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こちら、駒桜高校将棋部Outsiders  作者: 稲葉孝太郎
第5局 ジャビスコこども将棋祭り☆午前の部(2015年5月5日火曜)
50/682

38手目 高校生男子の部A1回戦 捨神vs松平(2)

挿絵(By みてみん)


 さてと……ここで後手に、手があるかどうか。

 一回立て直さないといけないはずなんだけど……。

 僕は、いろいろと手を読んだ。後手からの強襲はなさそうだ。

「……2四歩」

 アハッ、松平先輩も、形をととのえにきたね。

 これは2筋の圧迫……だけど、この手が効くよ。

「5六歩」


挿絵(By みてみん)


 戻ってもらうね。

 4四銀に4七歩、同歩成、同金直。位を消した。

 2五歩と伸ばしてきたけど、6六銀と立って、4五銀直〜7七角成を消す。

「4五銀左」

 うん、出てくるよね……このままだと4六歩で、再度取り返されるから……。

「5七銀」

 4筋をがっちりガードするよ。

 さらに、次の6四歩をみて味がいい。

「5三銀」

 まあ、そうはさせてくれないよね。

 ここで6六銀は、結局4六歩とされるから……。


挿絵(By みてみん)


 こう。飛車を浮くよ。

 ちょっと危なっかしいけど、7筋を押さえてあるから大丈夫。

 3四銀、5五歩。反撃だ。

 同歩なら6六銀、5六歩に5五歩。これで中央を制圧できる。

「4五歩」

 取らなかったね。これも視野に入ってるよ。

「5四歩」

 同金と形を崩して、6六銀。

 松平(まつだいら)先輩は目を細めて、歩を天王山(てんのうざん)に置こうとした。

 そして、手を引っ込めた。

「……打てないのか?」

 打てないことはないけど、5五歩なら6四歩、同歩、8五歩、同歩、8三歩。


挿絵(By みてみん)


 (※図は捨神くんの脳内イメージです。)


 同飛は6一角が飛車銀両取りだから、9二飛。そこで8二角とゴリ押しして、同飛、同歩成もありそうだし、あるいは6二銀の辛抱に、6五歩。後者は潰れてるかな。角を殺せないからね。8二角以下がやり過ぎだと思ったら、省略して6五歩もありそう。同歩なら同銀、同金、同桂、6四銀、7三桂成(こっちに成るのがポイント)、同銀、6一飛成。これは5六歩と突く暇がないから、先手優勢。途中の6四銀に代えて他の場所に逃げても、結局は桂捨てからの飛車成りでOKだね。

 気をつけないといけないのは、8三歩に6二飛かな。5二飛はないよね。6三角がある。6二飛、7一角、6一飛、8二角成あるいは8二歩成。うん、これも大丈夫。6筋の枚数が足りてる。これが6六銀の効果。

 さすが松平先輩、この罠には引っかからなかったけど、先手有利になってきたんじゃないかな。時間を使ってるね。僕も続きを読むよ。


「……4四金」


挿絵(By みてみん)


 金寄り……誘いのスキかな? 6筋がガラ空きだね。

 ただ、今度は8五歩〜8三歩〜6一角が成立しないね。銀に紐がついてる。

 つまり、4四金はひねり出した好手ってことか。

 僕は長考に入る。ここと、もう一ヶ所長考して終わりかな。

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………

 手がないね。僕だけにないんじゃなくて、お互いにないかも。

 むしろ、手待ちを考えないといけない。

 9六歩は9四歩で冴えないし……5七飛かな?

