目覚め
目を覚ます青年『フォカラー』。
久方振りのスッキリとした目覚め。
体も軽く感じた。
「・・・知らない天井だ」
なんとなしにフォカラーは呟いた。
「あ、お兄ちゃん! 目が覚めた?」
可愛らしい声の小さな女の子。
色素の薄いか、短い髪。
人形のように精巧な顔つき。
フォカラーは体を起こす。
痛む後頭部をさすりつつ問う。
「君は?」
「あ、僕は『フォルトゥーナ』! 『フォル』って呼んでね!」
ウインクに心打たれる青年。
可愛い、守らねば・・・。
「あ! 僕、男だから間違わないでね!」
「は?」
「この顔のせいで、面倒なことになったこともあるから先に言っておこうと思って、それじゃ、みんなを呼んでくるよ!」
立ち上がってどこかへ消えていくフォル。
すぐに、『聖女』とキリッとした眉の不機嫌な赤髪の少女が入ってきた。
「あぁ~良かったです~! 私の『ヒール』がちゃんと効いたのですね!」
のほほんと笑いながら両手を合わせる『聖女』。
「いや、まだ痛んだが」
能天気な様子に、釘を打つフォカラー。
目覚めは悪くないし、体もスッキリしてはいるが、痛いものは痛いのだ。
「ふえ~!? やっぱり、『回復魔術』はイマイチです~!」
ぴえ~んと泣き出し、抱きついてきた『聖女』の背中をさするハーフツインアップの赤髪少女。
「ちょっとなに言ってんのよ!? 嘘でも効いたって言いなさいよね!」
「え、理不尽じゃね? と言うか、嘘は良くないだろ」
「うっさい!」
「はぁ!?」
寝起きにキャンキャン言われてイラッとするフォカラーが睨む。
負けじと赤髪の少女も睨み返す。
突如始まる睨み合い。
「け、ケンカはダメです~!」
その様子に涙は引っ込んだのだろう、2人の間に体を滑り込ませる『聖女』。
「で、でも! ほら! 目は覚めましたよね!?」
「え? あぁ。 それはそうだな」
フォルが手を叩く。
「じゃあ成功と言うことではないですか?」
ニコニコと笑いながら『聖女』に言う。
「あぁ! その通りですね! やりました~!」
「言い訳あるかい!」
「あるわよ!」
「はぁ!?」
「なによ!?」
「あーもう! やめてください!」
堂々巡りに叫んだフォル。
もはや涙目である。
「お? 元気が良いな。 飯、出来てるぞ。 お前、食えるか?」
そんな彼らの元にイケオジがやってきた。
「飯?」
フォカラーが復唱する。
「おう、飯だ。 朝食が出来たんだ。 食えるのか?」
フォカラーは頷く。
「あ、あぁ。 だが、」
「やりました~! ごはん! ごはんですよ~! 行きましょう! 『アタカンテ』ちゃん! フォルくん! 」
食わせて貰っても大丈夫なのか問おうとしたが、『聖女』によって遮られてしまった。
『聖女』が勢い良く立ち上がる。
「後は、えっと~?」
フォカラーの名前がわからず困り始めた聖女。
「『フォカラー』だ」
名前を聞いて、満面の笑みとなる。
「フォカラーくん! 貴方も一緒にごはんを食べましょう!」
その笑顔のまま、唐突にフォカラーの手を握った『聖女』。
突然美人に手を握られてドキッとするフォカラー。
「え!? ちょ、まっ!」
制止の声は届かない。
すでに部屋を出ていった美少女と男の娘とイケオジを追いかけて、『聖女』に手を引かれて部屋を出た。
そのまま、あっという間に下のリビングまで連れられていくのだった。