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第9話 不穏な気配

 学校が始まってから二週間が経過した。


 大抵の人は学校に慣れ始めた頃だ。


 俺の友人たちも例外ではなく、玲音はサッカー部に既に馴染んでいるし、瞬はいつも自習室で勉強してから下校しているそうだ。勉強熱心なのはいい事だ。


 俺はというと、図書館に寄ってから面白そうな本を2、3冊見繕ってから帰路に着く。


 校舎の外に出ると不気味なくらいに暗く、空は黒い雲で覆い尽くされており、空から大量の雨が降り注いでいた。


「傘を刺しても濡れるだろうな」


 俺は傘立てに朝置いた自分の傘を持ち雨粒ができるだけ体に当たらないように傘を刺す。


 いつも帰り際は部活などで騒がしいはずだが、今日は雨の降り注ぐ音しか聞こえない。


 玲音も確か今日は雨降ってるから体育館で部活をやる事になったとか言っていたな。


 俺は一歩ずつ歩き出すが、浅い水たまりがそこら中にあり革靴もずぶ濡れになってしまう。


 最初は水たまりを出来るだけ避けて歩こうかと思ったが、もはや水たまりを避ける事など不可能に近いので諦めて普通に歩く事にした。


 にしても本当に凄い量の雨だ。


 俺は雨だからなのか憂鬱な気分になりながら無言で歩き続けていると少し遠くに5つの人影が見えてきた。


 どうやら4人が1人を取り囲んでいるようだ。それも和気藹々(わきあいあい)という雰囲気ではなくどちらかというと殺伐としている感じだ。


 少し暗いのもあり顔までは確認出来ないが、体型からして囲まれている1人は女でそれ以外は男みたいだ。


 俺は物陰に隠れた状態で全員の様子を伺う。


「おら、さっさと来いっつってんだろ!」


「嫌って言ってんじゃん!腕離して!」


 女は男に掴まれた腕を振り解こうとしているが流石に男の力の方が強く全く効いていない様子だ。


「さっさとこいつ連れてこうぜ。こいつ連れてけばボスも喜ぶだろ」


「あぁ、確かにな。確かこいつってボスのお気に入りなんだろ?」


「兄貴、そいつを無理やり連れて行ってアジトに戻りましょうよ」


 今女の腕を掴んでいるのがどうやら兄貴と呼ばれている存在のようだ。


 それに男の1人が言っていたボスという存在も気になる。


 女を助けようか迷っていたがどうやらこいつらがアジトに連れて行ってくれるらしい。


 この手の連中は一度叩いたところでゴキブリのようにしつこく何度でもやり返してくる事も多い。だからアジトについていきそこで全員ぶちのめすというのが1番手っ取り早いやり方かもしれない。


「まぁそれもそうだな。アジトに戻ってボスにこいつを渡さなきゃならんしな」


 兄貴と呼ばれている男は女の腕を無理やり引っ張り近くに止まっている黒い車に乗り込む。俺は車には詳しくないが見た目はそれなりの値段がしそうな高級車だ。


 兄貴と呼ばれている男は自身が運転席に座り、女を車から取り出したロープで縛り上げて口をガムテープで封じてトランクに放り込み、手下の3人が後部座席と助手席にそれぞれ座ると車を発進させた。


 車を発進させる直前、車に俺の血を飛ばしておく。これでひとまず車を追うことは可能だ。


 あのスピードから見て法定速度など気にしていないのだろう。なんなら免許を持っているかすら怪しいところだ。


 さてと、俺も急いで帰るとするか。


 傘を刺すのも忘れて俺は家まで急いで走った。


 家の玄関を勢いよく開けてソフィに呼びかける。


「ソフィ!いるか!?」


「はい、おりますが、そんなに慌てたご様子でどうなさいましたか?」


「至急、お前に頼みがある」


「一樹様の頼みとあらば、このソフィアなんでも致します」


「お前の異能を使って俺の血を追ってくれ!」


「一樹様の血を、ですか?」


 ソフィは少し顔を驚かせている。確かにいきなり異能を使ってくれと言われて戸惑ってしまうのも仕方ないのかもしれない。


「あぁ、事情は帰ってきた後にでも話すが今は時間が惜しい。お前の異能"吸血姫化"で俺の血を追って欲しいんだ!」


 ソフィの異能"吸血姫化"。これは身体能力向上、超高速回復、血液の追跡、血液を操る事ができる強力な能力だ。一応変化系能力者になるが、ソフィの場合姿を変える事はない。というのもブラッディローズ家の者は皆"吸血鬼化"の異能を使う為、容姿も生まれた時から銀髪赤眼であり、口からは牙が生えている吸血鬼の姿をしているのだ。


 見た事はないが下位互換の異能である"吸血鬼化"は異能を使う時ちゃんと人間から変身しているようだ。


「・・・・・・分かりました。一樹様の血を追ってみます」


 少しの間ソフィは目を瞑り、意識を集中し始めた。


 目を瞑っているソフィも美しく思わず見惚れてしまった。


「見つけました。今からご案内します。・・・・・・どうか致しましたか?私の顔をじっと見て」


「あ、あぁ、なんでもない。早く案内してくれ」


「かしこまりました。ついてきてください」


 俺は彼女の言葉に頷き、玄関から出る。


 ソフィは玄関の鍵を閉めた後、近くの家の屋根まで跳躍し、屋根を跳びながら移動していく。


 俺もソフィの後を追うように屋根伝いに移動する。

 

 移動する時間は5分ほどだっただろうか。思ったより早く目的地まで到着する事ができた。


 ここは廃工場のようで、外には今さっき見たばかりの黒い車が駐車されている。


「どうやらここが目的地のようです。私もお手伝いいたしましょうか?」


「いや、ここからは俺1人で行く。元はといえば俺が勝手にやっている事だしソフィはできれば巻き込みたくはないからな」


「承知いたしました。ですが一樹様が危険だと思ったら勝手に行動させていただきます」


「あぁ、分かった」


「ではここでお待ちしておりますのでどうかお気をつけて」


「それじゃあ行ってくる」


 俺は一言ソフィにそれだけ言ってから廃工場の屋根へと移動する。


 屋根からは中の様子は分からないが、この程度の屋根だと簡単に破れそうだ。


 俺は拳を振り上げてから思いっきり振り下ろす。


 屋根から凄い音が響いた。


 どうやら屋根に穴を空ける事に成功したようだ。


 俺は屋根に空いた大穴から中に飛び降りて、周りを確認すると女の子は犯される直前だったようで制服が破かれて素肌が露わになっている。


 周りを囲んでいるチンピラどもは気持ち悪い笑みを浮かべている。


 俺は女の子を無理やり犯そうとしているクズや周りを取り囲んで下卑た笑みを浮かべているチンピラどもに沸々と怒りが湧いてきた。


 俺は気持ち悪い笑みを浮かべているチンピラどもに向かって思いっきり右手の親指を下に向けて言う。


「よってたかって女の子いじめてんじゃねえぞ、クソ野郎どもが」


 さてと、ちょっと本気で相手してやるとするか。

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