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悪の組織に、最強幼馴染が押し掛けてきた件

はじめまして。

カクヨムで掲載始めた小説をなろうのほうでも掲載しようと思います。

2/23中にカクヨム投稿分までこちらにも連続投稿します。

よろしければぜひご覧ください。

僕がこの窓から外を眺めるだけの生活を始めて、10年が経った。

名前はユーリ。今年で十六歳になる。


10年前はよくわかっていなかったが、どうやら父上が政争に負けた結果、跡継ぎの僕はここに幽閉されることになったようだ。ご丁寧に『出でずの呪い』ってのもかけたうえでね。


試しに、ひどく青白い手指を窓から外に突き出してみる。

窓枠から外に出たとたん、指先に強い痛みが走った。黒々としたやけど跡が、稲妻のように心臓めがけて進む。

すぐに手を戻すと、痛みは引いた。


「まったく、こんな世界はすぐにでも壊してしまいたいよ」

とはいったものの、すぐに思い直す。世話人のばあやや庭師のおじいなど、身近な人たちは幸せに生きてほしいから。誰にともなく、言い訳をした。


10年間できることといえば、この安楽椅子に座り部屋にある書籍を読み漁るだけ。軍学、政治書、娯楽小説――片っ端から読んだ。

昔は父の派閥の人たちが隠れて様子を見に来てくれていたが、今では誰も訪ねてこない。友達と最後に遊んだのだって幽閉される前だから、もうほとんど記憶のかなただった。


端的に言って、今この状況にひどく飽きていた。変化に飢えていたんだ。


そんなとき、ふと手に取った子供向けの娯楽小説があった。悪の組織が社会を壊そうとし、正義の味方がそれを打倒する話。

面白いことに、その悪の組織には一つの美学があった。正義で裁けない真の悪を裁くこと。


僕はその悪の美学に、めちゃくちゃしびれていた。

外に出られたら、こんな風に戦ってみたい。

まあ、そんな日は永遠に来ないんだろうけど。


――そう思っていた。あの日、彼女が現れるまでは。


「ユーリぼっちゃま、お友達がいらっしゃっております」

「ばあやいつになったらぼっちゃま呼び卒業してくれるのさ。。それにしても友達ってだれ?」

「私も分かりません。それにぼっちゃまはいつまでもぼっちゃまです」

「分かった分かった。どうせ暇だし、ここまで連れてきてよ」

「分かりました。すぐに。」

友達って誰だろ。さすがに危険はないと思うんだけどな、、

怖くなってきたかも、、、

「お久しぶりです。」

そこには腰まで流れる美しい銀髪を束ねポニーテールにした女性がいた。

僕がその姿に気づくと、まるで王に相対したかのように、跪いた。

長くすらりとしたその白磁のような手足と、洗練された所作に目を奪われ、

いきなり跪くその女性になんて声をかければいいのか分からなくなってしまった。

「ゴホン!お茶を持ってまいります。」となりでニヤニヤとわざとらしい咳ばらいをするばあやに助けられた。

「ま、まあそんなかしこまらなくてもいいんでそっちに座ってよ」

「はっ」

「ところでそのー久しぶりだねどちらさまでしたっけ、、?」

「覚えておられないのも当然です。私は10年前にあなたに倉庫街で助けられ、おっお友達にしていただいたものです」

「あーあの時の!マリーダさんだよね?」

思い出した彼女は幽閉される前に最後に遊んだ友達だ。

確か町はずれの倉庫街で、かくれんぼしてたら迷子になっていた彼女を助けたんだっけ。

あの時も悪の首領ごっこやってたよなあ懐かしい。

そういえばさっきなんか跪いてたし、あの時のごっこ遊びまだやってくれるのかな?

試してみるか、、

「修業は終わったのか?」

「はい貴方のために剣を磨いてきました」

おお!すごく乗ってくれる孤高の女騎士役。最高。

「それで今日はどうしてここに?」

「はっあの時のお約束を果たすため参りました。」

なんだっけ約束って?また遊ぼうみたいなことは言ったような気がするけど。

「あの日の続きをするってこと?」

「はい。あの日の続きをします。」

「分かった。また悪の組織をやりたくってさ」

あの子供向け娯楽小説が乗ったデスクを指さして、僕はそう言った。

「遊びでもいいから、手伝ってよ」

窓の外で雷が鳴る――春雷、目覚めの音が響いた。

「わが命、わが剣にかけて、主命頂戴いたしました」


私は興奮に打ち震えていた。

ついに、仕えるべき主から主命をいただいたのだ。


「悪の組織をやりたくってさ――(ガシャーン)――手伝ってよ」


いいところで雷がうるさかったが、10年待ちわびた言葉を受け取った。

主はあの時、机を指さしていた。机の上には子供向けの本が置かれていたが、その下に新聞が見えた。王国の腐敗を伝えるスクープが載っている号だ。


正義で裁けない真の悪を裁くこと――


あの日から、我が主はその牙を研ぎ続けていたのだ。

喜びを隠しきれず、ニヤニヤとだらしのない笑みを浮かべて、私は館を後にした。

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