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第六話 後輩はかわいいもの


 ノアリス女学園、騎士学科生徒――フェリシア・エルダンは、森の木陰で深く深く、息を吐いた。

 森の中、日差しはまだ残っているが、放課後の時間は静かに過ぎていく。

 

 エマ先生のために、補習になった後輩を「一日で全員合格させてみせます!」と言ったフェリシアだが、すでに「不安」の二文字が頭を占領していた。

 何故なら、補習に呼ばれているはずの後輩たちが、まだ一人も現れていないからだ。

 

 隣にいるフェランディ先生も、オリビアも、そして使い魔のマレも、揃って頭を抱えている。

 

 オリビアが補習について来ると言った時は、びっくりした。

 補習のことを伝えるなり「また、フェリシアに任せて、帰りが遅くなるのは、心配ですから」と敬語(キレ気味)で言われ、怖いから置いて行くなんて出来なかった。

 マレは「フェリシア様もオリビア様も行かれるなら、このマレも使い魔としてお供しますっ!」と目を輝かせて言われ、こちらも置いて行くなんて出来なかった。

 フェランディ先生は、何故か飼い主募集中のポスターのことを知っていた。フェリシアが作ったことまで……。そして何故かマレを見るなり、深いため息をついた。

 

「フェランディ先生、昨日は聞きそびれましたが、後輩ちゃんって……何人来る予定ですか?」

 フェリシアは、肩で息をしながら尋ねた。

 するとフェランディ先生は、無言で名簿を渡してきた。それをオリビアとマレと共に覗き込む。


〈高等科二年 魔法戦闘学 前期補習対象生徒名簿〉

Ⅱ C イレーネ・ドゥヴァル 真面目 属性水・氷

ⅣC ミレーナ・ドゥヴァル すぐ寝る 属性水・氷

ⅣC ヴィヴィアン・ボネット うるさい 属性炎・風

ⅣC リリア・マルシェ 対人恐怖症 属性土・風

ⅣC シャーロット・ラモン 気だるげな皮肉屋 属性風・雷


 現ノアリス女学園の騎士学科、高等科二年のクラスは四クラスだ。

 クラスの分け方は、成績順。

 成績が高い方から、Ⅰ C、ⅡC、ⅢC、ⅣC。

 補習に来るのは全員 ⅣCの生徒だと思っていたので、ⅡCの生徒がいるのに驚いた。


「五人……かぁ」

 フェリシアが顔を歪めて、そう呟く。

「五人……」

 オリビアも小さく息を吐く。

(五人もいるのに……誰も来ないんだぁ。五人もいるのに…………)


「フェランディ先生」

 オリビアが名簿に目を落としたまま、口を開いた。

「イレーネ・ドゥヴァルさんと、ミレーナ・ドゥヴァルさんは双子ですか?」

「ああ」

 オリビアは「フェランディ先生に必要以上に関わるな」という暗黙の了解を今まで守っていたし、フェランディ先生が恐ろしいという噂を信じていた。だから、オリビアの方からフェランディ先生に話しかけるなんて、意外だった。

 