 

挿絵(By みてみん)


 (※図は捨神くんの脳内イメージです。)


 揺さぶりつつ、手待ち。

 放置は7一角〜5三角成〜5三飛成で勝ち。

 歩を打ってくるんだろうけど、5四か5五か……5四かな。5五は角筋が止まるから、後手としても打ちにくいと思うよ。5四を本線で読むとして、さらに手待ちが必要。歩を打たせたことに満足して、6七飛……は、あるのかな? 6七飛、4三金引……ああ、このとき5七飛と戻れないんだね。6六角で、銀をボロっと取られちゃう。

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………

「5七飛」

 とりあえず寄るよ。

 ここで松平先輩は、30秒ほど考える。5四歩。

 残り時間は、僕が4分、松平先輩が2分。

 15分にしては、かなりの手数を指したね。序盤をとばし過ぎたかな。

「5九飛」

 いったん引いて……。

「4三金引」

 松平先輩も手待ちだね。

「5六飛」


挿絵(By みてみん)


 ここが好位置。手待ちしながら整備ができた。ポイント。

 9四歩(完全な手待ち)、4八金引。

 さあ、9五歩とさらに手待ちするかどうか。

 僕が待っていると、松平先輩は、となりの席をのぞき込んだ。

 戦況チェックかな?

「……4四銀」

 攻めてきた? それとも、4四銀〜5三銀の繰り返しかな?

 御城(ごじょう)vs丸目(まるめ)戦をみて、松平先輩がどういう方針に決めたのか……ナゾだね。

 心理戦に持ち込んでもしょうがないし、素直に受けよう。

「5七銀」

「5三銀」

 千日手か。これで明確になった。

 でも、僕は千日手は受けないよ。まだ指し直せる時間帯だけど、あんまり指し直ししたくないんだよね。後手番引いちゃうし。魚住(うおずみ)vs(つじ)は、魚住勝ちで読めても、御城vs丸目は比較的五分。僕は負けてもいいようなポジションじゃないから。

「7六飛」


挿絵(By みてみん)


 ちょっと動いてみる。

 4四銀と戻ったら、6四歩、同歩、7四歩、同歩、同飛。飛車先突破。

 松平先輩は両肘をテーブルについて、真剣に読んでいる。

 僕は、4四角の筋を検討。4四角、7四歩、同歩、同飛、7三歩……。


 ピッ

 

 松平先輩は、さきに30秒将棋。

「時間がねぇ……」


 ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ! パシリ!


 4四角。予想通り。今日は冴えてるね。これも飛瀬さんのおかげだよ、アハッ!

「7四歩」

 僕は速攻でしかけた。

 同歩、同飛、7三歩、7六飛と引いて、3三桂に5六銀と立つ。

 5五歩と伸ばしてきたら、6七銀〜6六銀〜7五銀を狙うよ。

 

 ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ!

 

「3六歩ッ!」


挿絵(By みてみん)


 攻めてきたね。 

 同歩は……同歩はおもしろくないかな。4六歩と伸ばされるのが気持ち悪い。

 となると……。

「4七銀」

 守備に回そう。3〜4筋の攻防戦に切り替え。

 3七歩成、同金左、8五歩。

 ここが最後の読みどころかな……同歩は、ないっぽい。後手の飛車が、進出しやすくなるからね。同桂は、9九角成、7三桂成、同桂、同飛成、8六飛。どっちが速いかな。ちょっと後手を持ちたい気がするね。つまり、8五同桂もない、と。

 8六歩〜8七歩成とされるあいだに、ひと仕事……6一角かな。


挿絵(By みてみん)


 (※図は捨神くんの脳内イメージです。)

 

 さっきの金銀の組み替えで、殺す順がなくなってるよ。4一金はみえるけど、さすがに間に合わないはず。4一金……3五歩は、ありそうかな。同銀なら3四歩だね。3五歩に同角なら、9九角成がなくなって、8五桂、5七角成、7三桂成、同桂、同飛成、8六飛。これは後手の馬の位置が微妙だから、戦えそうだ。もちろん、3五桂〜2六歩みたいな、怖い順はいっぱいある。そこまで自信のある変化じゃないね。

 むしろ、3五歩を入れずに、いきなり8五桂と跳ねて、9九角成、7三桂成、同桂、同飛成、8六飛。そこで3五歩かな。同銀とできないから(したら3四歩で桂馬が死ぬよ)、2三銀、3四桂として、次に4三角成をみせれば、勝ちかも。


 ピッ


 ここで僕も30秒将棋。

「……6一角」

 僕は角を打った。

 松平先輩は、すぐに8六歩。

 これも読んであるよ。今度は8五桂がないから、3五歩路線だね。

「3五歩」

「2三銀」


挿絵(By みてみん)


 同角ですらないんだ……やっぱり、角の位置が悪いとみたのかな。

 同角を本線に読んでたけど……7四歩。

 7筋が急所であることに、変わりなし。

 同歩、7三歩。これで次に7二歩成をみせる。

「さすがに攻め合いか……」


 ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ! パシリ!


