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33.大好きな人と一緒なら【最終話】

 

 ◇◇◇



 学園を卒業してから、早半年。

 とある日の夕刻、ハーベリー帝国における魔法の最高機関で、魔法使いとして毎日充実した日々を送っていた女性のもとに、とある男性が訪れた。


「ジェシカ、いる?」

「オーウェン! もしかして、迎えに来てくれたの!?」


 オーウェンの告白を受け入れたジェシカは、学園を卒業後、ハーベリー帝国に渡っていた。


「うん。早く仕事が終わったから。愛おしい婚約者殿もそろそろかと思って、迎えに来た」


 理由は二つある。

 一つ目は、ジェシカがオーウェンの婚約者になったからだ。側にいたいという二人の考えから、帝国に移ることになった。

 王国はジェシカを手離したがらなかったが、過去にアーサーがオーウェンを殴ったことを国王に告げれば、それ以上何も口出ししてこなかったと過去にオーウェンが話してくれた。


 因みに、当初、ジェシカは平民という身分を気にしていたものの、膨大な魔力量や実力、試験の結果から、帝国の第二皇子に足ると判断された。皇帝夫妻との関係も良好だ。


 二つ目は、ジェシカが帝国の魔法使いになると決めたからだ。帝国のほうが王国よりも待遇がよいというので、ジェシカは即決した。

 待遇が良いと言っても、ジェシカがオーウェンの婚約者だから、というわけでない。もともと帝国は労働時間や給与についてしっかりと労働者を守る決まりがなされているため、ジェシカは何の憂いもなく働けている。ホワイト企業、バンザイ!


「皆さんの前で何を言ってるの、オーウェン!」

「でも本当のことだしさ。照れた顔も可愛いね」


 オーウェンが目を細めて愛おしげに微笑むと、そんな彼の後ろから、ダダダダッと激しい足音が聞こえてきた。


「やっぱり来ていたのですね、第二皇子殿下!」

「やあ、メイ。俺のジェシカを迎えに来たよ」

「くぅ〜〜! 敢えて俺のを付けるあたりに苛立ちを覚えますが……ジェシカ様! 今日はもう急ぎの用件はないようですから、ぜひゆっくり体を休めてくださいね」


 相変わらずオーウェンとは犬猿の仲だけれど、なんだかんだ息のあった二人に、ジェシカはふふっと微笑む。


(卒業したら、こんなふうにオーウェンとメイのやりとりも見られなくなると思ってたから、嬉しいなぁ)


 メイが帝国に行くことを決めたのは、ジェシカが卒業後帝国に行くつもりだと話したのと同時だった。

 どうやら、メイはジェシカの側を離れる気など更々なかったようで、前々から準備していたようだ。


 さすがにオーウェンもメイの行動力には驚いていたが、メイが実力で帝国での就職先を掴み取ったため、文句は言えなかったらしい。


「ありがとう、メイ」


 ジェシカは報告書をまとめて上司に報告すると、同僚たちに挨拶をしてオーウェンの側に駆け寄る。

「お疲れ様」と、優しく労ってくれるオーウェンとともに、職場を後にした。


「仕事はどう? 大変じゃない?」

「全然! むしろ毎日楽しいよ」


 王城までの帰り道。約二十分の道のりを、二人は手を繋いで歩いていく。


「それなら良いけど、ジェシカは無意識に無理しそうだから心配」

「そう?」

「そうだよ。最近、皇族教育が始まったでしょ?」


 いくらジェシカが魔法使いとして優秀だとしても、第二皇子のオーウェンと結婚するとなれば、このままではいられない。

 皇帝と第一皇子が主に国の舵取りをし、皇妃と第一皇子妃が主に社交界を牛耳っているとはいえ、ジェシカにも最低限の教養が求められた。


「正直大変だけど、楽しいことも多いよ。こういうことを学べる機会は誰にでも与えられるわけじゃないし。それに、堂々とオーウェンの隣にいたいしね」

「ジェシカ……」


 ラプツェに陥れられたことが原因で、魔法を必死で学んだあの時間も、オーウェンやメイがいてくれたおかげで、今では掛け替えのない思い出だ。


(今頃、ラプツェ様はどうしてるだろう)


 ふと思い出す。自分と同じ、異世界転生した彼女のことを。


(試験の後、改めてラプツェ様のことが調査されて、私に暗殺者を仕向けたことも明らかになって……幽閉処分が決まったらしいけど……)


 オーウェンから聞いた話では、幽閉されているラプツェのもとに、アーサーだけが時折通って声をかけているらしい。

 人の心は目に見えないけれど、きっと、アーサーは心の底からラプツェを愛しているのだろう。


(どうか、アーサー殿下の思いが、ラプツェ様の心を救いますように。……私には、そんなふうに願うことしかできないけれど)


 どこか悲しげな顔をしたジェシカの手をギュッと握り締めたオーウェンは足を止め、彼女と向かい合った。


「ジェシカ、本当に無理だけはしないでね。俺が支えるから、ちゃんと頼って」

「ふふ、大丈夫だよ〜〜! オーウェンに頼るってことだけは誰にも負けない自信がある!」

「……それなら良いけど」

「それにさ、オーウェン」


 ジェシカはつま先立ちをすると同時に、オーウェンの着ているジャケットをぐいっと掴むと、自分の方に引き寄せた。


「人生、どんな道を選んでも、大変なことってあると思うの。……でも、大好きな人と一緒なら、どんな困難だって、乗り越えられると思わない?」


 ジェシカはそう言うと、オーウェンに触れるだけの口付けを落とした。


「……ははっ、ジェシカらしい!」

「でしょ?」


 それから二人は互いの顔を見合う。

 くしゃりと微笑みあった後、抱き合いながらもう一度唇を寄せ合った。




 〜完〜

最後までお付き合いくださり、ありがとうございました(*^^*)

このお話はここで完結となります!

毎日読みに来てくださっている皆様のおかげで、ここまで書き切ることができました。本当に感謝で胸がいっぱいです!

もし、面白かった! 楽しかった! なんて思っていただけたら、↓の☆(最大★★★★★)で評価をいただけると幸いです!次回作や、他作品のやる気にも繋がります(*´ω`*)♡めちゃくちゃ暑いですが、皆様熱中症にはお気をつけくださいね!

↓に新作の短編のリンクを貼ってありますので、良ければそちらもよろしくお願いします♡

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