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こちら、駒桜高校将棋部Outsiders  作者: 稲葉孝太郎
幕間 奥さまは宇宙人(2015年のいろいろな日付)
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151/715

139手目 ちょっとエッチな奥さま

 捨神すてがみくんとデート中……飛瀬とびせカンナです……。

 今日は、校外の喫茶店にやって来ました……中心部だと、知り合いに会う可能性が高いから……私たちがつきあっているのは、まだまだナイショ……宇宙人はシャイ……。

 私たちは、窓際に腰をおろしていた。捨神くんが、わざわざ予約してくれた席だ。こういうところで気配りができる捨神くんは、いい旦那さんになりそう……その奥様は私……奥様は宇宙人……今日もまた、異種族の愛が深まろうとしています……。

「飛瀬さんって、地球に来るまえは、どこにいたの?」

 捨神くんはコーヒーを飲みながら、そう質問してきた。最近の捨神くんは、私の過去を知りたいのか、こういう質問が多い。シャートフ星のこととか、宇宙探査局からの派遣先とか、いろいろとおしゃべりする。もちろん、機密事項は伏せておいた。

「地球に来るまえは、アレシアっていう星の調査……」

「地球に似てる?」

「全然……めちゃくちゃ寒かったし……息をすると肺が凍る……」

 捨神くんは、そっか、と言って、コーヒーカップを置いた。

 なんだかマジメな顔になる。

「胸にさわるから、気をつけてね」

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………

「え……今、なんて言った……?」

 捨神くんは、一瞬きょとんとしたあとで、いつもの笑顔にもどった。

「アハッ、胸に障るって言ったんだよ」

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………

「だれの胸にさわるの……?」

「もちろん、飛瀬さんのだよ」

 えぇ……私の胸に……そんな……ほかの女の子じゃないのは、うれしいけど……喫茶店でやってもいいのかな……ダメな気がする……そんなことしてる地球人のカップルは、見たことないから……でも、捨神くんが言ってるし……。

 私はこっそりと、通信機のスイッチを入れた。

 声帯のうごきを変換して、無言通話できる装置だ。

 電波をジャックすれば、携帯電話にも割り込みできる。

 だれがいいかな……常識のありそうな、ポーンさんにしよう……。


 プルルル プルルル

 

《Guten Tag!!》

《もしもし、エリーちゃん……?》

《あら、Frauカンナですのね。なにか御用かしら?》

《あのね……捨神くんが、私の胸に触るって言うの……》

《Was!? 冗談ではありませんこと?》


 あ、そっか……冗談かもしれないのか……うっかりした……。

 通信を維持したまま、捨神くんに確認する。

「胸に触るって、冗談だよね……?」

「え? 冗談じゃないよ。本気だよ」

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………


《もしもし……本気で触るって言ってる……》

《Oh mein Gott……ど、どこにいらっしゃるのですか?》

《校外の喫茶店……》


 こういうことになるなら、市内にしておけばよかったかな……?


《喫茶店でハレンチなことをなさってはいけませんわ》

《喫茶店じゃなかったら、いいの……?》

《そ、そういう意味ではないのですが……公衆の場では、紳士的になさいませんと》

《そっか……了解……》


 私は、捨神くんの目を見つめる。ほんとにカッコいい……なんだか吸い込まれそう……このひとが触りたいって言うなら、ちょっとくらい……ダメダメ、説得を試みる。

「捨神くん……紳士しんしになって……」

「え? 僕は真摯しんしだよ?」

 そっか……捨神くんのなかでは、紳士的な態度なんだね……。

「できれば、もっとべつの場所で……」

 捨神くんは、一段とマジメな顔つきになった。

「僕はね、ウソをつきたくないんだ。障るものは障るからね。きちんと伝えるよ」

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………


《絶対触るって言ってる……どうしよう……》

《はわわ……Herrステガミが暴走なさっています。どうにかしませんと》


 どうにかって言われても……うーん……なぜ捨神くんは暴走したのか……我慢の限界を超えてしまったから……? クールダウンさせてあげればいいのかな……ちょっとだけなら、いいよね……ちょっとだけ……3秒ルールで……。

「ちょ、ちょっとだけなら、いいよ……」

「え? ダメだよ。ちょっとだなんて。めちゃくちゃ障るかもしれないのに」

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………


鷲掴わしづかみされそう……エリーちゃん、助けて……》

《襲われているのですかッ!?》

《そうじゃないけど……めちゃくちゃ触るって言ってる……》

《ダメですわ! 断固として拒否! 意志の弱い女だと思われますわよ!》


 そうだね……これからの夫婦生活でも、自己主張は大事……宇宙連合条約でも、女性の権利は、きちんと守られてる……夫婦間でも、ムリヤリ触るのは強制猥褻……。

 飛瀬カンナ、きちんと自己を主張します……。

「捨神くん……私は、そんな弱い女じゃないよ……」

「弱いとか弱くないとか、そういうことじゃないよ。障るものは障るから。飛瀬さんは、無防備すぎるよ。わざわざ体に障るようなことしてるじゃない」

 え……? 薄着なのがよくなかった……?

 

《なんだか、私が誘ったみたいなニュアンスなんだけど……》

《な、なにをなさっていたのですか? まさか、ブラジャーをつけていないとか……》

《つけてるから……ほんとだから……》

《胸もとが、みえているのではありませんこと?》

《大丈夫……ちゃんとぴったりの服……》

《でしたら、絶対に断ったほうがよろしくてよ》


 私は深呼吸して、オレンジジュースを飲んだ。気合いを入れる。

「捨神くん、そういうのは、また今度にしようよ……将来のお楽しみ……」

「先送りは、ダメだよ。ベッドに横たわることになっちゃうよ?」

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………

 

《このまま拒否し続けたら、なんかすごいことされそう……》

《Warte!! Warte!! Warte!! 今から駆けつけますわ!》


 通話が切れた。エリーちゃんは、姫野ひめの先輩の家に居候いそうろうしていて……お金持ちだから、車で来るかな……? 私は時間を稼ぐ。

「捨神くん……どうしてそんなに興奮してるの……?」

「飛瀬さんが大好きだからだよ」

 うッ……そう言われると、心が揺らぐ……。

「将来結婚するなら、こういうケアって、絶対に必要だと思うんだよね。おたがいに、体はとても大事なんだから。遠慮しないで、どんどん言ったほうがいいよ」

 すごい積極的……捨神くんが、ケダモノになっちゃった……。

「必要なのは分かるけど、今じゃなくても……」

「体のことは、すぐに指摘しないとダメだよ。悪化したらどうするの?」

 これ以上、捨神くんが悪化したら、押し倒されちゃう……ん? ちょっと、待って……もしかして、捨神くんのしたいことって……あ、そっか……。

「私の体のこと、心配してくれてる……?」

「もちろんだよ。さっきから、そう言ってるじゃないか」

 なるほどね……ようやく分かった……私の勘違いだったみたい……捨神くんは、私の健康を気にしてたんだね……地球人は、パートナーにしてもらうこともあるらしいから……これで、全部つじつまが合う……問題は、してもらうかどうか……。

「捨神くん……私は毎晩、医療AIにチェックしてもらってる……」

「あ、そうなんだ。でも、見逃されちゃうこともない? 100%信頼できるの?」

 見逃される心配……たしかに、ゼロとは言えない……。

「どうしても、気になる……?」

「もちろんだよ」

「そっか……じゃあ……」

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………

 

 ピーポー ピーポー

 

「Was' passiert……なにが起きましたの?」

「乳ガンのチェックさせてあげたら、鼻血出して倒れちゃった……」

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