コミカライズ1巻 発売記念SS
(あ、やばいかも……)
ガゼボで昼食をとった後、オーウェンとともに読書を楽しんでいたジェシカは、突然襲ってきた眠気に抗うのに必死だった。
(ご飯の後眠くなるのって血糖値が関係してるんだっけ? それにしても影響早くない? 早いといえば前世で部長が……あれ、なんだっけ。ダメだ……頭回んないや……)
そよ風に揺れる木々のサラサラとした心地よい音、暑くも寒くもない快適な温度、やや解読の難しい魔法の本、まるで眠るために作られたのかと思うほどに座り心地のいい木のベンチ、そして隣にはマイナスイオンであるオーウェンの存在。
むしろ眠くならない理由を探すほうが難しい。
(あーーどうしよ。ほんとに眠い……)
オーウェンとは気の知れた仲だ。今眠りに就いたとしても、きっと彼は何も思わないだろう。
(でも、ダメ……起きないと)
しかし、ジェシカは寝ると口がぽかんと開き、場合によっては涎が出るタイプだった。
さすがに嫁入り前の女として、そんな姿をオーウェンには見せられない。ないとは思うが引かれたり嫌われたりもしたくなかった。
「ジェシカ? 眠いの?」
「んー大丈夫……」
しかし、これまたオーウェンの声が心地良い。まるで子守唄だ。寝かし付けられている気持ちになる。
いや、オーウェンにはそんな気はさらさらないことは分かっているのだけれど。
「ほんと? さっきから頭がカクンカクンしてるけど」
「これは……首を鍛えてる……だけ……」
「ふふ、何のために鍛えてるの。というか、そんな変な嘘つかないでいいから。眠いんでしょ?」
「んー、ちょっと」
「また意地張って」
ふ、と笑うオーウェンの柔らかな温度感に、眠気がピークに達する。
ジェシカは意識が失うほどの眠気に一瞬抗えず、フッと目を閉じれば、頭がぐわんと前方に揺れた。
「あ、寝るならおいで」
「……ん? へ?」
隣に座るオーウェンに頭を引き寄せられ、彼の肩に誘われる。
眠気は覚めきってないものの、さすがに多少は覚醒したようで、ジェシカからは上擦った声が漏れた。
「いやいや、オーウェン悪いよ。重いでしょ」
ああ、懐かしき前世の思い出。
満員電車で隣に座った人の頭が舟を漕ぎ、自分の肩に頭を乗せてきた時ことを思い出す。
へぇ、頭って案外重いんだなぁなんて感想を持ったのは初めだけで、びっくりするくらい重たかった。
そんな思いをオーウェンにさせるわけにはいかず、ジェシカは必死の思いで頭を持ち上げる。
しかし、ピクリとも動かなかった。
オーウェンが手に力を込め、自身の肩から頭が動かないよう固定したからである。
凭れると首はあんまり痛くないし、オーウェンからなんかいい匂いもするし、離れがたくなっちゃうじゃん……。オーウェンは本当に罪深い男だ。
「オーウェン……ほんとに、このままだと寝ちゃうから離して……」
「いいよ、このまま、少し寝なよ。時間になったら起こしてあげるから」
「アラーム機能まで……搭載、してるなんて……仕事できすぎ、だよ……上司に……なってほしい……くらい」
「はは、なんで急に上司?」
だって、それはね。
ちゃんと返したいのに、言葉が出てこない。瞼が重たくて、もう耐えられない。
「…………」
「あ、寝た……?」
ジェシカは眠気に抗えずにスッと目を閉じたジェシカに、オーウェンはやっと寝てくれた、嬉しそうに目を細める。
それから、オーウェンはジェシカの手元にある読みかけの本に栞を挟んでから、落ちないよう彼女の手から本を取り、こう囁いた。
「おやすみジェシカ、いい夢を」
お読みいただきありがとうございました!
単行本1巻が発売中ですので、そちらもよろしくお願いいたします!