「フェランディ先生、私も一つ聞いても、いいですか……」

「なんだ」

「この書き込みはフェランディ先生が?」

 フェリシアは、真面目、すぐ寝る、うるさい、対人恐怖症、気だるげな皮肉屋の文字をなぞった。

「そうだが」

「…………」

 以前、フェランディ先生にレポート添削をしてもらった時の字と同じ癖。

 間違いなく、フェランディ先生が書いたものだ。

 しかしそれを疑うほど、フェランディ先生がこういった書き込みをするのが意外だった。

 真面目、すぐ寝る、うるさい、対人恐怖症、気だるげな皮肉屋……。

 一応恩師にあたる教師の書き込みを見て、フェリシアは頭を抱えるしかなかった。

「今のところ、この人にしか好感が持てないんですけど……」

 フェリシアは「Ⅱ C イレーネ・ドゥヴァル 真面目」の文字を指す。

「…………」

 フェリシアの一言に、その場にいた全員が言葉を失った。


 心の中で、まだ見ぬ後輩五人が揃うまでの展開を思い描いた瞬間、戦慄が走った。

 木々の間に残る影が、後輩たちの到着を待っているかのようだ。

 しかし――誰も現れない。

「問題児って言ってたけど、ここまでなんて聞いてない……」

 フェリシアは眉を寄せ、手元の剣の鞘を軽く叩いた。剣に魔力を注ぐ感覚を確かめながらも、やはり不安は消えない。


 マレが猫らしく「ニャ……」と鳴いた。

「うん……マレも不安だよね」

 フェリシアはマレを撫でる。

 マレはそれに応えるように、少しだけ尻尾を立てた。


 そのとき、森の奥から、二つの魔力の気配を感じた。


「ひゃっほー!!」


 続く足音。木の枝を踏む音が、一定せず跳ねる。


 オリビアは「……あの声は?」眉をひそめる。

 そう言ったオリビア横で「まさか、後輩ちゃんじゃ…………」とフェリシアが呟く。


 数秒後、一人の少女が木々の間から飛び出してきた。

 少女一は、快活に笑いながら、大きく口を開く。

「ヴィヴィアン・ボネットここにさんじょぉぉぉおう!!」

 フェリシアは、名簿に目を落とす。

 ⅣC ヴィヴィアン・ボネット うるさい

(うん……確かに、うるさい)

「おぉーおぉー、フェリシア先輩になんとか先輩!!その魔力只者じゃあないな!!ふぁあっはー!!!」

 オリビアはなんとか先輩と呼ばれ、少しムッとした。

 少女一改め――ヴィヴィアン・ボネットは「うおぉぉぉぉおう!補習だぁぁぁあ!!」と言いながら、走り回っている。

 そんなヴィヴィアンに「オリビアです」という声は届かなかった。

 

 短く切りそろえられた赤髪が、風を受けて揺らぐ。緑色の目はキラキラと輝いている。顔立ちも体型も中性的。性格も相まって、少年のように見える。ここがノアリス女学園でなかったら、性別を勘違いしていたかもしれない。


 少女二の気配は、最初に感じた場所から動いていない。


「フェランディ先生、あの魔力の気配は誰ですか?」

 フェリシアは、名簿をフェランディ先生に向ける。

 フェランディ先生は、無言のまま五人のうち一人を指す。

「……了解しました」

 フェリシアは魔力のする方に歩き出した。

 オリビアの「ヴィヴィアンさん、口を閉ざして、そこに座ってください」という声を背肩に……。

 その声はもちろんヴィヴィアンの耳には届いていなかった。


 * * *


「うぅぅ……」

 対人恐怖症のリリア・マルシェは、木の陰にうずくまっていた。

 顔は真っ赤、指先はぎゅっと握りしめ、肩はぷるぷると震えている。

 何がそんなに怖いのかと言えば――補習の手伝いに来たフェリシア先輩だ。


 まだ声をかけられたわけではない。

 森の少し離れた場所で、フェリシア先輩たちが「名簿」なるものを覗き込み、何やら話しているのが見えただけ。

 それだけなのに、リリアの頭の中はもうパニックだった。

(わ、わたし……なんて書かれてるんだろう…………)

 リリアに吐き気と目眩が襲う。

 

