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こちら、駒桜高校将棋部Outsiders  作者: 稲葉孝太郎
第4局 どっきり♡グループデート(2015年4月26日日曜)
45/682

35手目 飛瀬・捨神ペア

※ここからは捨神すてがみくん視点です。

 アハッ! 飛瀬(とびせ)さんとデートの続きだよ!

 ほんとにドキドキしちゃうな……この機会をつくってくれた箕辺(みのべ)くんには、心から感謝してるよ。今度、なにかおごらないとね。

 まずは、中断していた名人戦第2局の話をしようか。

「……というわけで、行方(なめかた)8段の勝ちになったんだよ」

 ようやく話が終わったよ。

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………

「飛瀬さん、聞いてる?」

「あ……うん……聞いてる……」

 さっきから、ボーっとしてるように見えるけど……もしかして、僕の話がつまらないのかな? 会話には、あんまり自信がないんだよね……どうしよう。さすがに、将棋とピアノの話でぶっ続けに何時間も話してるのは、変かもしれない。

 ちょっと話題を変えようか。

「飛瀬さん、最近の学校生活は、どう? もう駒桜(こまざくら)市にも慣れたでしょ?」

「うん……地球の生活は、だいぶ慣れたかな……」

 アハハ、飛瀬さんって、ほんとにおもしろいよね。

 ところで、飛瀬さんが宇宙人だって話、どのくらいのひとが信じてるのかな? ドイツ人のポーンさんは、信じてるみたいだね。あとは……あとは、僕しかいない気がする。

 え? なんで信じてるのかって? イヤだな、好きになった子のいうことを、疑えるわけないじゃないか。それに、飛瀬さんが宇宙人でも、僕は構わないからね。人間、大事なのは種族じゃなくてハートだよ。

 体の構造が違ったらどうしようとかは、たまに思うけどね。

「飛瀬さんの住んでるシャートフ星って、どんな場所?」

「N72星雲にある……田舎かな……緑がいっぱい……」

「星に田舎とか都会とか、あるの?」

「あるよ……宇宙連合のなかでも、人口格差や経済格差があるし……」

 なんだかリアルだね。もっと平等かと思ってた。

「地球は?」

「地球は、そもそも連合に加盟してないし……辺境の惑星かな……」

 でも、そんなに辺境って感じはしないよね。

 ロボットは開発されてるし、パソコンだってすごいよ。

 それとも、宇宙旅行ができないとダメなのかな?

「その辺境の惑星に、飛瀬さんはなんで来てるの?」

「生態系の調査……」

「趣味で?」

「私は宇宙探査局の局員だから……テラ系担当……」

 そう言えば、公務員だって言ってたね。

「局員ってことは……」

 僕は、そこで言葉を区切った。

「局員ってことは……?」

「アハハ、ごめん、なんでもない」

 未だに訊けないことが、ひとつあるんだよね……飛瀬さんの年齢。公務員で、僕と同世代だなんて、ありえるのかな? もしかして、僕よりずっと年上なんじゃない? 20代とかならいいけど……実は、50代、60代とか……あるいは、100歳を超えてるとか。医療水準も違うだろうし、あんまり寿命差がありすぎると、お付き合いしてもらえないかも。

 怖くて訊けない……でも、いつかは訊かないといけない……どうしよう?

 この場の勢いで、笑って尋ねちゃおうか?

「飛瀬さんってさ、どのくらい……」

「お、捨神(すてがみ)じゃないか」

 いきなり名前を呼ばれて、僕は振り返った。

 そこには、肩までロンゲを垂らした、落ち着いた雰囲気の少年が立っていた。

 右手には、開いたままの本を持っている。

「あ、御城(ごじょう)くん」

「奇遇だな。まさかこんなところで……と」

 御城くんは、飛瀬さんの存在に気づいたみたいだ。

「すまん、デートの最中だったか」

 とかなんとか言いながら、僕と飛瀬さんのあいだに割って入ったね。

 これは寝取られフラグ……なわけないよ。御城くんは、女の子に興味ないから。

 僕に用事があるみたいだけど、将棋かな?

「ごめん、今は将棋指せないよ。というか、なんでここにいるの?」

「家族で来てるんだ。俺は疲れたから、単独行動させてもらってる」

 アハッ、そういうことなんだ。

 すぐに、店員さんがやってきた。さすがに場所代は払わないとね。

「コーラ」

「しばらくお待ちください」

 注文を終えた御城くんは、僕に向きなおる。

 飛瀬さんの美貌に関心がないのは、さすが御城くんだよ。安心、安全。

 御城くんは本をたたんで、テーブルのうえに置いた。

「ゴールデンウィークにある将棋祭り、出ないのか?」

 将棋祭り……ああ、あのことだね。

「ジャビスコこども将棋祭り?」

「高校の部にエントリーしてるかと思ったら、おまえの名前はないって言われたぞ」

 どこからそんな情報仕入れてるんだろうね……まあ、だいたい見当つくけど。

 一方、飛瀬さんは、

「じゃびすこって……なに……?」

 とたずねてきた。

 僕は、

「ジャビスコこども将棋祭りっていうのは、最近の将棋ブームにあやかって、地元のフランチャイズ企業が開催するイベントのことだよ。3人制のチーム戦で、日付は5月5日。こどもの日だね。小学生から高校生までの年齢別になっていて、さらにA・Bのクラス分けがあるんだ」

 と説明した。飛瀬さんはかるくうなずいた。

 御城くんはまた割り込んできて、

「で、なんで出てないんだ?」

 とたずねた。

「あれね、地元の友だちと出るつもりが、クラス分けに当てはまらなくてさ」

「クラス分け? どういうことだ?」

「市代表がいると、Bクラスに登録できないでしょ? でも、ほかのメンバー……箕辺くんと葛城(かつらぎ)くんって言うんだけど、Aはちょっとキツいかな、と思って」

「べつにお祭りイベントだから、好きに出ればいいんじゃないのか?」

 そうかもしれない……考え過ぎたかな?

