表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちら、駒桜高校将棋部Outsiders  作者: 稲葉孝太郎
第5局 ジャビスコこども将棋祭り☆午前の部(2015年5月5日火曜)
55/682

43手目 高校生男子の部A2回戦 六連vs三国(1)

※ここからは六連むつむらくん視点です。

挿絵(By みてみん)


 まいったな……81Boysなんてガチなチームがくるとは、思わなかった。


(すばる)くん、初戦は、うまく勝てたね」

 ちょっと小柄な、カワイイ系の少年が話しかけてきた。

 アホ毛が出てる。チャームポイント。

「これも、並木(なみき)くんたちのおかげだよ」

「そんなことないよ。僕はサブ選手だから」

 並木くんは、ほんとに謙虚だ。

 爪のアカを煎じて、何人かに飲ませればいいんじゃないかな。

 西野辺(にしのべ)さん、白鳥(しらとり)くん、不破(ふわ)さんあたりに。

「ところで昴くん、対戦表なんかみて、どうしたの?」

「勝ち星3のチームをチェックしてたんだ。今、3チームしかない」

 スイス式だから、原則的に勝ち星3−0同士が当たるはず。

「そっか……次で、御城(ごじょう)先輩たちと当たるかもしれないね」

 並木くんの言う通り。ウォーリアーズも強敵だけど、できればそっちがいい。

「おーい、六連(むつむら)ぁ、並木(なみき)ぃ」

 白いシャツに黒いズボン。よくある制服を着た、体格のいい少年が加わった。

 角刈りで、左右にちょっと伸びが入ってる、蟹型ヘアスタイル。

 左手に扇子(せんす)を持って、肩を叩いている。

大文字(だいもんじ)先輩、お疲れさまです」

「俺はまだ疲れてないぞ。体力には自信があるからな……で、発表は、まだか?」

「もうすぐだと思うんですが……」

 あ、スタッフが来た。人が集まってくる。


 【第2ラウンド】

  81Boys (改) vs 棋神ウォーリアーズ

  将棋プレアデス星団 vs H市がなんぼのもんじゃ!

