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こちら、駒桜高校将棋部Outsiders  作者: 稲葉孝太郎
第18局 呪いを解け!(2015年5月29日金曜)
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173手目 人外だらけの拷問大会(飛瀬ルート)(2)

「ニャハハ、そんな動きで、我が輩は捕まらんぞ」

 キャット・アイは高らかに笑いながら、木から木へと飛び移る。

 市立いちりつの校庭で、激しいバトルが繰り広げられていた。

「こいつら強い……うぷッ!?」

 私は、スラッグ・ガールの放ったネバネバの液体にからめとられた。美沙みさちゃんが魔法で助けてくれたけど、気持ちが悪い。キャット・アイは、野良猫を援軍に呼んで、私たちを足止めする。

 

 ニャー!

 

 ぶち猫が、私に飛びかかってきた。私は、催眠銃でそれをやっつけた。

 ケルベロスちゃんもがんばって追っ払ってくれているけれど、数が違い過ぎる。野良猫はフェイントをかけながら、ケルベロスちゃんを翻弄していた。

「これではキリがありませんよ」

 美沙ちゃんの言う通り、野良猫の数は増すばかりで、キリがない。催眠銃のエネルギーも少なくなってきたし……そろそろ決着をつけよう……。

「美沙ちゃん、魔法であのふたりを……」


 ニャー! ニャー!

 

 飛びかかってきた黒猫と白猫に、催眠銃をはなつ。

 でも、多段攻撃になっていて、うしろから茶色の虎猫が飛び出した。

 咄嗟に反応して引き金を引いたけど――

「あ、バッテリー切れ……」

 私の顔面に、猫のふさふさしたお腹がぶつかった。

「全軍、かかれーッ!」

 キャット・アイの号令で、一斉攻撃が始まった。

 むぎゅぅ……私は、猫の山に押さえ込まれてしまう。

「美沙ちゃん、助けて……あッ」

 美沙ちゃんはスラッグ・ガールのネバネバにやられて、地面に墜落していた。

「すみません……ケルベロスちゃんを助けようとしたら、隙を突かれて……」

 地面に伏した私たちのまえに、キャット・アイとスラッグ・ガールが現れた。

「ニャハハ、我が輩たちの勝ちだな」

「アイちゃん、こいつら、どうするの?」

「とりあえず、襲った理由を……ンニャ!?」

 私の体が、急に軽くなった。猫たちが飛び退いたのかと思ったら、みんな宙に浮いている。キャット・アイとスラッグ・ガールの体も、目の前で宙に浮き上がった。

《ごめんごめん、お待たせ》

 しずかちゃんが、校庭に舞い降りてきた。

 キャット・アイは目を見張る。

「な、何者だニャ!? 新手の魔法使いかッ!?」

《残念、エスパーだよ》

「ニャ!? 直接脳内にッ!?」

 これには、キャット・アイも驚きを隠せない。私は起き上がって、泥を払った。

「それでは、拷問を始めます……静ちゃん、よろしく……」

「だから、拷問はダメだと言っているでしょう」

 もう美沙ちゃんは無視で……私が取り合わないと、美沙ちゃんは怒り始めた。

「静先輩も、なにか言ってくださいッ! 違法行為ですよ、違法行為ッ!」

《でもさ、話し合いで解決できないから、しょうがなくない?》

 そうそう……静ちゃんの言うとおり……。

「静ちゃん……何分くらいがんばれる……?」

《これだけ数が多いと、サイコキネシスも疲れるんだよね。30分以内でお願い》

「30分あれば十分……拷問開始……」


 *** 宇宙人、拷問中 ***

 