「うぅ……むりぃ……やっぱり帰りたい……でもヴィヴィアンが……ヴィヴィアンが行くって言ったから……」

 そう、彼女がここに来たのは――幼なじみのヴィヴィアン・ボネットに引きずられてきたからだ。


 * * *


 今日の放課後、掃除当番を終えた教室。

 夕日が差し込む窓辺で、モップを片手にヴィヴィアンが高らかに宣言した。


「よーしっ!これで教室ピカピカ!完璧だ!!」

「ま、まだ……廊下が終わってないよ……」

「大丈夫大丈夫!風通せば乾くって!さ、行こうリリア!」


 それが、すべての始まりだった。


 ヴィヴィアンはとにかく元気で、怖いもの知らず。先生に怒られても笑ってごまかすし、上級生にもタメ口だ。

 一方、リリアはと言えば、クラスメイトの視線を浴びるだけで心拍数が跳ね上がるタイプだ。

 そんな二人がどうして仲良くなったのか――それは小学部の頃。入学初日の出来事だった。


「わっ、大丈夫!?」

 廊下で荷物をぶちまけて泣きそうになっていたリリアに、手を差し伸べたのがヴィヴィアンだった。

 それ以来、ヴィヴィアンはリリアの唯一の「安全圏」となった。


 でも、その「安全圏」が、たまに暴走する。

 今日もその一例だ。


「ヴィヴィアン、ほんとに……行くの?」

「当たり前だろ!補習だよ補習!!行かなきゃダメだろ!!」

「うぅ……それは確かに」

 リリアが「フェランディ先生が怖いからサボろう」と言っても首を横に振られてしまった。

 ヴィヴィアン昔からは変なところで真面目なんだ。


「それに!」

「そ、それに?」

 恐る恐る聞くリリアに、ヴィヴィアンはにやりと笑う。

「補習の助っ人であのフェリシア先輩が来るらしい!!フェリシア先輩って優しいらしいし、あたしたちが真面目にやればすぐ終わるって!」

「ま、真面目に……」

 そもそも、本当の真面目は単位を落として補習になったりしない。

 だからこそ、リリアはヴィヴィアンのことを「変なところで真面目」と定義しているのだ。

 フェリシア先輩――その人噂は、よく耳にする。

 光属性を上級魔法まで扱える学園の有名人。

 きっとこの学園で、フェリシア・エルダンの名前を知らない人はいないだろう。彼女は騎士学科の生徒であることから、いずれ勇者になるのでは、と噂されている。

(な、なんで、そんなすごい人が、わたしたちの補習に……)


