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こちら、駒桜高校将棋部Outsiders  作者: 稲葉孝太郎
第10局 熱血!春の団体戦(2日目・2015年5月17日日曜)
118/681

106手目 4回戦 飛瀬〔駒桜市立〕vs高崎〔藤花〕(1)

 オレの名前は高崎(たかさき)伊織(いおり)藤花(ふじはな)女学園の新1年生だ。よろしくな。


 さぁて、いよいよ4回戦。当たりは悪くないんだが……選りに選って、飛瀬(とびせ)先輩と当たるなんてな……このひと、自称宇宙人だろ? なんだかなぁ。

「飛瀬先輩?」

「はい……」

「先輩って、宇宙人なんですか?」

「あ、はい……」

「……」

「……」

 触れるのは、やめておこう。なんか、ヤバい気がする。

「準備のととのっていないところはありませんね? ……では始めてください」

「よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

 オレがチェスクロを押して、対局開始。

 ではでは……とりまの7六歩。

「8四歩……」

 ンー? 矢倉のお誘いか?

 最近、矢倉の先手番勝率が、だんだん下がってきてるからな。避けるぜ。

「2六歩」

「矢倉は拒否、と……じゃあ、こっちで……」


挿絵(By みてみん)


 角換わり。これなら受けて立つ。

 7八金、8五歩、7七角、3四歩、8八銀、7七角成、同銀、4二銀。

 普通の角換わりだ。

 3八銀、7二銀、4六歩、6四歩、4七銀、6三銀、9六歩、9四歩。

 端歩を突き合いまして……。

 6八玉、3三銀、5八金、4二玉、7九玉、5四銀、1六歩、1四歩。

 ウーン……おたがいに、指し手が速過ぎるな。

 もうちょっと、スローペースな試合運びのほうが、好み。

 バスケは激しいほうが、いいけど。

 3六歩、5二金、5六銀。

 ここで飛瀬先輩は、ようやく手を止めた。1分考えて、6筋に指を伸ばす。

「6五歩」


挿絵(By みてみん)


 フーン……攻撃的。嫌いじゃないね。

「こっちも、積極的に行かせていただきますよ。3七桂」

 3一玉、8八玉、2二玉。

 お互いに入城。ディフェンスが堅くなけりゃ、マトモに戦えない。

「4七金」

「4四歩……」

「2五歩」

「4三金右……」

 後手は6五歩と突いたから、7四歩とは、やりにくいはず。7三桂がなけりゃ、こっちが先攻できるって寸法。さて、どう攻めるか……ここで小考。

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………

 3八飛かね。4九角と打たれても、2八飛〜4八金で殺せる。2七角なら、3九飛と引いて無問題。4五歩、同歩、3五歩、同歩、4五銀、同銀、同桂を目指す。

「3八飛」

 今度は、飛瀬先輩が小考。4九角と打ってくれるくらい、弱けりゃいいんだけど。

「9二飛……」


挿絵(By みてみん)


 ん? なんだそりゃ? 8三角……は6二飛で、角の成り場所がないのか。

 このまま、4五歩と攻めるか? 4五歩、同歩、3五歩、同歩、4五銀、同銀、同桂、4四銀、3三歩……これは、完璧にハマってるな。こうは進まないだろう。気になるのは4五銀のときに、2九角くらいか? 5四銀、3八角成、4三銀成、同金、4五桂、4七馬、3三桂成、同桂……どっちが有利なのか、よく分からないな。

 ただ、上部に抜けられるか? 2五桂から3三玉で、捕まらない気がするな。それと、4五歩、同歩、3五歩、同歩、4五銀、2九角、5四銀、3八角成、4三銀成のとき、同金と取らないで、4七馬、3二成銀、同玉、4五桂、2九飛も気になる。


挿絵(By みてみん)


 (※図は高崎(たかさき)さんの脳内イメージです。)


 ……これは、さすがに後手が勝ってるか? 3三桂成、同桂に3四歩は詰めろじゃないから、6九銀と先に詰めろを掛けられて負けっぽい……いや、そうでもないか? 金銀を4枚もらってるから、6八金打で勝ちかもしれないな。6八金打……さすがに9五歩なんかしても、間に合わないだろう。

 ほかに手がなければ、4五歩で……ん? なんかイヤーな予感がするな。もう一回くらい読んでおくか。途中のパターンが多いし……4五歩、同歩、3五歩、同歩、4五銀までは一直線として、そこで2九角、5四銀、同歩と手をもどしたら、どうなる?

 

挿絵(By みてみん)


 (※図は高崎さんの脳内イメージです。)

 

 一番単純な変化が、頭から抜けてたな。ここで4五桂は、3八角成。さすがに不成立。一旦4八飛と寄って……3六銀。これがあったか。4五桂と跳ねられないし、同金、同歩は、4五桂、3七歩成、3三桂成、同桂のあと、継続手段が……あるか。銀3枚あるし、4三飛成と切ってもよさそうだ。同金、3四歩は、勝ちの感触があるぜ。

 だから、止めるなら露骨に止めるな……4七金か。3三桂成、同金寄、4七飛(さすがに切るだろ)、同角成で駒割りは……飛桂と銀の2枚変え。だいたい後手の桂得。ただ、9二の飛車は捕獲できる可能性もあるし、かなり際どい。むしろ、4七金じゃなくて、4四歩とガッチリ止めてくるか? 3三桂成、同桂……いや、これはない。3四歩、同金、6一角で困る。3三桂成、同……金上?

