表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちら、駒桜高校将棋部Outsiders  作者: 稲葉孝太郎
第54局 再来!秋の個人戦(1日目・2015年9月6日日曜)
638/682

626手目 女子の部2回戦 大場〔駒北〕vs林家〔藤花〕(1)

※ここからは、大場おおばさん視点です。

 秋の個人戦、出だしは好調っスねぇ。

 ダンスダンス。

 すみちゃんが踊っているところへ、五見いつみくんが登場。

 メガネくい~。

「大場先輩、どうしました?」

「2回戦進出で、よろこびの舞を舞ってるっス」

「シードですよね」

「シードでも2回戦なんっスよ。わかるっスか?」

「次の林家はやしやさんは強敵ですから、がんばってください」

 それはこっちの台詞っス。

 五見くんは、曲田まがたくんが相手っスからね。

 というわけで、華麗な勝利を掴み取るっス~。

 着席。

 笑魅えみちゃんは、

「大場先輩、おひさでがす~」

 と言って、王様をパシリ。

 角ちゃんも並べるっス。

「笑魅ちゃん、1回戦どうだったっスか?」

「こういう言い方もなんですが、楽勝でやした」

 ともえちゃんが相手だったっスからね。

 振り駒もするっス。

 ふりふりほい。角ちゃんの先手。

 あとは待つだけっス。

「準備はいいですかぁ?」

 は~い、っス。

「それでは、始めてくださ~い」

「よろしくお願いするっス」

「よろしゅう、ってなもんで」

 7六歩、8四歩、6六歩、3四歩、7八飛。


【先手:大場おおば角代すみよ駒北こまきた) 後手:林家はやしや笑魅えみ藤花ふじはな)】

挿絵(By みてみん)


 角ちゃんの十八番でいくっス。

 新しいことは、しな~いっス。

 8五歩、7七角、1四歩、1六歩、6二銀、4八玉、4二玉、3八銀。

 笑魅ちゃんは穴熊っスかね。

 5二金右、3九玉、3二玉、6八銀、5四歩、5八金左、3三角、6七銀。

 三間の特徴は、四間よりも攻撃的な布陣ができることっス。

 今回も前に行くっスよ。

 2二玉、2八玉、5三銀、7五歩。


挿絵(By みてみん)


 定番の位取りっス。

 あとは、笑魅ちゃんがどう出るかっスね。

 4四歩、5九角、3二銀。

「あれ? 穴熊じゃないんっスか?」

「熊は対策されてる気がしたんでげすよね」

 べつにそんな対策とかしてないっス。

 笑魅ちゃん、角ちゃんのことがまだよくわかってないっスね。

 それとも、角ちゃんの実力にチョ~ビビってるっスか?

 4六歩、4三金、4七金、4二角、3六歩、6四銀。

 笑魅ちゃんも前に出て来たっス。

 7六銀で補強して……5五歩と突かれたっス。


挿絵(By みてみん)


 5筋位取り?

 なんかやりにくいっスね、今回。

 もうちょっと普通に指して欲しいっス。

 6五歩でバックさせて、5筋を取り返しちゃうのもアリっスけど……7四歩と攻めるほうが、ちぐはぐしてないっス。6五歩は、そのあとどうするのか、あいまいっス。

 お堅いのは2六歩か9六歩っスね。

 9八香が4番手くらいっス。

「……端を突くっス」

 9六歩でチェスクロポチポチ。

 笑魅ちゃんは10秒だけ考えて、5三銀。

 なんっスか、研究範囲だったりするっスか?

 角ちゃん、疑心暗鬼になっちゃ~う。

 第一感、7四歩っス。

 ひねるなら9七桂~8五桂っス。

 これは歩得確定……なんっスけど、そのあと桂馬の使い方に悩むっス。

 普通にいくっスかね。

「攻めちゃうっス。7四歩」


挿絵(By みてみん)


 7筋の棒銀でイケると思うっス。

 同歩、6五銀、6四歩、7四銀。

 笑魅ちゃんは5四銀。

 これが工夫っスか? この手も研究くさいんっスよね。

 まあでもよくあるかたちっスか。

 銀の行き場所はなくなったっスが、サポート可能っス。

「桂馬を跳ねるっス」

 9七桂。

 笑魅ちゃんは2四角。


挿絵(By みてみん)


 だんだんわかってきたっス。

 5筋の右と左で、攻撃と防御を分ける気っスね。

 乗るっスよ。

 8五銀、7三歩、7四歩。

 こじ開けるっス。

 7二飛、7三歩成。

 笑魅ちゃん、飛車をバシバシ。

「けっきょく全面戦争か。受けて立ちやすぜ。同飛」


挿絵(By みてみん)


 交換は後手に有利っスか。

 7四銀、7二飛。

 攻めが止まっちゃ~う。

 こうなったらムリヤリにでも押し込むっス。

「8六角っスッ!」

「4五歩ってなもんだ」

 6四角、4六歩──さすがにこれは殴り合えないっス。

 4八金引。

「ここで7三歩と打ちまっす」

 8三銀成は……くっそ遅いっスね。

 6五銀のほうがマシっスか。

「交換するっス」

 6五銀、同銀、同歩、8二飛、8六歩。

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………ああッ!

