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こちら、駒桜高校将棋部Outsiders  作者: 稲葉孝太郎
第57局 ぐぅぐぅ第2回将棋大運動会 (2015年9月18日金曜)
681/682

669手目 みんなでわいわい、将棋でデカスロン2

 空中からドローンが降りてきて、松平まつだいら佐伯さえきくんに光を当てた。

 一瞬にして、ボクサーパンツとグローブのかっこうになった。

 リングもせり上がってくる。

 ロボットレフェリーが登場。

《上ガッテクダサイ》

 ふたりともリングに上がった。

 双方から応援が飛ぶ。

「おーい、マジシャン、一発で決めろ」

「Gib Ihr Bestes!」


 カーン


 佐伯くんがいきなり前に出た。

 腹部を狙って、猛烈なラッシュ。

 松平は押され気味になった。

 だーッ、これって去年と同じ流れじゃないですか。

「松平、ガードガード」

 と応援はしてみたものの、防戦一方は判定負けになる可能性があった。

 松平もそれはわかっているから、反撃に出て──これが悪手になった。


 ボコ


 顔面にクリーンヒット。

 そのまま倒れた。

《5、4、3、2、1》


 カンカンカーン


 あっさりKO負け。

 佐伯くんはリングから飛び降りて、ストックの指し手を指した。

「2六歩、2五歩、2四歩、2三歩不成、2二歩成」


挿絵(By みてみん)


 松平は、リングと一緒に地面に消えた。

 私が困惑する横で、ポーンさんは、

「F, Frauウラミの番では?」

 と訊いた。

 そ、そうだったッ! 慌ててデスクへ駆け寄る。

 ってッ! これでどうしろっていうのよッ!

 と、普通ならパニックになるところ。

 だけど、ここまで数分かかってたから、少しは対策する時間ができた。

「ビーチフラッグス」

 まずは得意競技を宣言。

 砂場が地面にあらわれて、私と佐伯くんは、スポーツウェアにチェンジ。

《位置ニツイテ》

 私は砂のうえへ腹ばいになった。

 佐伯くんも、気後れしていない。

 全力でやらないと、勝てないかも。


 ピーッ


 ホイッスルの音。

 私は起き上がって、猛ダッシュした。

 砂を蹴り、フラグに向かって飛び込む。

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………よしッ! にぎった感触ッ!

 佐伯くんはボクシング疲れなのか、数十センチ差で勝てた。

《勝者、裏見うらみ香子きょうこサン。取ル駒ヲ宣言シテクダサイ》

 私はフラグを持ったまま、膝立ちになって、

「角をもらって、ストラックアウト!」

 と連続宣言した。

 パネルが登場。

 ボールを持つ。

 松平がやるはずの競技だったけど、しょうがない。

 よーく狙って……えいッ!


 ガコン


 あああああッ! 枠にぶつかった……けど、パネルは剥がれた。


挿絵(By みてみん)


 び、微妙……っとッ! 10秒以内に指さなきゃ。


 ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ!


 2二銀。

 この手しかない……はず。

 佐伯くんも戻ってきて、同飛成。

 駒割りは、後手の飛車損。

 ただし、先手は飛車得じゃないという、妙な局面に。

 なんだかんだ敗勢。

 とりあえず、私が出ている限り、ビーチフラッグスは、してこない……かも?


 ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ!


「フラフープ!」

 空からフラフープが降ってきた。

 私はそれを手にして──熟考。

 回す必要はない。競技開始までの30秒猶予を使う。

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………これだ。

「ボウリング」

 ボウリング場があらわれた。

 ここで30秒もらえるから、ボールを選別しつつ、考える。

 もう何手か必要──起死回生なら、このルートしかなさそう。

 少なくとも、今は他を思いつかない。


 10 9 8


 私はボールを投げた。


 ガラガラガラン


 ぐッ……1本残った……歩を4回か。

「8四歩、8五歩、8六歩、8七歩成」


挿絵(By みてみん)


 この手に、佐伯くんも考えた。

 こっちに狙いがあることは、薄々感づいたはず。

「……」


 ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ!


「8二歩」

 私は角を取──らずに、ポーンさんに声をかけた。

「ポーンさんッ! 交代ッ! ダンスからのダーツ! ダーツは8八ッ!」

「He?」

「交代ッ!」

 急いで急いで。

 ポーンさんは、戸惑いつつも交代した。

「だ、ダンスですわ」

 急に音楽が流れ始めた。

 ノリノリなロボットが登場。

《サア、ソレデハイッテミヨウ。Let's dance!》

 音楽が鳴り始めた。

 ポップスのような、軽やかな曲調。

 ポーンさんは、

「それでは参りますわよ。Eins、zwei、drei♪」

 とリズムを取って踊り始めた──って、社交ダンスじゃないですかッ!

 踊れるって、そのことだったんかーいッ!

 一方、佐伯くんはそれっぽいフリで踊っている。

 ま、マズい、万能じゃないですか。

 音楽は1分続いて、そこでフェードアウトした。

《採点デース》


 ポーン 90

 佐伯  85


 勝ったぁ!

 佐伯くんは、

「しまった……音合わせだけでよかったのか……」

 と、自分のミスに気づいた。

 フリは関係なかったみたいですね、はい。

 ポーンさんは意気揚々と、

「ダーツですわッ!」

 と宣言した。

 ダーツのパネルがあらわれた。

 ストラックアウトよりも近距離。ただし、的が少し小さい。

 完全に賭けの状況。がんばって。

「……Los!」


 トスン


挿絵(By みてみん)


 よーしよしよしッ!

