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第24話 プリクラ

「今日の訓練はここまでかな。皆気を付けて帰るんだよー」


 早乙女先生ののんびりとした声がグラウンドに響き渡る。


 冒険者登録をした次の日、俺たちは今日の授業のすべてが終了しグラウンドから更衣室へと場所を移動し着替えていた。


 俺が体操服を脱いで制服に着替えていると怜音と瞬に声を掛けられる。


「今日も俺様達とダンジョンに行かないか?一樹」


「ダメだよ、怜音。今日は一樹、中山さんとプリクラ撮りに行くんだから」


「あー、そうだったな」


 瞬と怜音が俺の方をニヤニヤしながら見てくる。


 なんだろう、すごいムカついてきた。


「別にプリクラ撮りに行くだけだからな?」


「ふーん、それはどうかな?一樹がそう思っても向こうはデートだと思ってるかもよ?」


「たとえ中山がそう思っていたとしても俺には関係ないことだな。少なくとも俺にとってはデートではなくプリクラ撮りに行くだけの事に変わりはない」


「冷めてるね」


「冷めてるな」


 二人に呆れたような目線で見られてしまった。


 俺にとって中山は友人だし、中山も俺の事をそう思っていることだろう。


 これで中山に友人じゃないと否定されたら少し傷つくかもしれないがいずれすぐに忘れるだろう。


 それくらい俺と中山の関係は深くはない。


 この二人は高校生だから仕方ないのかもしれないが、高校生という生き物はすぐに恋愛事に結びつけようとする。


 俺と中山がそういう関係になる確率は少ないだろうな。


「じゃあさ、もし中山さんに告白されたらどうするの?」


「・・・・・・多分断るだろうな。今は恋愛をする気はさらさらないしな」


 俺が今は誰とも付き合う気はないという意思表明をしたら瞬は一瞬目を見開いてから感心したように俺の方を見てくる。


「へぇ、思春期真っ只中の男子高校生が恋愛に興味ない、ねぇ?一樹って本当に男?」


「それ怜音と最初に話した時にも言われたけど、恋愛に興味ないのがそんなに不思議か?」


 何かおかしな事でも行っただろうか?