 や、やっちまったっス。

 もっといい手があったっス。


挿絵(By みてみん)


 (※図は大場さんの脳内イメージです。)

 

 同金に6三銀成と捨てたら、角を成れたっス。

 角ちゃん、ショ~ク!


 パシリ


 5六歩。

 無慈悲に局面は進むっス。

 同歩、5四金。

 今からでも4四歩、間に合わないっスかね?

 同金とできないのは、同じだと思うっス。

 4四歩、6四金、同歩、4七銀で、どうかって話っス。


挿絵(By みてみん)


 (※図は大場さんの脳内イメージです。)


 6三歩成が間に合えばいいんっスが……遅いっスかね。

 角ちゃん考える。

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………

 これ、千日手っぽくできるっスよね。

 4八銀成、同金、4七金、3九金っス。

 なんか角ちゃん悪そうだし、ちょっと誘ってみるっス。

「4四歩っス」

 笑魅ちゃんは、ん、っていう顔で、前のめりになったっス。

 角取るしかないんじゃないッスかね。

「……角、もらいやす」

 同歩、4七銀。

「6三歩成っス」

「……」

 ほら、笑魅ちゃん、けっこう考えてるっス。

 残り時間は、角ちゃんが13分、笑魅ちゃんが15分。

 角ちゃんも考えるから、そのまま時間を使って欲しいっス。

「……」

「……」

 時間が並んで……あ、さすがに動くっス。


 パシリ


挿絵(By みてみん)


 角打ちっスか。

 8六飛じゃなかったっスね。

 たぶん、8二の飛車は受けに使いたいんだと思うっス。

 けど角ちゃんも、飛車を受けに使うしか、ないんっスよね。

「9八飛っス」

 3八銀成、同金上、4七銀、3九銀。

 けっきょく千日手っスか?

 4八銀成、同銀。

「5七金でやす」


挿絵(By みてみん)


 金銀の並びを変えたわけっスか。

 同銀とはできないっス。

 4七歩成が利くようになったから、3九金打も意味ないっス。

 逆に、4七の地点を受ければいいんっスよね。

 3七に金を打つっス。

 4八金、同金、4七銀、3九銀。

 また千日手コースに戻ったっスか?

「5七歩ッ!」


挿絵(By みてみん)


 あちゃ~、千日手にはならないっスね、これ。

 笑魅ちゃんが拒否してくるっス。

「だったら徹底抗戦っス。6八金」

 4八銀成、同銀、8七角成。

 あ、さすがに撤退したっス。

 5七金で、歩を消すっス。

 笑魅ちゃん、ここで長考。

 残り時間は、おたがいに10分切ったっス。

 とりあえず、後手の攻めはストップしたっスね。

 持ち駒の金1枚じゃ、絡めないっス。

 だから、8六飛とムリヤリ走ってくると思うっス。

 

挿絵(By みてみん)


 (※図は大場さんの脳内イメージです。)


 これなら、後手はサイドがガラ空きになるっス。

 5三と、間に合うかもしれないっス。

 角ちゃん、そこを読む読む。

「……」

「……」

 指しそうっス。

 飛車を……あれ? ちがうっス?


 パシリ


挿絵(By みてみん)


 金? ……金っスか?

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………9八馬、同香、4八金の、うっかり狙いっスか?

 それはちょっと、舐めプ過ぎないっスかね?

 笑魅ちゃんも、さすがにそんなの期待しないと思うっス。

 採算があるんっスか?

 5八飛と逃げて、後手は8六飛っスよね。

 そこで5三とくらいで、良くないっスか?

 6九馬なら、無視して4三歩成とできるっス。


挿絵(By みてみん)


 (※図は大場さんの脳内イメージです。)


 これはスピード勝ちっス。

 ただ、笑魅ちゃんがこれを選ぶっスかね。

 これなら千日手にしたほうが、良かったっス。

 あ、でも、あとで気づいた可能性もあるっスねぇ。

 4九金の長考の時点で、千日手はムリになってたっス。

 角ちゃん、迷っちゃ~う。

 とりあえず、5八飛は確定っスから、そこだけ指してみるっス。

 5八飛、と。

 笑魅ちゃん、10秒ほど読み直して──


挿絵(By みてみん)


 あ~、馬引きっスか。

 もう攻めは諦めるってことっスね。

 了解っス。

 千日手のお誘いをした甲斐があったっスねぇ。

 それじゃ、今度は角ちゃんが攻める番っスよ。

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………と金が助からなくないっスか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=390035255&size=88
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