 松平先輩は、8七歩成と突っ込んできた。

 7二歩成、7七と、8二と、7六と、8一と。


挿絵(By みてみん)


 これで駒の損得はなし。不満があるとすれば、手番がないことかな。

 さあ、ここで9九角成としてくるか、それとも……。

 

 ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ!


「4六歩ッ!」

 角成りじゃなかった。理由はだいたい分かる。

 9九角成に3四桂が激痛で、先手陣は無傷だから嫌ったんだと思う。

 4六歩は、あくまでも攻め合いの手だ。

 

 ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ!

 

「3六銀」

 ここは冷静に逃げる。

 それにしても、30秒はほんとにアッという間だ。

「2四桂ッ!」

「3四桂」


挿絵(By みてみん)


 桂馬を打ち合った。僕の銀は死んでるけど、これで十分勝負形。

 同銀(取らないと2二飛だからね)、同歩、3六桂(3四同金は同角成)。

「同金」

 ここも冷静に回収する。

 松平先輩、いったん受けないと……。

 

 ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ!

 

「4七歩成ッ!」

「!?」

 これは、ちょっとびっくり……受けないの?

 僕が読み間違えてるのかな?

 

 ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ!

 

「2四桂」


挿絵(By みてみん)


 僕は桂馬を打って、チェスクロを押した。

 松平先輩はうっすらと目を細めて、それからいきなり仰け反った。

「げぇッ! 寄ってるじゃねぇかッ!」

 アハハ、寄ってるよね。4一玉は4三角成、同金に3一飛。詰みだよ。

「に、2三玉」

 そっちも寄ってるね。4三角成、同金、2一飛、2二合駒、3二銀、1四玉(1三玉は2二飛成、同玉、2三金まで)、2二飛成で、1三飛くらいしか受けがない。1二桂成の詰めろで勝ち。

「4三角成」

「同金」

「2一飛」

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ!

 

「負けました」

「ありがとうございました」

 アハッ、初戦を制したよ。

「最後、完全にうっかりした」

 松平先輩はコーラを飲んで、4七の歩を指差した。

「歩を成らずに、2三銀と受けたほうが、よかったか?」


【参考図】

挿絵(By みてみん)


「それは3三歩成として、どれで取っても4五桂の予定でした」

「ああ……そうか……もう崩壊してるな……」

「ただ、4七歩成よりはよかったと思います。即寄りはないので」

 松平先輩は、もうひとくちコーラを飲んで、キャップを閉めた。

「4七歩成が効かないんじゃ、もっとまえから悪いな」

「飛車を取り合ったあたりは、まだかなり難しいんじゃないですか」

 僕たちは、8一との局面までもどした。

 松平先輩はしばらく考えて、9九角成とする。


挿絵(By みてみん)


「まあ、3四桂ですよね」

 僕は2度カラ打ちして、3四桂と打ち込んだ。

「2一香と支えるのもチラっと浮かんだんだが……」

「それは……7二飛と打ちます。放置なら、4二桂成、同銀、3四金で」

 8二飛も、ありそうなんだよね。そこで8九飛と消しにいくのは、同飛成、同馬で馬筋が逸れて悪手。でも、5五馬というめんどくさい手があるから、あんまり気が進まない。

「4二桂成が先なのか? 4三角成のほうがイヤだな」

「そこまで冒険する必要がないですし……4三角成、同玉、4二桂成、同銀、3四金が、一見好調にみえるんですけど、同銀、同歩の局面は、僕が駒損してるんですよね。3三歩成にも同馬が用意されてますし、30秒将棋で飛び込む順じゃないかな、と」