 二人とも顔を見合わせて不思議そうな顔をしている。


「不思議というより、ねぇ?」


「不思議というより、なぁ?」


「「男子高校生が色恋沙汰に興味ないっていうのがおかしいんだよ(おかしいだろ)」」


 俺にはよく分からんが、どうやら一般的な男子高校生は恋愛に興味津々なのが普通のようだ。


 そんなこんなで雑談しているうちに俺は怜音と瞬より早く着替え終えたので中山と待ち合わせている校門に先に向かう事にする。


「それじゃあ、また明日な」


「おうよ、また明日な!」


「じゃあね、一樹」


 瞬と怜音に別れを告げてからカバンを肩にかけて更衣室を出る。


 校舎の外からは部活をやっているであろう生徒たちの声が聞こえてくる。


 俺が薄暗い廊下を歩いていると向かいから人影が歩いてくる事に気づく。


 まだ授業が終わったばかりなので教師も生徒も沢山校舎に残っていてもおかしくない。


 しかし俺はそいつを注意深く見てしまう。


 徐々に距離が近づき顔が明らかになる。


 そいつ、いや赤月迅は一切俺に目を向けず通り過ぎていく。


 やはり何か違和感があるがその正体が分からない。


 今日の授業中や天上院や二宮と関わっている時は普通だった気がするが昨日から何か赤月に関する違和感が消えない。


 俺はその違和感に関する正体が分からないまま校門に向かうことにした。


 校門に到着するとまだ中山は来ていないようだったので俺は少し待つことにした。


 スマホを触りながら数分待っていると、中山が小走りに駆け寄ってきた。


「ごめん、遅くなった!待った?」


「いや、俺も今来たところだ」


 特に意識はしていないがまるでデートの待ち合わせをしているカップルのような会話になってしまった。


「そっか。よかった」


 中山は俺の返事を聞いて安心したような顔を見せた。


 中山は有名モデルだからか帽子をかぶって黒縁眼鏡をかけている。


 多分スキャンダルを意識しているんだろうな。


 この前は他に怜音たちもいたし、やはり二人きりだとそういうのを意識しなければならないのだろう。


 それから俺たちは学校の敷地から外に出てプリクラを撮るためにプリクラ機が置いてあるゲーセンへと向かう。


 ゲーセンに向かう道中、俺は中山と会話を弾ませていた。


「龍崎ってさ、何か好きな食べ物とかある?」


「そうだな、強いて言えば唐揚げとかは好きだな。あとは男っぽくはないかもしれんがスイーツ系は大抵好きだぞ」


 俺がそう答えると中山は何か真剣にスマホに文字を打ち込み始めた。


「どうした?」


 俺はそれが少し気になって質問しただけなのだが中山は慌てたようにスマホを後ろに隠して首を振る。


「う、ううん、何でもない。それでさっきの話だけどあたしはスイーツが好きな男子っていいと思うよ」


「そうか。逆に質問させてもらうが中山が好きな食べ物とかはないのか?」


 俺が同じ質問を返すと中山は少し考えるそぶりを見せてから答える。


「うーん、あたしもスイーツとかは好きだなぁ。ご飯系だとパスタとかは結構好きかも」


 どうやら中山はパスタが好きなようだ。


 今度二人でランチする時があるかもしれないし一応覚えておくか。


 その後もいくつか中山に質問されそれに答えながら歩いているうちに気づけばゲーセンに到着していた。


 ちなみに俺が質問に答えるたびに中山はスマホに何か打ち込んでいたが結局あれは何だったんだ?


 まぁそれは置いとくとして俺たちはゲーセンに入り奥にあるプリクラ機が沢山置いてあるコーナーへと向かう。


 ゲーセン自体初めて来たが思った以上に騒がしい場所のようでそこら中からゲームの音や騒ぐ学生の声が聞こえてくる。


 プリクラのコーナーに着くとそこにはプリクラ機らしきものが10個近く設置されていた。


 俺は中山に連れられるようにその中の一つに入る。


 中山はプリクラ機に入ると帽子と眼鏡を外すしてカバンの中にしまっている。


 俺はプリクラ機内を見まわしてみてなんていうか女子が好きそうだと感じた。


 場所によっては男子だけでは使えないところがあると聞くが確かに男子だけで使っていたら俺も引いてしまう自信がある。


 俺はプリクラは初めてでよく分からないので使用に必要な400円のお金だけ入れて後は中山に操作を任せることにする。


 俺が400円を入れると中山は俺の方を少し驚いた表情で振り向いてきた。


「え、お金・・・・・・」


「気にするな。この程度のお金どうっていう事もない。女にお金を出させるわけにいかないからな」


「う、うん・・・・・・」


 中山はすぐに画面と向き合い操作を始めたが後ろから少し見える頬が火照って見えるのは気のせいじゃないだろう。


 まぁデートの時は女子に財布を出させてはいけないって前になんかの本で読んだしな。


 少しの間待っていると操作が終わったのか中山が俺の近くへと寄ってくる。


 そしてすぐに機械に撮るポーズを指示される。


 どうやらピースでウサミミを作るポーズのようだ。


 中山は俺の事を考えてくれたのか比較的楽なポーズを選んでくれたみたいだ。


 俺はピースでウサミミを作りそれを頭に乗せてできる限りの笑顔を作る。


 上手く笑う事ができたかは分からない。


 それから俺はいくつかプリクラを撮り終えてから機械の外へと出た。


 中山はまだ中で落書きをしているようだ。俺はそういうのは全く分からないから全て中山に任せている。


 しばらくしてから中山も外に姿を現した。


 既に中山は帽子と眼鏡を装着している。


「はい、これ龍崎の分ね」


 俺は中山から渡されたプリクラを見てみる。


 中山は可愛い笑顔を作っていたがその隣にいる俺の表情は固かった。


 自分では笑えているつもりでいたが表情はあまり動いていなかったようだ。


 最近は昔に比べて笑う機会が減ったから表情筋が硬くなっているのかもしれないな。


 俺は中山から受け取ったプリクラを財布の中にしまってから中山の方を見る。


 中山は俺と撮ったプリクラを嬉しそうに眺めている。


 俺と撮ったプリクラがそんなに嬉しかったのだろうか?