 とはいえ、一番遠慮したのが箕辺くんだったし、しょうがないよね。

「お待たせしました」

 御城くんのところへ、コーラが運ばれてきた。

 彼はストローを使わずに、ひとくちあおって、息をはく。

「まあ、ちょうどよかった。用事で出られないわけじゃないんだな?」

「アハッ、そうじゃないよ」

「だったら、俺と出ないか?」

「……御城くんと?」

「ん? イヤか?」

 イヤってわけじゃないけど……ギリギリのスケジュール調整はキツいかな。

「ゴールデンウィークは、予定を入れようと思ってたんだけど……」

「さっき、用事はないって言ったじゃないか」

「必須の用事はないよ。でも、ピアノのレッスンとか、いろいろ……」

 言い訳をする僕のまえで、御城くんは飛瀬さんに話しかけた。

「きみ、名前は?」

「飛瀬カンナ……」

「トビセさんも、捨神にひとこと言ってくれよ」

「え……なんて……?」

「んー、そうだな……」

 御城くんは、あごに手をあてて、じっと空をみあげた。

 あんまり、変なこと言わないで欲しいな。

 飛瀬さんは淑女だからね。そこらの女子高生とは違うんだよ。

「そうだ、俺たちのチームが優勝したら、捨神とデートしてやってくれよ」

 ……あのさ、御城くん、いくら友だちでも、それは怒るよ。

「御城くん、飛瀬さんにセクハラするの、止めてもらえないかな?」

「べつにセクハラはしてないぞ」

「いや、今のは明らかに……」

「いいよ……」

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………

 え?

「飛瀬さん、いま、なんて言った?」

「捨神くんが優勝したら……ふたりでデートしてもいい……」

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………

「アハッ! 参加するよ!」

「よし、あとひとりは、どうする?」

黒潮(くろしお)魚住(うおずみ)くんか、皆星(かいせい)(すばる)くん」

 御城くんは、コーラでむせ返った。

 気管支に入ったのかな?

「どうしたの? ふたりと喧嘩でもしてる?」

「い、いや……その面子は、ちょっとマズくないか?」

「『県大会優勝経験者で固めちゃダメ』ってルールでもあるの?」

「お祭りイベントだぞ?」

 飛瀬さんとのデートが懸かってるのに、お祭りなわけないよね。

 ガチだよ。

「……まあ、それでもいいか。優勝しないと恥だがな」

「覚悟のうえだよ」

 御城くんはコーラを飲み干すと、席を立った。

「昴は、もう自分のチームを作ってるらしい。魚住と掛け合う」

 そっか……昴くんも出るんだね。面子は、なんとなく予想がつく。

「よろしくね」

「物事に100%はないからな。あまり期待しないでくれ」

 御城くんは本をひらくと、立ち読みしながらその場を去った。危ないよ。

 ……っと、話を戻さなきゃ。なんだったっけ?

 ……ああ、年齢の話か……どうしよう。今ので勢いが削がれちゃったな。

「そうだ、飛瀬さんも参加したら?」

「将棋祭りに……? チーム戦なんだよね……?」

「ポーンさんとか大場(おおば)さんとか、すぐに集まるんじゃない?」

 ただ、その場合はBクラス参加になるかな。市代表がひとりもいないから。

裏見(うらみ)先輩は、どうかな……? それプラス馬下(こまさげ)さん……」

「あ、それはダメ。チームメイトは、高校がバラバラじゃないといけないから」

「高校がバラバラ……? なんでそんなルールがあるの……?」

「ソールズベリーとか紫水館(しすいかん)が身内で優勝しないように、じゃない?」

 主催者からは、なにも説明がないけど、多分そうだよ。同じ学校で固めていいなら、女子はソールズベリー女学院、男子は紫水館高校が鉄板だからね。

 飛瀬さんは、もういちど考え込んだ。

前空(まえぞら)さんと黒木(くろき)さんじゃダメ……?」

 へぇ、そことコネクションがあるんだ。すごいや。

「ダメどころか、十分過ぎると思うよ」

 ふたりとも、市代表だからね。前空さんは鎌鼬(かまいたち)市、黒木さんは艶田(つやだ)市。

「Aクラスは激戦だと思うけど、おたがいに頑張ろうね」

「うん……」

 今日のグループデートで、飛瀬さんとの距離が、ちょっと縮まった気がするよ。

 じわじわ寄せていきたいな。

「ところで、今週の棋聖戦挑決は、豊島(とよしま)7段と……」

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