「さらに9九玉ですッ!」


挿絵(By みてみん)


 よしッ! 一気に逆転したッ! ……かも。

 佐伯くん、やや表情がこわばる。


 ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ!


「フラフープ」

 あっちも時間稼ぎに出た。

 なんというか……緊張する。

 いろいろあるかもしれない。

 この王様ワープからの駒損回復だって、さっきまでまったく念頭になかったし。

「……シック・ボー」

 ん? ダイス投げ?

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………あッ! 手番がもどると、今のが無効になるのかッ!

 ポーンさんが2連続好投できるとは、限らない。

 デスクのそばに、サイコロ3つの入ったガラス容器があらわれた。

《賭ケヲドウゾ》

「大」


 カラカラカラ


 ……4ッ! 佐伯くん、不発。

 でも、まったく冷静だった。

「ビーチフラッグス」

 ふたりともユニフォームに着替えて、這いつくばる。


 ピーッ


 ポーンさんも頑張って走ったけど、さすがにダメ。

 角を取り返された。

「2八龍」


挿絵(By みてみん)


 ……詰めろ。

 さすがに気づくと思うけど、回避方法がよくわからない。


 ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ!


「は、8八歩ですわッ!」

「7八金」


挿絵(By みてみん)


 あ……厳しいかも。


 ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ!


「8九歩成ッ!」

「8八角」

 寄せにきた。

 9八玉、9九銀、同と、同角、同玉。

 いかーん、寄る。

 佐伯くんは8七金と取った。

「し、シック・ボーですわ」

 ポーンさんは待ったをかけようとした。

《賭ケヲドウゾ》

「大」


 カラカラカラ


 11ッ! 盤面がもどった。


挿絵(By みてみん)


 ……けど、どうしようもないっていう。


 ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ!


 けっきょく9九玉。

 佐伯くんの8七金で、もとにもどった。


 ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ!


「負けました」

「ありがとうございました」

 ポーンさんはこちらへ戻ってくるやいなや、

「Entschuldingung、うまくいきませんでした」

 と謝った。

 ううん、これはしかたがない。

 松平ももどってきて、

「すまん、なにもできなかった」

 と頭をかいた。

 いや、これはなんというか……相談タイムのときの、私のミスな気がする。

 変則ルールのことを、ちゃんと考えてなかった。

 順番と担当だけ決めて、あとはアドリブでいいと思っていた。

 とりあえず、終わってしまったものは、しょうがない。

 葉山はやまさんからのアナウンス。

《全チーム終了しました。敗退したチームは、観戦席へ回ってください》


挿絵(By みてみん)


 嘆息しつつ、トラックから出る。

 81Boysと鉢合わせになった。

 捨神すてがみくんは、

「アハッ、先輩たちのほうは、どうでしたか?」

 と訊いてきた。

 私たちが敗退したのはわかってるから、敗因を尋ねたっぽい。

 ポーンさんが代表して説明すると、捨神くんは、

「僕たちは並び間違えました」

 と苦笑した。

 どういうことかと、私は尋ねた。

 葛城かつらぎくんが代わりに答えた。

「たっちゃん、ボク、つっくんの順番で予定しててぇ、先頭バッターでたっちゃんが出たんですけどぉ、序盤が終わったところでボクと交代したら、あっちは高崎たかさきさんが出てきてぇ、そこから交代できなくなって負けましたぁ」

 ???

 よくわからなかったので、詳しく訊いてみたら、こういうことらしい。

 序盤、箕辺みのべくんがストラックアウトで金抜き、ビーチフラッグスで林家はやしやさんに勝って、持ち駒の銀奪取、優勢なまま葛城くんにバトンタッチしたところで、高崎さんといきなり交代された。ストラックアウトで角を抜かれ、ビーチフラッグスで銀を取り返され、ついでにボウリングで飛車まで取られて、さすがに捨神くんと交代しようとしたら、重大なことに気づいた──捨神くんがボクシングで負けたら、指す人がいなくなって、負けになってしまうのだ。

「というわけでぇ、そこから交代できなくなってぇ、ボクのボウリングもガーターだったりビリヤードで一個も落ちなかったりでぇ、負けちゃいましたぁ」

 うーむ……この競技、複雑だとは思ってたけど、想像以上だった模様。

 やれやれという雰囲気の中、葉山さんから次のアナウンスがあった。

《それでは、準決勝をおこないますッ! そのまえにCM!》

【勝敗】

●剣ちゃんず vs マジシャンズ○

マジシャンズの未プレイ競技 ⑤⑥⑧⑨

○スーパー歩夢くん vs 千駄ヶ谷棋面組●

スーパー歩夢くんの未プレイ競技 ④⑤⑧⑨

●81Boys vs レッツゴー3人娘がゆく○

レッツゴー3人娘がゆくの未プレイ競技 ④⑤⑥⑧⑨⑩

○桜川48 vs チーム駒北●

桜川48の未プレイ競技 ①②③④⑤⑤⑥⑦⑧⑨⑩


【暫定順位】

1位 81Boys        320ポイント →

2位 レッツゴー3人娘がゆく   304ポイント ↑1

3位 桜川48          292ポイント ↑4

4位 マジシャンズチェックメイト 255ポイント ↑2

5位 千駄ヶ谷棋面組       246ポイント ↓3

6位 剣ちゃんず         224ポイント ↓2

7位 スーパー歩夢くん      215ポイント ↑1

8位 チーム駒北         207ポイント ↓3

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