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けっして笹門 優にツッコミ感想をつけられてはいけない部屋

 親友の美沙が一日だけマンションの部屋を留守にするというので、私が留守番をすることになった。

 留守番とはいっても、じつはお願いしたのは私のほうだ。彼女の豪華なマンションの部屋にぜひとも住んでみたかったのだ。


「置いてあるものは動かさないでね。ゲーム機は好きに使っていいわよ。蛇口も好きにひねってね。猫とも好きに遊んで。スマホも見ていいし、オ・ナラもしていいわよ。カブトムシを放たれるのは困るけど、鏡は見ていいわよ」

 私を連れて、美沙は部屋の中を案内してくれた。


 お洒落なリビングには美沙のノートパソコンが置いてあった。私はそれを発見するなり思いついたことを口にした。


「あっ! ねぇねぇ、美沙のアカウント使って『小説家になりお』で小説書いていい?」


「いいけど……」

 美沙はうなずきながら、ひとつだけ注意をした。

笹門ささかど ゆうにツッコミ感想だけはつけられないでね」


「笹門 優!? ……誰!?」


「いつも私の小説に感想をくださるおじさまよ。書いてるのが私じゃないってバレて、ツッコまれたら、垢Banもあり得るわ」

「証拠がないよ! バレないって!」


「何よりね、噂があるの」

 美沙は明らかに私を脅す口調で、言った。

「笹門 優にツッコミ感想をつけられたら、地獄に落ちるんだって。現に彼にツッコミを入れられた何人ものなりお作家さんが、原因不明の退会をしているわ」


「そんな都市伝説が……」

 私は生唾を飲み込んだ。


「だから私はいつも、彼にツッコミを入れられないよう、神経を張り巡らせて作品を仕上げているの。私の作品に隙がないのは彼のおかげよ」


 甘く見ていた。


 美沙のアカウントなら、テキトーにつまらないことを書いて楽しめるだろうと思っていたのに……


 笹門 優にツッコミを入れられたら終わりだなんて! 私は気を引き締めた。


「それじゃお留守番、お願いね」


 美沙はまるで海外旅行にでも行くみたいな大荷物を身の回りに出現させると、部屋をすうっと出ていった。





 私は美沙のノートパソコンに向かい、短編小説を書きはじめた。


 本気120%で書いた。

 練りに練りまくった婚約破棄モノだ。

 コメディー要素のまったくない、矛盾したところのひとつもない、これにツッコミ感想などつくはずもないというようなものを──

 そして投稿した。

 さぁ、来るなら来てみろ、笹門 優!

 ツッコミどころなどひとつもない自信があるぞ!


 するとすぐに感想がついた。


 感想をくれたひとの名前は笹門 優だった。


 その感想を読み、私はあっと声をあげた。


 感想は王子が悪役令嬢に言った台詞『何を言う!』に向けてただ一言、次のように述べられていた。



 【感想】

  >何を言う!


  笹門 優!www



 ツッコまれてしまった……。

 まさかこんなツッコミかたがあるなんて……。『早見優!』みたいな……

 私は笹門 優を舐めていた。


 どうなるの……?

 私、どうなっちゃうの?

 床が割れて、地獄へ引きずり込まれる?

 ドキドキしながら待っていたが、何も起きなかった。


 あれはツッコミではなくボケだったのだろうか? だから、問題なかったのだろうか? それとも……


 あっ!?


 これは美沙のアカウントだから──

 もしかして、地獄に引きずり込まれたのは、美沙のほう!?

 慌てて美沙に電話をしたが、出なかった。

 美沙! 美沙! 無事!?







 やはり美沙は地獄に落ちていた。


 次の日、旅行先の別府温泉から連絡があったのだ。美沙からだ。


「今から帰るね。地獄巡り、凄く気持ちよかったよ〜(*^^*)」






  ※別府温泉の醍醐味といえば、やはり七つの『地獄湯』を巡る『地獄巡り』ですよね!




 

いつも楽しい感想を、時には的確なツッコミをくださる笹門 優さまに感謝を申し上げます(•ᵕᴗᵕ•)⁾⁾ぺこ


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― 新着の感想 ―
なるほど、そっちの地獄ですか。 それなら登別地獄谷という手もありますね。 神戸市須磨区多井畑地獄谷や京都市左京区一乗寺地獄谷など、意外と「地獄」は現世の日本国内に沢山あるようです。
身構えて読んだら、ほのぼのだった(^^)
ふっ……。 残念ながら本人認定をしてしまったようだな、そちらのワタシよ。そんな事ではこのセキュリティ溢れる世界で生きていけないぞ。
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