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第7話 帰宅

「ふぅ、結構疲れたな団体訓練」


 玲音が汗をかきながら話しかけてくる。


 昼食を食べ終えた午後1時から4時間近く行っていた団体訓練も終わり、俺たちは男子更衣室で服を着替えていた。


 初日とはいえ4時間も共に訓練をすれば誰が戦闘に長けているか自ずと分かってくるものだ。


 まずは玲音と赤月。この二人だけはクラス内でもずば抜けた戦闘能力を持っていると言ってもいいだろう。最後に3組と戦った時もこの二人は相手を何人も倒していた。


 それに天上院も戦闘能力が高かった。異能の"聖光"を上手く扱えているようで剣に宿しながら戦っていた。武器に異能を付与すれば武器を強化する事ができる故に冒険者でやっている人間はそれなりにいるが、高校生でありながらそれをやってのける人間はそう多くない。


 それと意外だったのが二宮だ。確か異能は"風刃"。パッとするような異能ではないから目立ってはいなかったが奇襲攻撃が何回か成功しているのを見かけた。天上院と赤月の友人になっただけはあるようだ。


 他にも刀を振り回してた黒髪ポニーテールの少女だったり、氷を操る水色の長髪を靡かせた少女など目に止まる生徒も何人かはいた。まぁ自己紹介をあまり聞いていなかった俺は名前や異能が分からないのだが。


 兎にも角にもこの学校には戦闘方面でそれなりに優秀な生徒が多いらしい。


 俺がさっきまでの団体訓練の事を振り返っていると既に制服に着替え終えた玲音と瞬が更衣室の扉付近から呼びかけてきた。


「おい、そろそろ行くぞ」


「早くしないと置いてくよ」


「あ、悪い」


 俺は一言謝ってから急いで制服に着替え、二人のそばに駆け寄るのだった。


 俺は更衣室から下駄箱までの廊下を歩きながらこの後の予定を二人に聞いてみる。


「二人ともこれからどうする?このまま一緒に帰るか?」


「あー、俺様は部活見学してきたいし無理だな」


「僕もこれから学校の図書館に寄るつもりだよ」


 どうやら寂しいことに帰りは俺一人のようだ。


 別に一人で帰る事自体はいいのだが、友達ができたのに一人で帰るというのは少し寂しいものだ。


 下駄箱で二人と別れてから俺は帰路に着く事にした。


 家に帰ると既にソフィは帰っていたようでキッチンで何やら料理しているようだ。


 俺が帰ったことに気づいたソフィは俺に向かって軽いお辞儀をする。


「おかえりなさいませ、一樹様。この後ご予定があるようでございましたので、今夕食の支度をしております。もう少々お待ちください」


 さすが俺のメイドだ。俺が帰ってくる時間帯をきちんと把握してそれに合わせて夕食を作ってくれているとは。


「ありがとな、ソフィ。いつも助かってる」


 俺は簡潔にソフィに礼を言ってから先に脱衣所で着替えを済ませてから夕食が出来るまでリビングで鞄の中に入れてあった小説を開き読書をする。


 しばらくしてから夕食ができたようでキッチンの方からいい匂いが漂ってきた。


「今日の夕食はなんだ?」


 俺は匂いに釣られてテーブルに着くと、キッチンにいるソフィに夕食のメニューを聞いてみる。


「今日は回鍋肉(ホイコーロー)を作りました」


 そう言いながらソフィは回鍋肉の乗ったお皿と味噌汁や白米をつけた茶碗をお盆に乗せて運んできた。


 それらをテーブルに置き、箸も綺麗に並べてからソフィも俺の正面に座った。


「んじゃ、いただきます」


「はい、いただきます」


 俺とソフィは同時に手を合わせてから夕食を食べ始める。


 俺はまず回鍋肉の豚肉を口に入れて咀嚼するが、脂の旨味満点な上に、濃厚な甘辛さとともににんにくの風味も同時に感じられるタレが馴染んで白米が進む味がしている。

 

 回鍋肉に入っている他の野菜などもタレが上手く絡んでおり、美味しいという率直な感想しか出てこない。


 美味しすぎて夢中で食べていたらすぐに完食してしまった。


 正面を見るとソフィはまだ食事が終わってないようで上品に食事している。


 俺は自分の食べ終えた食器をシンクに入れてから2階にある自分の部屋に向かいバイトに行く支度をする。


 実は18時から3時間だけバイトが入っているのだ。


 と言っても今日がバイト初日なので何を持っていけばいいかなどはよく分からないが、とりあえず必要そうなものはカバンに詰めておく事にした。


 カバンを肩から下げて1階に降りると、ソフィもメイド服から私服へと着替えて出かける用意をしていた。


「今日も出かけるのか?」


「はい、一樹様もお仕事頑張ってください」


 そう言ってからソフィは玄関の扉を開けて外へと出ていった。


 週に数回ソフィは夜に出かける。


 何をしに出かけるのか俺は知らない。ソフィを信頼しているから詮索をする気もない。


 だが少し不安でもある。


 常に行き先を俺に告げていくソフィがこの時だけはどこに行くかを教えてくれないのだ。


 俺はソフィが出ていったばかりの扉を少しの間見つめていたが、気を取り直してバイトに行く事にした。

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