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こちら、駒桜高校将棋部Outsiders  作者: 稲葉孝太郎
第5局 ジャビスコこども将棋祭り☆午前の部(2015年5月5日火曜)
48/682

36手目 集結する乙女たち

※女子高生たちが、ジャビスコ杯に出るメンバーを集めるお話。

「それでは、H県高校将棋連盟、定期連絡会を終わります。なにか質問は?」

 ないんだな、これが。

「……では、お疲れさまでした。解散」

 さてさて、私の名前は、西野辺(にしのべ)茉白(ましろ)

 ソールズベリー女学院2年生、将棋部主将。

 ま、ひとつよろしく。

 つまんない会議も終わったし、いよいよ本題に移ろうか。

晶子(あきこ)ちゃん、晶子ちゃん」

 私は、髪のお化けみたいな少女に話しかけた。

 この女、プ○キュアのキュアマ○チみたいな髪型してるよね。

 なんか気が強そうだし。

 お手入れはどうしてるのかな? 嗅いだら、くさかったりして。

「ん? なんか用?」

 さっきもらった、ジャビスコこども将棋祭りのチラシを差し出す。

「ああ、出る気?」

「もち、景品もいいからね」

 家電だよ、家電。パソコン3台。転売してもよし。

「で、私に話しかけたってことは……誘ってくれるわけ?」

「んー、いろいろ考えたんだけど、晶子ちゃんでもいいかな、って」

「『でもいいかな』って、なによ。選択肢が少ないくせに」

 そうそう友だちが少なくて……って、なに言ってんのよ、こいつ。

「べつにぃ、晶子ちゃんじゃなくても、いいんだよ?」

「へぇ、じゃあ、代わりにだれを誘うの?」

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………

「アッハッハ、ぐぅの音も出ないのね」

「ぐぅ」

「まあまあ、怒んないでよ。出てあげるから」

 なによ、その上から目線は。

 私のほうが、圧倒的に成績いいんだからね。県代表経験者なんだよ。分かる?

「ま、それはおいといて、3人必要なんじゃないの? あとひとりは?」

 そこだよ、そこ、問題は、そこ。

素子(もとこ)ちゃんが、出てくれないの」

早乙女(さおとめ)さんは、チーム戦に出たことないでしょ。なに考えてんの?」

 くぅ、素子ちゃんが出てくれれば、ダントツで優勝候補なのに。

「ほかに、だれかいそう?」

 私が尋ねると、晶子ちゃんは腕組みをした。

「いくらでもいるんじゃないの? 同学年で固めるとして、獄門(ごくもん)前空(まえぞら)さんは?」

「あんな無口な女、イヤだよ」

 3年に1回しかしゃべらないって、おかしいでしょ。

本榧(ほんがや)土居(どい)さん」

「暑苦しい」

友愛塾(ゆうあいじゅく)志摩(しま)さん」

「怖い。人殺してそう」

「じゃあ、学年下げて、天堂(てんどう)不破(ふわ)さん」

「タバコくさい」

七日市(なのかいち)正力(しょうりき)さん」

「口うるさい」

 晶子ちゃんは、じっとりとした目つきで、首をかしげた。

「あのさぁ……好き嫌いし過ぎっしょ。人間関係は、大事」

「そりが合わないんだもん。しょうがないでしょ」

「いや、だって、ほかに……」

 そのときだった。私のうしろで、カリカリという音が聞こえた。

 げぇ……これは……。

 振り返ると、めちゃくちゃキモイ眼鏡女が、爪を噛んでいた。

「い、いま、私の名前、挙げてなかったでしょ……ッ!?」

 あたしは叫ぶ。

「出たーッ!」

「な、なんで、そういう言い方するのよ……ッ?」

 だってキモイんだもん。

 私の反応とは対照的に、晶子ちゃんはパンと手をたたいた。

「おっと、まだいたわね。みどりちゃんでいいじゃない」

「いいって、な、なにがよ……ッ?」

「ジャビスコこども将棋祭り、一緒に出ない?」

 ちょ、なに勝手にさそってんのッ!?

「ふ、ふん……私の力が必要ってわけね……ッ」

「ないないないないない、全然ない」

「そう、必要なの、だから出場して」

「こいつと一緒に出るくらいなら辞退するよッ!」

「な、なんか言ってることが違うけど……いいわよ……ッ」

 ノー! 絶対にノー!