 掃除が長引いたせいで、他の補習対象の生徒はすでに森に向かったあとだと思う。

 リリアは遅れて注目を浴びるぐらいなら、本当はサボりたかった。それでも、リリアは彼女の後ろをついて行った。

 ――ヴィヴィアンがいるなら大丈夫、と思って。

 二人で駆け足で来たものの、途中で鳥に驚いて転び、さらに道を間違え、ようやく森の入り口までたどり着いた――まではよかった。


 けれど。


「ヴィ、ヴィヴィアン……まってぇぇぇ……!」

「大丈夫!先に様子見てくるから!!」


 そう言い残し、ヴィヴィアンは飛び出していったのだ。

 結果――リリアは、木陰でひとり取り残された。


 * * *


「ヴィヴィアンのばかぁぁぁ……置いてくなんてぇぇぇ……!」

 木の根っこに額を押しつけながら、リリアは涙目でぶつぶつ文句を言う。

 それでも、森の奥から聞こえる賑やかな声を聞けば、ヴィヴィアンがいるとわかるから少し安心する。


 ……でも、怖い。

 知らない人がたくさんいる。

 しかも、補習ってことはフェランディ先生もいる。叱られるかもしれない。

 怖い。

 もし失敗したら……。フェリシア先輩に笑われるかもしれない。

 怖い。

 リリアは、胸のあたりがぎゅっと縮まるのがわかった。


「帰りたい……ヴィヴィアン迎えに来てくれないかなぁ…………」


 森の風が頬を撫でた。木漏れ日がまぶしい。

 リリアは、そんな中で自分の膝を抱きしめたまま、小さな声で歌を口ずさんでいた。

 緊張しているとき、いつも歌う癖がある。幼いころ、ヴィヴィアンと一緒に作った、二人だけの歌だ。


 ――「ふたりでいれば、こわくない」


 小さな旋律を鼻歌でつむぎながら、リリアは涙をこぼした。

 でも、やっぱり。怖い。

 そのとき――カサ……と、木の葉が揺れた。

 誰かが近づいてくる気配がする。


「っ!や、やだ……だれか来たぁ…………あうぅぅ」

 リリアは条件反射で、枝葉の間に顔を隠した。

 背中を木にぴたりと押しつけ、目をぎゅっと閉じる。


 足音が、ゆっくりと近づいてくる。

 静かな声が、耳に届いた。


「……リリア・マルシェちゃん、だよね?」


 その声は、やさしく――けれどしっかりとした響きを持っていた。

 リリアの心臓が、どくん、と大きく跳ねた。


 顔を上げると、木漏れ日の中に立っていたのは――金髪の綺麗な人。

 ノアリス女学園で、金髪の人と言ったら考えられるのは、ただ一人。

 フェリシア・エルダン先輩だ。

 彼女はまっすぐにリリアを見つめ、少し困ったように微笑んでいた。


 * * *


 森の奥、風が木々を揺らすたび、どこかで誰かの足音が止まった。

 フェリシアが振り向くと、枝葉の間から、少女が顔をのぞかせている。

 小柄で、茶色の髪を緩く二つに結んでいる。緑色の目には涙が滲んでいた。


「……リリア・マルシェちゃん、だよね?」

 声をかけると、少女――リリアはびくりと肩を跳ねさせた。

 まるで「はい捕まえました」と言われた小動物のように、そろそろと下を向く。そんなリリアに、フェリシアは穏やかな笑みを崩さず、数歩だけ距離を詰める。


「ごめんね、驚かせた?私はフェリシア・エルダン。補習のことで探してたんだ」

 リリアは一瞬きょとんとした顔をして、すぐに慌ててぺこりと頭を下げた。

「……す、すみません。わたし……わたしたち、掃除当番で…………」

「“わたしたち”って、ヴィヴィアンちゃんのこと?」

「……は、はい」

 

 フェリシアの顔が明るくなる。

 後輩二人は、きちんとした事情があって遅れただけ。つまりやる気がないわけじゃない。

 もしかしたら、残り三人も事情があるのではないか。

 そんな僅かな期待が胸に芽生えた。

 

「それじゃあ、リリアちゃん行こ――」

 そう言いかけて、フェリシアはふと気づく。

 リリアの手が小刻みに震えていた。

 

「もしかして……怖い?」

 フェリシアがそう問いかけると、リリアは目を泳がせて気まずそうに口を開く。

「……こ、怖い、です…………」

 フェリシアは「そっかぁ〜」と妙に納得したように頷くと、リリアの隣に腰を下ろした。

「怒らないん、ですか?」

「なんで怒るの?」

「だって、わたし……こんなっ、ですし。せっかく、来てくれた、のに……」

 リリアはボソッとそう呟いて、プルプルの震える。

「リリアちゃんは、何が怖いの?」

「……知らない人が、たくさんいるのが、こ、怖いです。補習ってことは、フェランディ先生もいますし……。叱られるかも、笑われるかも、失敗するかも…………」

 フェリシアは「あぁ」と納得するように頷いた。

「みんなの前で、自分の実力を試されるのは、怖いよね。それは自然なことだと思う」

「……フェ、フェリシア先輩も、怖いです、か?」

「もちろん。私は人の期待を裏切るのが怖いのかも」

 両親の期待。友人の期待。先生の期待。

 そして、生まれ持ったものに対する期待。

「期待……。フェリシア先輩は、す、すごいですね」

 フェリシアはその言葉に、首を捻る。

「わたしは期待、なんて、されたことない、から…………」

「リリアちゃんにも大切な人はいるよね?」

「い、います!」

 今日一番の強い口調にフェリシアは、少しびっくりした。

「お母さんにお父さん、弟のノル。それに、幼なじみのヴィヴィアン。きっと……みんな、こんなわたしのこと、大切に思って、くれてる。だから、わたしも大切、です」

 真っ青だったリリアの顔に、色がついてきた。

「それなら、自分が期待されてない、なんて言っちゃダメ!」

 リリアの綺麗な緑色の瞳が、大きく見開かれる。

「大切って気持ちとか信頼は、期待してるってことじゃないのかなぁ」

 他にも、色々な期待の種類はある。

 自分を追い詰めるだけの期待だって、存在する。

 