  北西ブロック連合 vs ピカピカの1年生

  Shogi International vs おらが将棋村

  剣ちゃんズ vs 思い出王手


「お、ベストな進行じゃないか」

 大文字先輩はそう言いながら、パタパタと扇子であおいだ。

 こうなったか……将棋の神様も、まだ僕らを見放してないらしい。

《それでは、対局準備をお願いします》

 アナウンスと同時に、大文字先輩は扇子をパチリと閉じた。

「よし、ここも3−0でぶっとばす。六連、並木、いくぞ」

 僕らは、対局席にむかう。

 1番席には、大文字先輩と同じように、夏用学生服を着た少年。

 高校生なのにあご髭。このスポーツマンっぽい人、見覚えがある。

 紫水館(しすいかん)三国(みくに)先輩だ。たしか、3年生だったはず。

「お、来たな」

 三国先輩は、右手でヨッと挨拶した。

「よろしくお願いします」

 着席して、駒を並べる。1日5ラウンドは、ほんとにカツカツだ。

 並びは、僕vs三国(みくに)先輩、並木(なみき)くんvs大伴(おおとも)くん、大文字(だいもんじ)先輩vs白鳥(しらとり)くん。

 悪くない。

「六連と指すのは、初めてだな」

 三国先輩は、太い指で王様を置きながら、そうつぶやいた。

「そうですね」

「俺が中3のとき、いたか?」

「3年前ですか……その頃は、将棋を指してませんでした」

「いつから始めた?」

「ちょうどその半年後です。中2の夏に」

 三国先輩はフンと鼻息を鳴らして、飛車をパシリと置いた。

「ほんで、1年後に県大会で優勝か……才能があるな」

「そんなことはないです。テーブルゲーム自体は、昔からやってましたし」

 僕の本職は、トレーディングカードゲーム。

 マジック・ザ・ギャ○リングみたいなやつだ。

 専門にしてるのは、遊戯の王子様という、日本製のもの。

「テーブルゲームと将棋は違うと思うが……まあ、いい」

《準備の整ったところから、振り駒をしてください》

 最後の駒を並べ終えた三国先輩は、歩を5枚集めた。

「俺の振り駒でいいな?」

「どうぞ」

 毛の濃い指で、歩がシャッフルされる。パラリと、盤のうえに放られた。

「オモテが2枚……大伴! 白鳥! 偶数先!」

「将棋プレアデス星団、奇数先」

 三国先輩は、チェスクロを自分の右側になおす。

 あとは、開始の合図を待つだけだ。

《対局準備の整っていないところはありますか?》

 ……。

《では、始めてください》

「よろしくお願いします」

 三国先輩がチェスクロを押して、スタート。

「7六歩」

 僕は、角道を開けた。

皆星(かいせい)のエース、お手並み拝見といくか」

 三国先輩は、3四歩。

 以下、2六歩、8四歩、2五歩、8五歩、7八金、3二金。

 ここまでは、ありきたりな出だしと言っていい。

「2四歩」

 同歩、同飛、8六歩、同歩、同飛。

「2六飛」


挿絵(By みてみん)


 僕は、飛車を縦に引いた。

 三国先輩は、おやっという顔をする。

「横歩取りにしないのか?」

「しません」

 僕が答えると、三国先輩は右手のこぶしをこめかみに当てて、テーブルにひじをついた。ゆっくりと、飛車に指をそえる。

「縦歩取りは、ひさしぶりにみた」

 8五飛。

「レアリティと戦法の強さは、関係ないと思います」

 9六歩。

「カードゲームの応用か?」

 6二銀。

 僕は、すこしばかり指をとめた。

「……むずかしい質問ですね。カードのレアリティと強さは、必ずしも関係ありません。コモンでもアンコモンでも、強いカードは強いですから。ただ、戦法……トレーディングカードゲームなら、デッキかストラテジーの話になると思いますが、そういうものはポピュラーなもののほうが強いですね。あまりにもレアリティが高いと、地雷デッキと呼ばれます。もちろん、そういうデッキで大会を勝ち上がる人もいます。でもそれは、デッキの強さというよりも、プレイングのうまさとメタ読みです」

 7七桂、8六飛、4八玉。

「おまえの話は、横文字が多過ぎる。もっと分かりやすく解説してくれ」

 9四歩。


挿絵(By みてみん)


 端を突いてきた……典型的な相掛かり模様。3八銀。

「三国先輩は、トレーディングカードゲームをプレイしますか?」

「ちょっと待て、駒組みが難しくなった」

 三国先輩は、小考。僕も黙って、続きを読む。

「4一玉……で、なんの質問だった?」

「三国先輩は、トレーディングカードゲームで遊んだことがありますか?」

「ない」

 きっぱりと否定。

「すみません、だとしたら、説明が難しいですね」

 僕の答えに、三国先輩はニヤリとして、髭をなでた。

「ハハッ、将棋でも、ルールを知らんヤツに戦法は教えられんからな」

 それも、そうだ。将棋のルールを知らない人に、棒銀や振り飛車を教えろと言われても、ムリがある。僕がひとつだけ言いたかったのは、単純なこと。トレーディングカードゲームと将棋のあいだには、細かな違いと、細かな類似点がある。それだけ。

 さあ、そろそろ将棋にもどろうか。

「3九玉です」

「4二銀」

 1六歩、3一玉、3六飛。


挿絵(By みてみん)