「ギニャー!」

 闇夜に火花が散る。私は感電拷問の真っ最中……空中に固定された怪盗を撃つだけの、簡単なお仕事です……光線銃には、予備のバッテリーもついてるから安心……。

「どう……? オモチャの銃だけど、MAXで撃つと、なかなか効くでしょ……?」

「も、もうやめてくれ……」

捨神すてがみくんたちにかけた呪いを解除して……それで問題は解決するから……」

「だから、我が輩は知らんと……ギニャー!」

 はい、ビリビリビリ。

「どっちが悪だか分かりませんね」

 ほうきにまたがった美沙ちゃんは、空中でそうつぶやいた。

「捨神くんを傷つける者は悪……Q.E.D.……」

《アハハ、カンナちゃん、恋の暗黒面に堕ちてるよ》

「笑ってる場合じゃないですよ、静先輩。そろそろ止めないと」

 静ちゃんは、寝転がった格好で、空中をふわふわした。

《うーん、この様子だと、お姉さんは関係ないんじゃない?》

「そ、そうだ。我が輩は関係ない……ギニャー!」

 私は光線銃を撃ちながら、静ちゃんのほうを見上げた。

「でも、こいつらしか考えられないんだけど……」

《そもそもさ、このお姉さんたちって、なんなの? 人間?》

 そう言えば、確認してなかったね……地球駐在員、痛恨のミス……。

「お姉さんって、何者……? 宇宙人じゃないんだよね……?」

《だから、宇宙人はいないって》

 静ちゃんは頑固。

「まず、おまえたちから名乗れ」

 お姉さんは強気に、アイマスクの奥から私をにらんだ。

「名乗れって言うけどさ……お姉さん、私の名前知ってるよね……」

 キャット・アイは、ギクリとした。

「ニャ、ニャんのことだ?」

「私、知ってるんだよ……お姉さんが普段なにをしてるのか……」

 キャット・アイは動揺した。

「ま、まさか、おまえ、ほんとに宇宙人なのか?」

「そのまさか……で、お姉さんに教えて欲しいのは、名前じゃなくて種族ね……初めの頃は、違法な宇宙移民かと思ったんだけど……なんか違う気がする……」

「……」

 キャット・アイは、黙秘権を行使した。私は、光線銃のトリガーに指をかける。

「妖怪ではありませんか?」

 美沙ちゃんのひとことに、私は手をとめた。

「ヨウカイ……? ヨウカイってなに……?」

「動植物や家庭用品が、理性を持つようになった存在ですよ」

 なぜそんなオカルト現象が起こるのか……地球は理解に苦しむ……。

「で、このお姉さんは、もともとなんだったの……?」

「ニャーニャー言ってるから、猫じゃないですか?」

「猫が人間になるの……? おかしくない……?」

「宇宙人がそれを言いますか? 魔女とエスパーもいるのに?」

 うぅん……それを言われると、困るかな……。

「じゃあ、こっちのタレ目のお姉さんも、ヨウカイ……?」

「そっちのひとは、なんなんですかね。猫じゃないような気がします」

《ねえねえ、15分経ったから、そろそろ追い込んでくれない? 疲れてきちゃった》

 静ちゃんの催促を受けて、私はふたたびトリガーに指をかけた。

「待て待てッ! 我が輩の正体を知ってるなら、我が輩と捨神たちの仲も知ってるだろうがッ! なんで我が輩を疑うッ!?」

 む……それは、一理ある……。

「でもね、普段の態度は、見せかけかもしれないから……」

「我が輩は猫かぶってないッ!」

 ん? 猫なのか猫じゃないのか、はっきりして欲しい……。

「とりあえず、キャット・アイさんしか心当たりないんだよね……」

「あ、それは冤罪の構図ですよ、無能捜査」

 また美沙ちゃんが突っ込んできた……私は振り返って、

「美沙ちゃんは、だれが犯人だと思うの……?」

 と尋ねた。

「知りませんよ」

「じゃ、対案がないってことで……」

「対案があるかどうかじゃないでしょうッ! 拷問反対ッ!」

 私たちが揉めていると、静ちゃんはあくびをした。

《ふわぁ……こんなことしてる場合じゃないと思うんだけどなあ……ん、雨?》

 聞いたことのない悲鳴があがった。

「キャー! なめくじッ! なめくじ嫌いッ!」

 あ……静ちゃんがしゃべるとこ、初めてみた……。

 静ちゃんは、空からパラパラと降ってくる大量のなめくじに覆われていた。

 サイコキネシスが解けて、キャット・アイたちは地面に落ちる。

「アイちゃん! 逃げるよ!」

「さすがはナメちゃん!」

 キャット・アイとスラッグ・ガールは、校門のほうへダッシュ。

 私と美沙ちゃんは追いかけようとしたけど、私は猫に、美沙ちゃんは空から降ってくるナメクジに行動を妨害された。私は猫を光線銃でおどしながら、道を確保する。

 だけど、身体能力はキャット・アイのほうが高い。あっと言う間に見えなくなった。

「ケルベロスちゃん! あのふたりを追いなさいッ!」

 私たちもケルベロスちゃんを先頭に、市立の校庭を飛び出した。

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