 でも、人を強くするのは、いつだって「大切」「信頼」そういう純粋な気持ちだと思う。


 リリアが首を傾げる。

 少し回りくどい言い方をしてしまっただろうか。

(もしかして私かっこつけてた……?)

 気づいた途端にフェリシアは、走り出したい衝動に苛まれた。

 それでも、このかわいい後輩のためにできることをしたい――そう思うのだ。

 

「大切に思うって、頑張ってほしいとか、元気でいてほしいとか、そういう願いがあるってことでしょ?」

 フェリシアは笑いながら、リリアの頬をぷにっとつつく。

「それが、立派な“期待”なんだよ」

 リリアはぽかんとしたあと、ふわっと表情をほころばせた。

 

「フェリシア先輩の言いたい、こと……ちょっとだけ、わかった気が、します」

 リリアは「でも……それでも、やっぱり……」と小さな声で言葉を紡ぐ。


「初対面の人、怖いです」

「ふっ、私も初対面だけど?」

 リリアは「そうでした……」と呟やく。

 

「怒られるの……怖い、です」

「一緒に怒られあげる」

「笑われるのも、怖いです」

「誰もリリアちゃんのこと、笑ったりしないよ」

「失敗も、怖いです……いやだぁ」

「リリアちゃんが失敗したら、また立ち上がれるように支えてあげる」

「期待されるって、怖いんですね」

「…………そう、だね」

「でも、嬉しい。頑張りたい、って思えます」

「そうだね」

 

 リリアの口元に、小さな笑みが浮かんだ。

 リリアのこぼれるような笑みに、フェリシアの心にも温かい火がともる。

 まだ先輩として立派に導けているわけじゃない。

 けれど、こうしてかわいい笑顔を見せてくれた。今はそれだけで十分だ――なんてやっぱり、かっこつけすぎだ。

 フェリシアもクスリと小さく笑う。


 しばらく沈黙。

 木々の間を渡る風が、今度は少し柔らかく吹き抜けた。

 やがてリリアが、ゆっくりと立ち上がる。

 彼女の緑色の瞳は、しっかりと前を向いている。

 

「行きましょう、フェリシア先輩」

「えらいぞぉ〜!」


 フェリシアはリリアの頭を、わしゃわしゃと撫でる。


「よし!しゅっぱーつ!!」

 フェリシアは元気よく、右手を掲げた。

 そして行き良いよく歩き気だし――

「……フェリシア先輩、そっちじゃない、です」

 フェリシアは顔を真っ赤にして「ごめんなさい……」と呟いた。

(うーん、先輩らしくなるって難しいなぁ)

 フェリシアは苦笑いを浮かべながら、後輩の指した方角に向きを変える。


 * * *


 不思議だ。

 リリア・マルシェは、内心首を傾げていた。

 初対面のフェリシア先輩に、どうしてあんなに自分の気持ちを話せたのか。

 胸の奥のもやもやも、怖い気持ちも、全部――言葉になって出ていった。


(どうして……あんなに、しゃべれたんだろ)


 風が頬を撫でる。

 初夏を感じされるそれは、どこか温かく感じた。

 リリアはそっとフェリシア先輩を見る。

 先輩は、優しい笑顔で、前を歩いていた。


(……なんだか、わたし、フェリシア先輩のこと、怖くない……かも)


 小さく息を吸い、リリアも一歩一歩足を踏み出していく。

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