第3話
一度会っただけなのに、なんでずっと頭にいるのだろうか。
園児と遊ぶ事を忘れて彼女の事が頭を過ぎる。
「先生?どーしたの?」
「あっ、なんでもないよ。向こうで遊ぼっか」
「うん!!」
園児たちが僕の手を引っ張ってくれる。
彼女の事は…忘れた方がいいかもしれない。
園児たちが帰った後、いつも通り掃除をしていた。窓に目をやったが、当たり前だ。もう彼女はそこにはいない。
何考えているんだと、恥ずかしくなった。
好きとかそういう感情じゃない。
よく分からないけど…僕はまた彼女と会う予感がした。
雨が降ったら、会えるかもしれない。
職員室でシャーペンをクルクル回していた。
「浅宮先生、何かお悩みでも?」
真嶋先生がお茶を出してくれた。
「ありがとうございます…」
ちょうどその時、大荷物を抱えた沢時先生が廊下を歩いているのが見えた。
「あっ、僕も手伝います!」
急いで沢時先生の元へ向かった。今の状況からの言い逃れかもしれない。
「大丈夫?俺が持つから」
「…本当に浅宮先生は優しいですよね。園児にはもちろん、お母さん方にも人気ありますから」
「え?そ、そうかな…」
僕は荷物を抱え、スタスタと歩いた。
考えたこともなかった。自分の性格なんて。だから周りの言ってることをただ鵜呑みにしているだけだ。爽やかとか、優しいとか…自分じゃ意外にも分からないものだ。
だけどそう言われるとやっぱり照れる。
「褒められて、照れてるんですか?」
「そ、そんなんじゃないし…」
「浅宮先生カワイーっ」
スキップして行ってしまった。
おちょくってんのか?
女は怖い。すぐに見抜かれる。
荷物のダンボールには"衣装"と書かれていた。
もうすぐお遊戯会か…