 じたばたする私を、晶子ちゃんはうしろから羽交いじめにした。

 口もとを押さえられる。

「というわけで、茉白(ましろ)ちゃんもOKみたいよ」

「むごぉ……」

「よ、よろしくね……ッ」

 

  ○

   。

    .


 私の名前は裏見(うらみ)香子(きょうこ)駒桜(こまざくら)で将棋が一番強い女……と言いたいんだけど、とうとう3年生になって、受験勉強に追われる日々。ああ、棋力が下がる……個人戦は、不破さんにうまくやられちゃったわね。全盛期の私なら、あんな不良少女、こてんこてんに……っと、こんなこと考えてる場合じゃないわ。勉強、勉強。

「なになに、数列a,b,cは等差数列で、公差は正。a+b+c=45、abc=3135のとき、a,b,cの値を求めなさい、と」

 こういう問題は、ちょちょいのちょいと……。

 数学は得意科目なのよ。

 

 ヴィー ヴィー


 ん? 携帯が鳴ってる? しかも電話?

 ……もう夜の9時なんだけど。

 こういうときの電話は、緊急事態かもしれないから、心臓に悪いのよね。

 

 ヴィー ヴィー


 はいはい、出ますよ。出ればいいんでしょ。

 ……え? 南海(なんかい)さん?

 私は発信者にびっくりして、すぐ電話に出た。

「もしもし?」

《もしもし、香子ちゃん? ごめんねぇ、夜遅くに》

「いや、べつにいいんだけど……なんか用?」

 南海さんは、H市ソールズベリー女学院の知り合いだ。まあ、知り合いっていうか、半分友だちに近い関係。外見はスポーツ少女って感じだけど、将棋も強い。H県高校竜王戦で当たった相手だ。それ以来、たまに会っている。

《実はさあ、5月5日に、H市で将棋祭りがあるんだけど、出ない?》

「将棋祭り? ゴールデンウィークに?」

《そうそう、チーム戦でさ、3人必要なんだよね。どう?》

 いきなり言われましてもですね……。

「3人制なの? もうひとりは?」

《ゆずっち》

 鐘ヶ峰(かねがみね)乃々村(ののむら)さんか……昨年度の、H県高校将棋連盟副支部長だ。

「乃々村さんの了解は取ってあるの?」

《もち、っていうか、言い出したのゆずっちだし》

 そういうオチ。

「んー……ゴールデンウィークかぁ……そりゃすこしは遊びたいけど……」

《大丈夫だって、1日くらい将棋指しても、落ちないよ》

 さすがはソールズベリー、進学校の余裕。

 ま、1日息抜きして合否が決まるラインでもないのよね。

「その面子なら、オッケーよ」

 電話の向こうがわで、パチリと指を鳴らす音が聞こえた。

《そうそう、そうこなくっちゃ。詳細はHPに載ってるから、確認よろ》

「準備はなにもできないから、そこは前提で」

《オッケー、自分らも、べつにしないから。ところで最近……》

 

  ○

   。

    .


