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第十五章『密かなる計画』

シンの要望によりチア、セイ、アスターの三人は部屋から退室していた。この軽率とも言える行動には理由がある。


「いなくなれ、いなくなれ」


「いなくなったところでシンは戻ってくるわ。あいつの世界では盗人は汚名になるようだからね」


「お姉さまぁああ」


セイの気持ちとは裏腹にチアとアスターは勝手にシンが帰ることも考えていた。その上でこの行動を取ったのはシンが二度目にこの城に来たことが大きいからだ。


「でも、お姉さま? 本当に異世界なんてものを信用するんですか?」


「セイも分かっているはず。この土地は我々の種族しか住めぬ理由を」


「確かにこの土地は他の種族では術すらうまくコントロールできないですけど」


「…………それを知っているのか、シン様は高度な移転術を瞬時に行っております。長い時間を掛けてそれを行うなら可能性がありますが、我々に気付かれずこの土地に滞在するなど無理かと」


「アスターまでぇ」


「それを可能にしているのがシンの住む世界での力なのか」


「そんな楽しそうに言われても……」


「そう落ち込むなセイ。夫というのはあの場での方便みたいなものよ」


「え!?」


これにセイは心底驚いた様子で、期待溢れる瞳をチアに向ける。


「『王の杮』の存在だけではこの城に侵入するものは少なくなった。だが、プレッツァの名を広めればどうなる?」


「ええと、侵入者が増えます、よね。だって絶滅に近い種族は大勢いますし」


「…………チア様」


「待て、アスター他にも理由がある。ただ、娯楽の為に他の種族を集めるわけじゃない。その中に強者もいるはず」


「え、そうですか? 他種に滅ぼされる種族ですよ」


「…………多勢に無勢でしょうか」


「そういうこと。元々、少数しか生まれ得ない種族がいくら力を付けても滅ぼされる種はある。我が種族と違ってな」


「…………それがどのような理由に?」


「その種族と我が種族の男どもを戦わせて強き者がいるか確かめる。そこまでして、退屈な日々が続くならば私も結婚を考えるしかない」


「…………私も微力ながらお手伝いさせていただきます」


「アスターって意外に現金ね。でも、結婚して退屈だったらどうするんですか?」


シンの存在よりも姉が他人に渡るのを嫉妬するようにセイは言った。


そして、それにはアスターが答える。


「…………赤子を授かればその心配はございません」


「目が笑ってないのよ、アスター。でも、お姉さまの子供なら見てみたいかも」


もう決まったことのように、セイはシンの存在がただの道具でしかないように経過を見守ることを決め、アスターはあくまでチアが決めたことを従順に、そして種族繁栄のために行動する。


だが、その二人の胸中とは別にチアは娯楽だと決めつけていた。


暇つぶしの為にシンを利用するのは変わらない。変わるのは侵入者の中にいる強者と戦う者がチア自身ということだ。紛れる雑魚をその男どもに相手をさせる。それ以外はこの退屈な時間を潰すためでしかない。


そして、またこの存在も。


「話が反れるが狼の方はどうなっているの?」


各々がシンの存在価値を決めつけ、次の話題に素直に移行する。


「…………現在部下たちの数名が追ってはいるのですが、いまだに本体を見つけられておりません」


「ああ、狼ね。そういえば、まだ見つかっていないのね」


「千古狼の名は伊達じゃないということか……」


「千古狼ですか? あれって少し前に絶滅したはずじゃあ?」


「遥か昔でなければ生き残りがいる可能性はあるはず。その生き残りがこの世界で生きるため『王の杮』を狙ってきたとも考えられる」


「まぁ、確かに『王の杮』があれば一国ぐらい築けるかも」


「…………しかし、その本体すら見つけられないとは」


「この土地からは簡単には出られないわよ」


「しかし、狼は鼻が利――――!?」


チアが何かに気付くのとほぼ同時、


「…………侵入者です」


アスターが異変を口にする。


次いでコンマの差でセイが気づく。


「確か部下は出払っているのよね。じゃあ、私たちが行かないと」


「…………申し訳ございません、セイ様」


「そんなこと、どうでもいい。お前たちは城の中を探せ」


「お姉さまも行くんですか?」


「今、この城にはシンがいる」


「あ」


「…………」


三人がそれぞれ移動し始め、チアの密かな計画がまた少し動き始めた。


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