 僕は、3筋の歩に狙いをさだめた。

「8四飛は、8五歩〜7六歩〜8六飛で、ひねり飛車か」

 見抜かれてる。

 受験生とはいえ、こういうところは衰えてないみたいだ。

「そうはさせんぞ。4四角」

 8七歩、3五歩。突っ張ってきた。

 取り合いはダメなのか? 8六歩、3六歩、8二飛、3七歩成、同桂(放置で8一飛成は3八と、同銀、6九飛、2八玉、7一金みたいな感じでダメだろう)、7一金、8五飛成、3六歩、2五桂、2六角。


挿絵(By みてみん)


 (※図は六連くんの脳内イメージです。)

 

 これが正解かどうか分からないけれど、遅いのは僕のほうだ。

「2六飛」

「まあ、逃げるよな。8四飛」

 4六歩。角にプレッシャーをかける。頭の丸い駒に対する、基本的な戦略だ。

 将棋指しの人はあまり言わないけど、駒と駒とのあいだには、相性があると思っている。例えば、角と桂馬のシナジーは抜群。逆に、角と香車は相性がとても悪い。このふたつの組み合わせで可能な攻めは、少ないんだ。

「3三銀」

 僕もプレッシャーをかけられてる……2八飛。

「ずいぶんと消極的だな。3四銀」

「4七銀」

 4筋の攻防戦に移る。

「囲いの発展性は、俺のほうがある……5二金」

 6八銀、4二金右。三国先輩の言うとおり、僕のほうが発展性は低い。

 玉飛接近形なのも気になる。ひねり飛車に失敗したから、しかたがないか。

「4八玉」


挿絵(By みてみん)


「手損も意に介せず、か」

「手損よりも形です」

 同じところに駒をもどしてなにが悪いのか、僕には分からない。

「いかにも現代将棋らしいな。だが、これを見落としてないか? 7四歩」

 うッ……厳しい手。次に7五歩、同歩、7六歩だ。

「……桂頭のケアが甘かったですね」

「アッハッハ、おまえの将棋も、まだまだ荒っぽいな」

 三国先輩は、豪快に笑った。

 たしかに、僕の将棋は荒っぽいのかもしれない。御城(ごじょう)先輩や魚住(うおずみ)くんなら、しないようなミスをしてしまうから。捨神(すてがみ)先輩はポカ神先輩だから、たまにすごいのが飛び出すけど。

 のこり時間は、5分。立て直す。

「……6六歩」


挿絵(By みてみん)


 三国先輩は、さっきよりも強くおどろいた。

「歩損までするのか?」

「歩とライフは投げ捨てるものです」

 ライフは、0にならなければいい。

 それと同じように、歩は足りればいいんであって、余らせる必要はない。

 みんなにはおかしいと言われるかもしれないけど、それが僕のセオリーだ。

「さすがにそれはないだろ……罠か?」

 罠というか、6六歩、同角、6七銀以外は、桂頭が受からない。

「えーい、分からんときは取る」

 6六同角、6七銀、3三角、3八金。

 そこで、三国先輩の指が止まった。

 あごに手をあてて、椅子にもたれかかる。

「これは、7三桂と跳ねてもいいのか……?」

 僕も、そこはさっきから気になってる。7三桂と跳ねられるようじゃ、こっちは立ち後れもいいところだから。でも、7三桂には5六銀右と上がって、4四歩、4七金、2三歩、6五桂、同桂、同銀が効くと思う。

 

挿絵(By みてみん)


 (※図は六連くんの脳内イメージです。)

 

 次に6六角の覗きから7四銀とかすめて、歩損を解消できる。

「……ダメだな。跳ねると目標になる。2三歩」

 5六銀右、4四歩、4七金。読み筋は噛み合っている。

「右銀の遅れで、攻められんな……1四歩」

 僕は5八玉と寄って、玉飛接近形を解消。一番安定した囲いになった。

 なに囲いって言うのかは、全然分からないけどね。

「4三金直……こっちも完成だ」

 お互いに陣形整備は完了。飽和した。

「飽和なら攻めですね……3六歩」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=390035255&size=88
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