなりますよね?」

「そうっスね」

 2番席から4番席までが、ほぼ必敗っスか。

「これはダメっス。チーム負けが濃厚っス」

「ですよね。だから、こっちはこうずらすと仮定します」


 五見vs林家 津山vs高崎 大林vs春日川 菅vsポーン 大場vs鞘谷

 

 これは……これも、勝ちはなかなか薄いっス。

 角ちゃんと五見くんと津山先輩が、頑張って勝たないといけないっス。

「端をずらせたらいいんっスけどねぇ」

「それは、オーダー会議のときに説明した通りです。今回は、大場(おおば)先輩と僕が、端に固定で5連勝する作戦ですからね。わざと端をずらせないようにすることで、むしろ相手のほうから避けてもらう趣向です。ただ、大将林家さんが予定外でした」

 予定は未定っス。アクシデントは付き物っスよ。

「まあ、林家さんは、僕がなんとかします。大場先輩は、鞘谷先輩を倒してください」

「任せるっス」

 鞘谷先輩相手なら、そんなに負ける気はしないっス。

「じゃあ、これでいいっスね」

「とならないのが、オーダーの難しいところなんですよ」

 五見くんは、また眼鏡をくい〜ッ。

「もったいぶらずに話すっス」

「僕たちが藤女のオーダーを知っているように、藤女も僕たちのオーダーを知っているんですよ。だから、このオーダーで来るというのは、当然に読まれます」

「読まれたら、どうなるんっスか?」

「例えば、こうずらして来るかもしれませんよね」


 五見vs林家 津山vs春日川 大林vs横溝 菅vsポーン 大場vs鞘谷

 

 バスケ部を外すんっスか? これだと……あッ。

「マズいっスね。2番席〜4番席が、また必敗っス」

「そうなります」

「だったら、こうずらせばいいんじゃないっスか?」

 角ちゃんは、赤ペンで書き書き。


 五見vs林家 池田vs春日川 津山vs横溝 菅vsポーン 大場vs鞘谷

 

 これなら、3番席がいい勝負で、また五分にもどるっス。

 角ちゃん、かしこい。

「藤女がこの対策を読んで、こうずらすとします」


 五見vs林家 池田vs高崎 津山vs春日川 菅vsポーン 大場vs鞘谷

 

 ……あれ? 最初にもどっちゃったっス。

「オーダーがぐるぐるしてるっスよ」

「そうなんです。ここでは、うちと藤女の読み合いが発生してるんですよ」

 うーん、そういうの、角ちゃん苦手なんっスよね。

 とりあえず、全部並べてみるっス。


 【A案】?●●●?

 五見vs林家 池田vs高崎 津山vs春日川 菅vsポーン 大場vs鞘谷

 【B案】??●●?

 五見vs林家 津山vs高崎 大林vs春日川 菅vsポーン 大場vs鞘谷

 【C案】?●●●?

 五見vs林家 津山vs春日川 大林vs横溝 菅vsポーン 大場vs鞘谷

 【D案】?●?●?

 五見vs林家 池田vs春日川 津山vs横溝 菅vsポーン 大場vs鞘谷

 

 最善で3ガチ2敗スタートっスか。冴えないっスねぇ。

「津山先輩2番席でも池田(いけだ)くん2番席でも、勝てる確率は一緒なんですよね」

 五見くんは、津山先輩に向き直ったっス。

「津山先輩は、春日川さんと横溝先輩、どっちとやりたいですか?」

 ここだけ抜き取ったら、ヤバい質問っスね。文脈重要。

「うーん、春日川さんには、ちょっと勝てないかなあ」

「横溝先輩は?」

「それなら、かなりいい勝負だと思うよ」

 津山先輩の回答を受けて、五見くんはじっくり考え込んだっス。

「……そっか、これもあるのか」


 【E案】?●●●○

 五見vs林家 池田vs春日川 津山vsポーン 菅vs鞘谷 大場vs杉本

 【F案】?●●●○

 五見vs林家 津山vs春日川 大林vsポーン 菅vs鞘谷 大場vs杉本

 

 あ、角ちゃんから逃げるんっスか。

「これも、津山先輩はキツいっス。2番席に置いて、お祈りするしかないっス」

「たしかに、そう言いたくなるんですが……」

 なにを悩んでるんっスか?

 これはもう、2番席にバスケ部が来ると願うしかないっス。

 五見くんは両手をこめかみにあてて、しばらく瞑想したっス。

「……分かりました。こうしましょう。まず、1番席が僕で……」

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