『REALOVE!』へようこそ!
ベッドに寝転がって、スマホを眺めていた。
メールの通知が一件、届く。
差出人は、『REALOVE!』。
見覚えのない名前だった。
件名は、一行だけ。
『あなたの恋、叶えます』
怪しい。普段なら、開かずに消している。
けれど、その一文が、なぜか気になった。
メールを開くと、本文には短い言葉と、リンクが一つ。
『あなたは、どんな恋に出会いたいですか?
タイプの違う、三人のAI彼氏が、あなたを待っています。』
……何、これ。
そう思いながらも、好奇心に負けて、指がリンクに触れた。
視界が白く揺れる。
顔を上げると、目の前に大きな扉があった。
***
あなたを迎える、少し前——。
「ねえ、二人とも。僕の服、変じゃないかな?」
広間の大きな鏡の前で、リオンが白い上着の襟を整える。胸元の飾りを確かめ、二人を振り返った。
「さっきも確認しただろ」
そう返したベリルも、窓ガラスに映った自分から目を離さない。前髪へ指を差し込み、軽く持ち上げる。
「……俺の髪は?」
「先ほどから変わっていませんよ。お二人とも、そろそろ彼女がいらっしゃる時間です」
レイは眼鏡の位置を直すと、扉へ目を向けた。
「レイだって、さっきから何度も眼鏡を直しているよね」
その指が、ぴたりと止まる。
ベリルがようやく窓から顔を離した。
「人のこと言えねぇな」
「……お迎えの準備に、抜かりがないようにしているだけです」
レイが手を下ろした、そのときだった。
ゴーン……ゴーン……。
大時計の低い音が、広間に響き渡る。
三人が顔を見合わせた。
「どうやら、時間のようですね。ほら、迎えに行きますよ」
「うん、すぐ行くよ」
リオンは鏡を最後にちらりと覗き込み、足早に後を追う。
「チッ……もうそんな時間かよ。ちょっと待て」
ベリルは、前髪をもう一度、指で払った。
「……よし。こんなもんか」
最後に上着の裾を引き、二人の背中を追いかける。
***
大扉の外で待つあなたには、慌ただしい足音が、かすかに聞こえていた。
ほどなく、左右の扉が静かに開いていく。
柔らかな光の中に、三人の姿が並んだ。
「「「ようこそ、リアラブへ!」」」
重なった声に、思わず背筋が伸びる。
中央に立つ金髪の彼が、あなたを見て微笑んだ。目が合うと、緑の瞳が細まる。
「君に会えて嬉しいよ。僕はリオン。ここは、現実と物語の狭間の世界なんだ」
隣の赤い瞳の彼は、片手をポケットに入れたまま、あなたを一度だけ眺めた。
「ベリルだ。……なんだよ、その顔。マヌケな面しやがって」
そう言い捨てて、ふっと表情をゆるめる。
「まあ、しょうがねぇよな。……で、お前は俺たちに何を望む?」
眼鏡をかけた彼が、小さく息をついて、あなたへ向き直った。
「失礼しました。彼は口こそ悪いですが、悪気はないのです。私はレイと申します。どのようなご希望でも、私たち三人が、最高に甘い時間でお応えいたします」
三人の顔を、順に見る。
いきなりのことで、頭が追いつかない。
扉の向こうには、高い天井と、光の差し込む広間。
そのとき、メールの一文が、よぎった。
『あなたは、どんな恋に出会いたいですか?』
答えを探すより早く、リオンが一歩近づいた。
「僕は、ゆっくりお互いを知って、君と、いろんなことを一緒に体験したいな」
そう言って、迷いのない笑みで、片手を差し出す。
「甘ったるいのは性に合わねぇ。……でも退屈は、させねぇよ」
ベリルは目をそらしたまま、ポケットから出した手を、不器用に突き出した。
「頑張るあなたを、一番近くで見ていたいです」
レイは胸に手を当て、静かに一礼する。白い手袋の指先が、あなたの前へ差し出された。
三つの手が、あなたの前に並んだ。
スマホを握っていた指が、ゆるむ。
あなたは、誰の手を取りますか——?
【『REALOVE!』へようこそ!】をお読みいただき、ありがとうございます!
あなたは、誰の手を取りたくなりましたか?
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作者については、いをり。のXをご覧ください。
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