 お(はな)の「お」は、お花の「お」〜♪

 桐野(きりの)(はな)ですぅ。おひさしぶりですぅ。

 今日は、(しのぶ)ちゃん、丸子(まるこ)ちゃんと一緒に、本榧(ほんがや)市でショッピングなのですぅ。

「ルンルンですぅ」

「お花殿は、いつみても幸せそうだな」

「もちろんなのですぅ」

 これだけ天気がいいと、踊らずにはいられないのですぅ。

 ちなみにぃ、このポニテのカッコいい女の子が、神崎(かんざき)(しのぶ)ちゃんですぅ。

 本物の忍者さんですぅ。

 お花が踊っていると、うしろから、

「通行人には気をつけてくださいね」

 と注意されちゃいましたぁ。

 この眼鏡をかけたちっこい女の子が、吉備(きび)丸子(まるこ)ちゃんですぅ。

 なでなで。

「あの……なんで頭なでるんですか?」

「お人形さんみたいなのですぅ」

「なんか、バカにされてる気もしますが……」

 バカにしてないのですぅ。かわいがってるのですぅ。

「ところで、お花殿、丸子殿、この触れ書きは見たか?」

 ふれがきってなんですかぁ? ……あ、チラシのことなのですぅ。

「じゃびすここどもしょうぎまつり……読めたのですぅ」

 丸子ちゃんもメガネをあげさげしながら、

「ああ、これですか。ネットでも宣伝されてましたよ」

 と、ものしりなのですぅ。

 さすがは丸子ちゃんですぅ。

「将来は、キャリアウーマンでお(つぼね)さまなのですぅ」

「ほんとにバカにしてませんよね?」

「どうだ? 拙者らも参加せぬか?」

 ほえぇ、なぐり込みなのですぅ。

 丸子ちゃんはちょっとイヤそうですぅ。

「3年生にもなって、出るんですか?」

「三年生だからこそ、だ。今年は日日杯にちにちはいもあるが、拙者らは出られぬからな」

 日日杯っていうのはぁ、中四国地方のおっきな大会なのですぅ。県代表経験者しか出られないのですぅ。

「お花は出られまぁす」

「プチ自慢ですね」

「ふえぇ……事実を言っただけなのですぅ……」

「どうした? 都合が悪いのか? 悪いなら、ほかを当たるが」

「お花は、もちろん出まぁす」

 楽しそうなのですぅ。それにぃ、友だちが遊んでくれなくて暇なのですぅ。

 3年生って、思ってたよりさみしいのですぅ。

「拙者も、すでに就職が決まっていてな。時間が有り余っている」

 すごいですぅ。

 丸子ちゃんはちょっとびっくりしてますぅ。

「え? どこに決まったんですか?」

内閣府(ないかくふ)隠密課(おんみつか)だ」

「えぇ……そんな組織名、聞いたことありませんが……」

「影の諜報機関だからな」

 とかなんとか言って、ぺらぺらしゃべってるのですぅ。

 特定秘密保護法で、しょっぴかれちゃいまぁす。

「で、どうする? 丸子殿は辞退か?」

「そうですね……まあ、1日潰れるだけですし、出ます」

 えへへぇ、この3人は、いつも一緒ですぅ。

「チーム名とか、ないんですかぁ?」

「必要だ。登録せねばならん」

「だったらぁ、『お花と愉快な仲間たち』にするのですぅ」

 ……うにゅ?

 なんかこのシーン、デジャブなのですぅ。

 どこかで、同じことを言ったような気がするのですぅ。

「なんで個人名を入れるんですか?」

「お花はぁ、お花の名前が大好きだからでぇす」

 パパとママがつけてくれた、とってもステキなお名前なのですぅ。

「だからって、チーム名に入れていいと思ってるんですか?」

「思いまぁす」

「ふむ、この面子で一番強いのは、お花殿だ。それでよかろう」

 さすがは忍ちゃん、いい子いい子なのですぅ。

片仮名(かたかな)羅馬字(ろおまじ)が入っていないのも、印象がよい」

「神崎さんらしいですね……」

 登録は忍ちゃんに任せて、お花は牙を磨くのですぅ。

 将棋指しはオンナノコオンナノコしていても、盤の前では狼さんなのですぅ。

 みんなみんな食べちゃうのですぅ。ワオーン。

 

  ○

   。

    .


 アイヤー、はじめましてアル。(シィー)(ユアン)ヨ。

 日本に留学して3年目、日本語完璧アル。

 よろしくネ。

「というわけで、郭子(ひろこ)ちゃん、礼子(れいこ)ちゃん、よろしくアル」

 こっちのぽっちゃりが郭子ちゃん、大人びてるのが礼子ちゃんネ。

「よろしくって、なにが?」

「郭子ちゃん、とぼけちゃダメヨ。メールにちゃんと書いたアル」

「喫茶店の名前と地図以外、中国語で読めないんだけど……」

「日本人なら漢字のニュアンスで分かるネ!」

 ぽんぽんと、礼子ちゃんが肩を叩いてきたアル。

「茶番はそれくらいにしとき。うち、遠くから来てんねんで」

「じゃ、ジャビスコ将棋祭りに出て欲しいアル」

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………

 なんで黙るアルか?

 日本人特有の沈黙、怖いからやめて欲しいアル。

「イエスかノーくらい言って欲しいネ」

(しゅう)さんと志摩(しま)さんには悪いけど、このメンバーだとキツくないかしら?」

「そんなことないアル! 郭子ちゃんだって強いアル!」

 郭子ちゃんは、きげんをよくしたネ。ちょろいヨ。

 でも、礼子ちゃんは……。

「前回の竜王戦、うちと習ちゃん1回戦負けなんよね」

「市代表で十分ネ。H県に30人もいないアル」

「20人おれば十分やろ……6チームも作れるねん」

 うぅ……礼子ちゃんは、妙に慎重アル。

「礼子ちゃんだって、強いアル。去年の1回戦負けは、たまたまネ」

(たま)の取り合いなら負ける気せえへんけど、将棋は水もん」

 なんでそんな怖いこと言うアルか?