 

挿絵(By みてみん)


 (※図は高崎さんの脳内イメージです。)

 

 これでも先手がまだ攻めて行けそうだが……3七歩成が入ったら、じり貧か……。

 4五歩以下の攻めは、成立してない可能性もあるな。4回戦は天王山だし、ここは慎重に行ったほうが、いいだろう。攻め合いは、相手にチャンスを与えるきっかけにもなっちまう。ディフェンス重視。

「4八飛」


挿絵(By みてみん)


 もっと確実な攻め。2九角を消す。

「攻めて来ないんだ……」

 飛瀬先輩も、にわかに読み直し始めた。3五歩以下を読んでたんだろうな。

 オレも、続きを考える。

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………

「こうかな……4二飛……」

 また飛車の移動? これも、8三角は6二飛で、成る場所がない。

 4五歩で、どうなる? 4五歩、同歩、3五歩、同歩、4五銀、同銀、同桂。ここで、攻めて来るか止めて来るか。攻めて来るなら、3六歩と伸ばして来そうだ。が、これは、3三桂成、同金寄、5一角と突っ込んで、5二飛、3三角成、同金、3六金。


挿絵(By みてみん)


 (※図は高崎さんの脳内イメージです。)

 

 これで寄ってる気がする。大丈夫だろう。逆に4五桂を4四歩と止めて来るのは、とりあえず3三桂成と取っておいて、同金寄、3四歩、4三金寄(同金は6一角)……そこで2四歩か? 同歩、5一角が厳しい。飛車を逃げたら2四角成だが、逃げないのは4二角成、同金引、8二飛と下ろして、こっちが優勢。

 よし、攻めるぞ。

「4五歩ッ!」

「8二飛……」


挿絵(By みてみん)


「ッ!?」

 また避けた? さっきから、うろちょろしてんな。

「4四歩」

「同銀」

 チッ……4五銀と出られないじゃないか。

「2八飛」

 オレは、2筋に狙いを変更した。3三銀、4八金。

「一手動いてもらいますよ」

「うーん……動かせる駒が、ほとんどない……」

 飛瀬先輩は悩んでから、4二金引とした。2九飛(割り打ち防止)

 飛瀬先輩は4三金直。オレは2七飛。

「手待ち合戦になってきた……」

 4二金引。千日手になりそうだな……2八飛。

 飛瀬先輩は、ここでちょっと考える。

「6四角……」


挿絵(By みてみん)


 ん? 千日手を拒否した?

「積極的ですね」

「恋も将棋も、積極性が大切……」

 なんだ、そのコメント?

 まあ、こういう意味不明なのはおいといて……2六飛かね。2九飛は、3五歩で困る。

「2六飛」

 7四歩(この準備だったか)、1八香、7三桂。

「7五歩ッ!」


挿絵(By みてみん)


 ここが急所。同歩は論外だが、同角も先手有利。

 角のプレッシャーがなくなって、3五歩、同歩、4五銀、同銀、同桂がある。

 事前に教えてもらった飛瀬先輩の棋力からして、同角はありうる。

「これはいやらしい……一回味付け……8六歩……」

 同歩、9五歩。

 なに? 攻めて来た? これも味付けか?

 角筋が止まってるし、さすがに端攻めは成立しないだろう。

「同……」

 待て待て……端は、詰めさせるか。取ると、角筋が通ったときに危ない。

「失礼、7四歩」


挿絵(By みてみん)


 こっちのほうが単純だし、厳しい。

 飛瀬先輩は30秒ほど読み直して、7六歩と叩いてきた。

「同銀」

「9六歩……」

「先に桂馬をいただきますよッ! 7三歩成ッ!」

 ここで、飛瀬先輩が大長考。

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………

 3分経ったぞ?

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………

 5分経ったぞ。なんかあるのか? オレは、盤面を確認した。同角か8六飛しか、ないと思うんだが……もしかして、そこでオレに好手がある? オレも続きを読んだ。

「勝負所っぽいし……行くしかないか……」

 そう言って飛瀬先輩は、飛車を進めた。


挿絵(By みてみん)


 なんだ、普通の手じゃないか。オレは、8七金と上がった。

「9七歩成……」

「同香」

「同香成……」

「同桂」

 さあ、飛車を逃げな。

「8七飛成……」


挿絵(By みてみん)


「ッ!?」

 ひ、飛車を切っただとッ!?

「さすがに繋がらないでしょう」

「それは、指してみてのお楽しみ……」

 さっき長考してたのは、この飛車切りを考えてたのか……迂闊っていうか、こんなの事前に予想できないぞ。イレギュラーバウンドみたいなもんだ。

 とりあえず同銀だろ……それから……ンー、やっぱ、切れてないか?

 オレは丁寧に読んで、同銀とした。

 以下、8六歩、9六銀、9五歩、8五銀と、上部脱出の経路を作っていく。

「脱出されると困るから……8七金……」

 まあ、そうしてくるよな……7九玉と下がる。入玉は、チャンス待ち。

 飛瀬先輩は1分投入して、5五銀とぶつけた。


挿絵(By みてみん)


 ……どうみても、繋がってないんだよな。右が広いし。

 暴発か? それとも、想定されてた棋力より弱い?

「6五銀」

 攻め駒を攻める。基本だな。

 ここで飛瀬先輩は、また長考。

 

 さあさあ、さすがに切れてるでしょ。7三角とでも、してくださいな。

※ここからは、高崎たかさきさん視点です。

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