139手目 ちょっとエッチな奥さま
捨神くんとデート中……飛瀬カンナです……。
今日は、校外の喫茶店にやって来ました……中心部だと、知り合いに会う可能性が高いから……私たちがつきあっているのは、まだまだナイショ……宇宙人はシャイ……。
私たちは、窓際に腰をおろしていた。捨神くんが、わざわざ予約してくれた席だ。こういうところで気配りができる捨神くんは、いい旦那さんになりそう……その奥様は私……奥様は宇宙人……今日もまた、異種族の愛が深まろうとしています……。
「飛瀬さんって、地球に来るまえは、どこにいたの?」
捨神くんはコーヒーを飲みながら、そう質問してきた。最近の捨神くんは、私の過去を知りたいのか、こういう質問が多い。シャートフ星のこととか、宇宙探査局からの派遣先とか、いろいろとおしゃべりする。もちろん、機密事項は伏せておいた。
「地球に来るまえは、アレシアっていう星の調査……」
「地球に似てる?」
「全然……めちゃくちゃ寒かったし……息をすると肺が凍る……」
捨神くんは、そっか、と言って、コーヒーカップを置いた。
なんだかマジメな顔になる。
「胸に障るから、気をつけてね」
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「え……今、なんて言った……?」
捨神くんは、一瞬きょとんとしたあとで、いつもの笑顔にもどった。
「アハッ、胸に障るって言ったんだよ」
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「だれの胸に触るの……?」
「もちろん、飛瀬さんのだよ」
えぇ……私の胸に……そんな……ほかの女の子じゃないのは、うれしいけど……喫茶店でやってもいいのかな……ダメな気がする……そんなことしてる地球人のカップルは、見たことないから……でも、捨神くんが言ってるし……。
私はこっそりと、通信機のスイッチを入れた。
声帯のうごきを変換して、無言通話できる装置だ。
電波をジャックすれば、携帯電話にも割り込みできる。
だれがいいかな……常識のありそうな、ポーンさんにしよう……。
プルルル プルルル
《Guten Tag!!》
《もしもし、エリーちゃん……?》
《あら、Frauカンナですのね。なにか御用かしら?》
《あのね……捨神くんが、私の胸に触るって言うの……》
《Was!? 冗談ではありませんこと?》
あ、そっか……冗談かもしれないのか……うっかりした……。
通信を維持したまま、捨神くんに確認する。
「胸に触るって、冗談だよね……?」
「え? 冗談じゃないよ。本気だよ」
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………………
《もしもし……本気で触るって言ってる……》
《Oh mein Gott……ど、どこにいらっしゃるのですか?》
《校外の喫茶店……》
こういうことになるなら、市内にしておけばよかったかな……?
《喫茶店でハレンチなことをなさってはいけませんわ》
《喫茶店じゃなかったら、いいの……?》
《そ、そういう意味ではないのですが……公衆の場では、紳士的になさいませんと》
《そっか……了解……》
私は、捨神くんの目を見つめる。ほんとにカッコいい……なんだか吸い込まれそう……このひとが触りたいって言うなら、ちょっとくらい……ダメダメ、説得を試みる。
「捨神くん……紳士になって……」
「え? 僕は真摯だよ?」
そっか……捨神くんのなかでは、紳士的な態度なんだね……。
「できれば、もっとべつの場所で……」
捨神くんは、一段とマジメな顔つきになった。
「僕はね、ウソをつきたくないんだ。障るものは障るからね。きちんと伝えるよ」
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………………
《絶対触るって言ってる……どうしよう……》
《はわわ……Herrステガミが暴走なさっています。どうにかしませんと》
どうにかって言われても……うーん……なぜ捨神くんは暴走したのか……我慢の限界を超えてしまったから……? クールダウンさせてあげればいいのかな……ちょっとだけなら、いいよね……ちょっとだけ……3秒ルールで……。
「ちょ、ちょっとだけなら、いいよ……」
「え? ダメだよ。ちょっとだなんて。めちゃくちゃ障るかもしれないのに」
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………………
《鷲掴みされそう……エリーちゃん、助けて……》
《襲われているのですかッ!?》
《そうじゃないけど……めちゃくちゃ触るって言ってる……》
《ダメですわ! 断固として拒否! 意志の弱い女だと思われますわよ!》
そうだね……これからの夫婦生活でも、自己主張は大事……宇宙連合条約でも、女性の権利は、きちんと守られてる……夫婦間でも、ムリヤリ触るのは強制猥褻……。
飛瀬カンナ、きちんと自己を主張します……。
「捨神くん……私は、そんな弱い女じゃないよ……」
「弱いとか弱くないとか、そういうことじゃないよ。障るものは障るから。飛瀬さんは、無防備すぎるよ。わざわざ体に障るようなことしてるじゃない」
え……? 薄着なのがよくなかった……?
《なんだか、私が誘ったみたいなニュアンスなんだけど……》
《な、なにをなさっていたのですか? まさか、ブラジャーをつけていないとか……》
《つけてるから……ほんとだから……》
《胸もとが、みえているのではありませんこと?》
《大丈夫……ちゃんとぴったりの服……》
《でしたら、絶対に断ったほうがよろしくてよ》
私は深呼吸して、オレンジジュースを飲んだ。気合いを入れる。
「捨神くん、そういうのは、また今度にしようよ……将来のお楽しみ……」
「先送りは、ダメだよ。ベッドに横たわることになっちゃうよ?」
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………………
《このまま拒否し続けたら、なんかすごいことされそう……》
《Warte!! Warte!! Warte!! 今から駆けつけますわ!》
通話が切れた。エリーちゃんは、姫野先輩の家に居候していて……お金持ちだから、車で来るかな……? 私は時間を稼ぐ。
「捨神くん……どうしてそんなに興奮してるの……?」
「飛瀬さんが大好きだからだよ」
うッ……そう言われると、心が揺らぐ……。
「将来結婚するなら、こういうケアって、絶対に必要だと思うんだよね。おたがいに、体はとても大事なんだから。遠慮しないで、どんどん言ったほうがいいよ」
すごい積極的……捨神くんが、ケダモノになっちゃった……。
「必要なのは分かるけど、今じゃなくても……」
「体のことは、すぐに指摘しないとダメだよ。悪化したらどうするの?」
これ以上、捨神くんが悪化したら、押し倒されちゃう……ん? ちょっと、待って……もしかして、捨神くんのしたいことって……あ、そっか……。
「私の体のこと、心配してくれてる……?」
「もちろんだよ。さっきから、そう言ってるじゃないか」
なるほどね……ようやく分かった……私の勘違いだったみたい……捨神くんは、私の健康を気にしてたんだね……地球人は、パートナーにしてもらうこともあるらしいから……これで、全部つじつまが合う……問題は、してもらうかどうか……。
「捨神くん……私は毎晩、医療AIにチェックしてもらってる……」
「あ、そうなんだ。でも、見逃されちゃうこともない? 100%信頼できるの?」
見逃される心配……たしかに、ゼロとは言えない……。
「どうしても、気になる……?」
「もちろんだよ」
「そっか……じゃあ……」
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ピーポー ピーポー
「Was' passiert……なにが起きましたの?」
「乳ガンのチェックさせてあげたら、鼻血出して倒れちゃった……」




