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第27話 過去③

 ソフィと出会ってから数日が経過した。


 ソフィは俺たちが会った次の日には俺と葉月が通う小学校に転校してきた。


 どうやらブラッディローズ一家はしばらくの間日本で過ごすようでその間はソフィも日本の学校に通うようだ。


 幸いソフィアも日本語がペラペラで学校生活でも特に困った様子は見せなかった。


 今日も今日とて学校帰りに俺はソフィと葉月と遊んでいた。


「じゃあ、今日は鬼ごっこしよう!僕が鬼やるね!」


 この三人で遊ぶときはいつも俺が遊ぶ種目を考えていた。


 二人が公園内を逃げ回り俺がそれを追いかける。


 ルールは単純明快でごく普通の鬼ごっこだったが俺にとってその時間は凄く楽しかった記憶だ。


 俺は十秒数えてからソフィと葉月に向かって走り出す。


 ソフィと葉月はすぐに反応し、公園のあちこちを駆け回っていた。


 俺はまずソフィに狙いを定めて追いかけ、ソフィは遊具を使いながら逃げ回る。


 俺たちにとってそんな何気ない日常が幸せだった。


 この日常がいつまでも続くと思っていたのだ。


 俺たちはしばらく遊んでたら十七時のチャイムが鳴ったので家に帰ることにした。


 太陽がゆっくりと沈み始め、公園はオレンジ色の光で満たされた。


 俺たちはランドセルを背負い、公園から家に帰っている途中にその警鐘は鳴った。


 今まで一度も忘れたことのない悪夢の始まりを告げる警鐘が。


 そしてすぐに町中に避難を知らせる放送がかかる。


魔物襲来(モンスターパレード)発生!魔物襲来(モンスターパレード)発生!至急、住民の皆さんは避難してください!繰り返します──』


 俺はその放送の意味を理解してからソフィと葉月の手を取り走り出す。


 向かう場所は家だ。


 昔からこういう時は両親に頼っていた。


 両親はこういう事に詳しい研究員だったため、魔物襲来(モンスターパレード)が起きた時は的確な指示を出してくれた。


 だから俺は両親と合流するために家に向かった。


 家に帰る途中、いくつもの家からに火がついている様子が伺えた。


 空には飛翔しながら火を吹いているドラゴンの姿が無数に確認された。


 その数はパッと見ただけでも十や二十では数えきれない。おそらく数百体はいた事だろう。


 俺はその姿を見ただけで恐怖で足がすくんで動かなくなりそうだった。


 町中の冒険者たちも応戦を始めたが、ただ無駄に命を散らせているだけだった。


 ドラゴンという空を飛ぶ怪物にそもそも人間が敵うはずなどないのだ。


 俺は動かなくなりそうな足を動かしソフィと葉月の手を引いて家を目指す。


 家に到着すると俺は膝から崩れ落ちることになった。


 今朝まで家があった場所にはもう家の面影などなく、家があった場所には家が破壊されただけの無残な姿だけが残されていた。


 今日は家にいた俺の両親はこの様子では助かる事はないだろう。


 膝から崩れ落ちた状態の俺を心配してくれたのか両隣からソフィと葉月が寄り添ってくれた。


 俺は顔を絶望で染めながら俯いていたが、背後から聞き覚えのある声が聞こえてきて安堵した。


「一樹に葉月、それにソフィアちゃんかい?」


 俺が後ろを振り向くとそこには父がいた。


 父の隣には不思議そうな顔をした母もいた。


「三人ともどうしたの?放送聞こえなかった?魔物襲来(モンスターパレード)が発生したのよ?逃げなきゃダメでしょ?」


 母のいつも通りの声に俺は安心して顔が綻ぶ。


「それじゃ、三人とも逃げるよ」


 俺たちは父の号令によってその場から駆け出す。


 空からはドラゴンが吐いた炎が降り注ぎ、周りの建物が次々に燃え上がる。


 俺たちは倒れてくる建物を避けながら避難場所に指定されている近くの地下シェルーターに向かう。


 そこで俺はある事に気づき両親に問いかける。


「ねぇ、父さん、母さん。カイルさんとアリアさんはどこにいるの?」


 俺の問いに対して父は空を見上げながら答える。


「あぁ、カイルもアリアも空で竜と戦っているはずだよ。あの二人は強いからね」


 父の声で空を見ると何人もの冒険者達が竜を相手に激闘を繰り広げている。


 竜という怪物相手に人間の技がそう通用するものではない。しかし冒険者達は一般人を守るために血を流しながら戦い続けてる。


 俺はその姿に感動を覚えた。


 これなら被害を抑えて竜共を追い返す事ができるのではないかと。


 しかしそんな淡い妄想はすぐに打ち砕かれた。


 これまでのはただの序章に過ぎなかったのだ。


 空に暗雲が広がり、空間に大きな穴が開けられ、その大穴から三人の男女が姿を現した。


 これが後に龍王襲来と呼ばれる大災害の始まりだった。


 そして今までのを悪夢と呼ぶには生ぬるいレベルの悲劇がこれから起こるのだった。

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