 僕の説明に、松平先輩は納得してくれたらしい。

 軽くうなずいて、8九飛を入れてから4二桂成の局面にすすめた。


挿絵(By みてみん)


「8九飛は、ちょっとヌルいかもしれないな」

「仮案、ということで。同銀ですよね?」

 松平先輩は、黙って4二銀と引いた。

 僕は3四金と置く。

「……やっぱ厳し過ぎるな」

「同銀、同歩を放置して、3三歩成に同馬と頑張りますか?」

「3五桂とかか?」

 ……なんか、急に自信がなくなってきたよ。

 どこかで間違えたかも。

「いやあ、後手勝てないだろ、これ」

 松平先輩は松平先輩で、悲観的。よくあるパターンだね。

「飛車の打ち場所を間違えてるかもしれません。例えば、7一とか……」

「負けました」

 あ、丸目先輩が投了したね。御城くんの勝ち。

「ああ、負けたか……」

 松平先輩は前髪をかきあげて、椅子をうしろに傾けた。

「当たりが悪かったな。最終ラウンドで、また会おうぜ」

「アハッ、楽しみにしてます」

 最終戦は、全勝チームと1敗チームの対決がありうるからね。

 松平先輩のところも、ここから3連勝したら、また当たるかもしれない。

「休憩時間はほとんどないみたいだし、感想戦はこれくらいにするか」

「はい、ありがとうございました」

 僕は席を立って、魚住くんのいる3番席をのぞき込んだ。

 ……ああ、もう終わってるんだね。雰囲気的に、魚住くんの勝ちかな。 

 これで3−0スタート、幸先いいね!

場所:ジャビスコこども将棋祭り 高校生男子の部Aクラス 1回戦

先手:捨神 九十九

後手:松平 剣之介

戦型:先手角交換型振り飛車


▲7六歩 △3四歩 ▲6八飛 △8四歩 ▲4八玉 △6二銀

▲3八玉 △4二玉 ▲2二角成 △同 銀 ▲7八銀 △3二玉

▲2八玉 △1四歩 ▲7七銀 △1五歩 ▲8六歩 △5二金右

▲7五歩 △3三銀 ▲7六銀 △3五歩 ▲6六歩 △5四歩

▲3八金 △4二金上 ▲1八香 △4四歩 ▲1九玉 △4三金右

▲2八銀 △4五歩 ▲5八金 △3四銀 ▲7七桂 △5三銀

▲8八飛 △6四銀 ▲6五歩 △5五銀 ▲6七銀 △3三角

▲6八飛 △4六歩 ▲6九飛 △4七歩成 ▲同金左 △4六歩

▲4八金引 △2四歩 ▲5六歩 △4四銀 ▲4七歩 △同歩成

▲同金直 △2五歩 ▲6六銀 △4五銀左 ▲5七銀 △5三銀

▲6七飛 △3四銀 ▲5五歩 △4五歩 ▲5四歩 △同 金

▲6六銀 △4四金 ▲5七飛 △5四歩 ▲5九飛 △4三金引

▲5六飛 △9四歩 ▲4八金引 △4四銀 ▲5七銀 △5三銀

▲7六飛 △4四角 ▲7四歩 △同 歩 ▲同 飛 △7三歩

▲7六飛 △3三桂 ▲5六銀 △3六歩 ▲4七銀 △3七歩成

▲同金左 △8五歩 ▲6一角 △8六歩 ▲3五歩 △2三銀

▲7四歩 △同 歩 ▲7三歩 △8七歩成 ▲7二歩成 △7七と

▲8二と △7六と ▲8一と △4六歩 ▲3六銀 △2四桂

▲3四桂 △同 銀 ▲同 歩 △3六桂 ▲同 金 △4七歩成

▲2四桂 △2三玉 ▲4三角成 △同 金 ▲2一飛


まで119手で捨神の勝ち

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