 中山は大事そうにそのプリクラを財布にしまうと俺の方を振り向いてきた。


「それじゃあこの後はどうする?」


「俺はこのまま解散でも・・・・・・」


「せっかくだしゲーセンで遊ぼ?」


 俺は別に解散でもよかったんだが中山によってその言葉はさえぎられてしまった。


 そして俺たちはとりあえずゲーセン内で色々見て回ることにした。


 初めてゲームセンターという場所に来たのだが思った以上に面白そうなゲームが沢山置いてあるようだ。


 俺と中山はゲームセンター内を適当に歩き回っていたのだが、中山がとあるクレーンゲームの所で足を止めた。


 中にあるのは可愛らしいクマのぬいぐるみのようだ。


「欲しいのか?」


「え、いや別にそういうわけじゃないけど・・・・・・」


 中山は口ではそう言っているが目があれを欲しいと言っているように感じる。


 俺はさりげなく100円を機械に投入すると中山に驚いたような表情をされる。


 ゲーセン自体に初めて来た俺からしたら勿論クレーンゲームも初めてだ。


 俺が横に進むボタンを押すとクレーンが動き始める。


 まずは横に動かし次に縦に動かすようだ。


 俺は大体の位置で横に進むボタンから手を放し次に縦に進むボタンを押す。


 縦に進むボタンをクレーンがぬいぐるみのちょうど真上に来たあたりで手をボタンから放す。


 するとクレーンはゆっくりと下降し、クマのぬいぐるみに向かって進む。


 そしてクレーンの爪がクマのぬいぐるみを掴み少しの間持ち上げるが、次の瞬間クレーンの爪から滑り落ちてしまった。


 俺は一発で成功しなかったことに少しがっかりしたが今のでなんとなくクレーンゲームについて理解できた。


 再び100円を投入して操作パネルの上に手を置く。


 さっきより慎重にまず横に進むボタンを押す。


 クレーンがぬいぐるみの前まで来ると手を放して縦に進むボタンを押す。


 クレーンがちょうどぬいぐるみの上に来たあたりで手を放すとクレーンはぬいぐるみに吸い込まれるように下降する。


 そしてクレーンがクマのぬいぐるみを掴むとそのままガラスケースの外へと運び出した。


 俺はそのぬいぐるみを手に取ってから中山に手渡す。


「これ欲しかったんだろ?」


「え、でも・・・・・・」


「気にするな」


「うん、ありがと・・・・・・」


 中山は頬を紅潮させている。


 あまり気にする必要はないと思うのだが中山にとっては少し恥ずかしかった事なのだろう。


 その後、俺たちはホッケーのゲームやレースゲーム、格闘ゲームなど色々楽しんでからゲーセンを後にした。


 俺は中山を家に送ってから帰宅する。


 もうそれなりに遅い時間なのだがソフィはどうやら出かけているようで家には食器に盛られた状態の夕食が用意されていた。


 俺はそれを温めてから食べ、食事後に風呂に入ってから学校の宿題だけ終わらせてベッドに潜り込む。


 最近は比較的平穏な学生生活を送れていると思う。


 一つ気になるのは赤月の様子が変なことくらいだろうか。


 だがそれも気にしすぎてもしょうがない事だ。


 今考えてもそれは違和感程度でしかないしな。


 俺はそんな事を考えていると急に眠気が襲ってきた。


 今日は珍しく放課後にはしゃいでしまったからか疲れているのかもしれない。


 俺は徐々に意識を手放し、ゆっくりと眠りについた。

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