 (たま)の取り合いなんて、アタシしたことないヨ。

「賞品もすごいネ。パソコンもらえるアル」

「このまえ買い替えちゃったのよねぇ」

「うちも要らんわ」

「アタシが転売するから、現金で山分けするアル!」

 女子高生には大金アル。もちろん手数料は差っ引くヨ。

「優勝できたら、よね。交通費で足が出ちゃいそう」

 あぁ、なんでこんなに醒めてるアルか!

 日本人、変なところで守って変なところで攻めてくるから困るヨ!

「まあ、中国さんにはお世話になっとるけぇ、うちは出てもええよ」

 これは意外アル……礼子ちゃんが先に折れたネ。

「んー、礼子さんが出るなら、私も出ようかしら」

「そうそう、3人で出るアル」

 中盤ぐだったけど、これでメンバー確保できたヨ。ひと安心。

「不入虎穴、焉得虎子、大暴れするアル」

「死人が出んとええけどな」

 だから、なんでそんな怖いこと言うアルか?

 

  ○

   。

    .


 あぁ……だりぃ……。

 高校に入ったのはいいが、することねぇな……天堂って、将棋部があるのかと思ったら、将棋サークルなのな。部室がねぇ……捨神(すてがみ)の兄貴は、ピアノのレッスンでいねぇし、他のメンバーはよえぇし……帰るか。

 あたしは鞄を持って、校舎をあとにした。

 途中で、妙にそわそわしてくる。

「……ニコチン切れだな」

 あたしは、キョロキョロと当たりを見回す。

 このへん、おまわりがいるからな……あそこのトイレにするか。

 公園のトイレで吸うってのは、あんま好きじゃないんだけどさ。

 ここは多少キレイだし、我慢もできる、と。

 

 ガチャン

 

 便器に腰をおろして……ガサゴソ……シュボ、と。

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………

 ふぅ。

 

 コンコン

 

 チッ、なんだよ……となりのドアが開いてただろ。よく見てからノックしろ。

 あたしはタバコをくわえたまま、無視した。

 

 コンコンコンコン

 

「うっせーな……入ってるよ!」

「警察です」

「!?」

 あたしは、タバコを床に落とした。

 慌てて拾い上げ、トイレに流す。

 消臭、消臭。あたしは、芳香剤を左右のそでに振りかけた。

「出て来てください」

 うッ……これ、出て行く必要あるのか?

 法律に詳しくねぇから、わかんねぇ……。

「出て来ないと、踏み込みますよ」

 あたしは観念して、ドアを開けた。すると……。

「ああッ! クソマッポ!」

 ドアのまえに立っていたのは、前髪パッツンのロングヘアーに三つ編みという、変わった髪型の女。黒い革手袋をした腕を組んで、こちらをにらんでいた。

「クソマッポじゃないわ……正力(しょうりき)安奈(あんな)よ」

 くっそ、七日市の風紀委員じゃねぇか。なんでここにいるんだよ。

「わざわざトイレでおどかすな。変態か」

「タバコは法律違反……まあ、今回はその件で来たわけじゃないけど」

 クソマッポは、入り口のほうへ振り向いた。

青來(せいら)さん、見つけたわ」

「あッ! やっぱり(かえで)ちゃんだったんですね!」

 ドアの向こうに、おかっぱリボンの女が現れた。ハァハァと息を荒げている。

 ソールズベリーのセイラまでいるとか……どうなってんだ……。

「おまえら、ここでなにしてるんだ?」

「楓ちゃんを捜してたんですよ! 隅々まで! 津々浦々!」

「ここは内陸だろ」

「あら……楓さん、学があるのね」

 津々浦々は、小さい港と海岸って意味だからな。

「って、んなこたーどうでもいいんだよ。なにしに来た?」

 アンナは七日市、セイラはH市だろ。駒桜になんの用だ。

「決まってます! 将棋祭りですよ! 将棋祭り!」

「将棋祭り? ……あ、ジャビスコのことか?」

「それ以外に、なにかあるの?」

 クソマッポは、いちいち絡んでくんな。

「……まさか、あたしを誘おうって腹じゃないよな?」

「そのまさかです!」

 マジか……。

「だが断る」

「断る権利はないです!」

「あるだろ」

「もうこのメンバーで登録しちゃいました!」

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………

 は?

