正体がバレてからの学園生活④【完】
オーウェンの熱い眼差し、滲み出る蠱惑的な雰囲気に、ジェシカは彼から逃れるために後ずさる。
しかし、すぐに退路は塞がれた。
真後ろには大きな木があったのだ。そのせいで、一瞬動きを止めたジェシカの肩は再びオーウェンに捕われてしまった。
(何でこんなところに木が生えてるの!? もう、木め!)
と、ジェシカは内心で八つ当たりをする。
表情にも少なからず出ていたのだろう。オーウェンはふっと愛おしそうに笑った。
「残念。捕まえた。木のおかげかな」
「〜〜っ、木がなくても捕まえられましたって顔してるけど!?」
「うん。それはそう」
即答したオーウェンから察するに、どうやら逃がす気は全くないらしい。
一方でジェシカは、大変困っていた。
先程までの甘酸っぱいやりとりは慣れていないとはいえ、心地よさがあった。こう、なんだか心がふわふわとするような、オーウェンとでしか得られない感覚と言っていい。
けれど、今は違う。
(自制が効かないってことは、つまり自分の感情や欲望を抑えることができないってことでしょう?)
ジェシカは確かに、前世を含めこれまで恋愛の経験はないけれど、それは決して箱入り娘だからではなかった。
白馬に乗った王子様が迎えに来るのを待ってるの! なんてお花畑の思考は持っていない。
いや、むしろ逆と言って良い。
だから、オーウェンの言う自制がどういう方向性の意味なのか、くらいは理解していた、のだけれど。
「キス、していい?」
「〜〜っ」
だからといって、うまく対応できるわけではなかった。
ジェシカは口を恥ずかしさからパクパクさせて、うまく言葉が出せない。
こんなふうに問いかけられて、うんというのは勇気がいるし、ダメだと拒絶するには恥ずかしいくらいしか理由がない。
だって、外とはいえこの場にはジェシカとオーウェンしかおらず、二人は恋人なのだから。
「……黙ってるってことは、良いってこと?」
「待って! 何かいいオーウェンの気を逸らす方法を探すから!」
「はは、それはなかなか難しいかもね」
オーウェンは柔らかく笑うと、ジェシカにそっと口付けを落とした。
緊張のあまり口をきゅっと結んでいるジェシカにもう一度口づけを落とせば、ジェシカは「二回も!?」と驚きの声を上げた。
「誰も一回なんて言ってないよ」
「いや、それはそうかも知れないけど……」
「嫌だった?」
「それはない! 絶対! ただ……」
ジェシカはちらりと上目遣いし、オーウェンの唇に視線をやる。
先程まで二度も触れたそれを目にするのは酷く恥ずかしかしいというのに、不思議と惹きつけられた。
「お手柔らかに、お願いします」
「……うん、分かった」
その後、オーウェンは何度もジェシカに口付けた。ジェシカを探しにきた、メイに邪魔されるまで。
お読みいただきありがとうございます(*^^*)
これにて番外編も完結となります!
ブクマや、↓の☆☆☆☆☆(最大★5)評価で応援していただけると嬉しいです!
皆で酷暑を乗り切りましょう!