「登録した? 無断で?」

「先制攻撃こそ勝利への道だからです!」

「とかなんとか言ってたフリードリヒ大王は、最後凹されてたよなぁ?」

「フリードリヒ大王が出てくるなんて……こんなの、私の知ってる楓さんじゃない」

 アンナのなかで、あたしはどういうキャラなんだよ。

「とにかく、あたしは出ないからね」

「出てください! 景品を山分けしましょう!」

 ……ん、景品があるのか。マジメに読んでなかったからな、チラシ。

「景品って、なんだ?」

「Aクラス優勝チームにはパソコン3台、凖優勝チームにはチェスクロ3台よ」

「マジか!」

 いいもんじゃねぇか。ちょうど自分のパソコン欲しかったところだし、チェスクロは捨神の兄貴が喜んでくれそうだな。

「それを先に言えよ」

「出てもらえるんですね!?」

「その代わり、絶対優勝するからな」

「もちろんです! 必勝! 圧勝! 大楽勝!」

 正直、こいつのテンションきついんだが……まあ、いいや。

 あたしは、アンナのほうに向き直る。

「それにしても、なんで3人目がおまえなんだ?」

 アンナは、人差し指を額にあてて、フッとため息を漏らした。うぜぇ。

「楓さんが会場で飲酒喫煙をおこなわないよう、監視するためよ。発覚したら、H県の品位が下がるだけじゃなく、スポンサーにも申し訳ないから」

 おまえは保護者かよ……。

 あきれ返ったあたしは、ポケットから箱を取り出した。

「はい、没収」

「あッ……」

 アンナは箱を取りあげると、ぐしゃりと片手でつぶした。


 ポキポキポキ

 

「……ポキポキ?」

「なんか、変な音がしましたよ!?」

 あ、あたしのコーヒーシガレット……おやつ……。

【ジャビスコこども将棋祭り 高校生女子の部Aクラス 出場チーム紹介】


☆=ブロック代表経験者

★=県大会優勝経験者


 Outsiders

飛瀬(とびせ)カンナ(駒桜(こまざくら)市、駒桜(こまざくら)市立(いちりつ)高校、2年生)

前空(まえぞら)(しずか)鎌鼬(かまいたち)市、獄門(ごくもん)高校、2年生)

黒木(くろき)美沙(みさ)艶田(つやだ)市、椿油(つばきゆ)高校、1年生)


 将棋の女王様

西野辺(にしのべ)茉白(ましろ)(H市、ソールズベリー女学院、2年生)

月代(つきしろ)晶子(あきこ)(K市、比呂(ひろ)高校、2年生)

渋川(しぶかわ)みどり(世良(せら)市、世良(せら)高校、2年生)


 Common Sense Girls

乃々村(ののむら)(ゆず)(H市、鐘ヶ峰(かねがみね)女子高校、3年生)

南海(なんかい)朱美(あけみ)(H市、ソールズベリー女学院、3年生)

裏見(うらみ)香子(きょうこ)駒桜(こまざくら)市、駒桜(こまざくら)市立(いちりつ)高校、3年生)


 お花と愉快な仲間たち

桐野(きりの)(はな)艶田(つやだ)市、椿油(つばきゆ)高校、3年生)

吉備(きび)丸子(まるこ)本榧(ほんがや)市、本榧(ほんがや)高校、3年生)

神崎(かんざき)(しのぶ)鎌鼬(かまいたち)市、獄門(ごくもん)高校、3年生)


 象棋(シャンチー)小姐(ショウジェ)

(シィー)(ユアン)(H市、AICN学園、2年生)

土居(どい)郭子(ひろこ)本榧(ほんがや)市、本榧(ほんがや)高校、2年生)

志摩(しま)礼子(れいこ)(O市、友愛塾(ゆうあいじゅく)高校、2年生)


 インコンパチブル

不破(ふわ)(かえで)駒桜(こまざくら)市、天堂(てんどう)高校、1年生)

東雲(しののめ)青來(せいら)(H市、ソールズベリー女学院、1年生)

正力(しょうりき)安奈(あんな)七日市(なのかいち)市、七日市(なのかいち)高校、1年生)


飛瀬「あ……れ……?」

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